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魔王軍倒産しました。〜領地は絶賛再建中・勇者は絶賛就職中〜  作者: 瀬大
第3話 マオリョー、火力調達します
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マオリョー、火力調達します⑤ とーさんって、誰だ

「ちょっと、勇者! ゼルをあんまり刺激しないでよ! この子、怒らせると本当に手がつけられないんだから!」


「……ふふっ。大丈夫ですよ、勇者様。もし黒焦げの灰になっても、わたしが綺麗に浄化して、お骨だけは拾ってあげますからね」


「だからお前のその慈愛に満ちた殺意が一番怖いんだよ! 骨しか残らねえ前提で励ますな!」


俺はミィナを押し除け、再びゼルへと向き直った。


……落ち着け、俺。


相手は確かに災害級のバケモノだが、中身は完全に幼稚園児だ。


『ケーキのために待っている』? だったら話は簡単じゃないか。大人の汚い詭弁と屁理屈で丸め込んでしまえばいい。ここでこいつを言いくるめれば、俺は暖かな寝床と温かいスープをゲットできるんだ。


俺の脳内で、再びセコい打算のスイッチがカチッと音を立てて入った。


「……なあ、ゼルくんよ。お兄さんが、現実という名の残酷な真実を教えてやろう」


俺は、できるだけ大人びた、諭すような声色を作って一歩前に出た。


「いいか。その社長ってのはな、借金取りから逃げるために夜逃げしたんだ」

俺は声を落とした。

「つまり『倒産』だ。倒産ってのは、もう会社に一銭もお金がないってことだ。わかるか?」


「……とーさん? なんやそれ。美味しいんか?」


「美味しくねえよ、胃に穴が開くくらい激マズだよ!」

俺は声を張り上げた。

「つまりな、その社長はもう二度と帰ってこないし、ケーキを買うお金すら持ってないってことだ!」

「お前は体のいい嘘をつかれて騙されたんだよ、このお人好しのトカゲのガキが!」


「ああっ!? バカ勇者! 何言ってんのよ! それ一番言っちゃダメなやつじゃない!」


リリが悲鳴を上げたが、俺はもう止まらない。相手がガキなら、現実を突きつけて上に立つのが一番手っ取り早いのだ。


ゼルは目を見開き、手に持っていた高級そうなお菓子をポロッと床に落とした。


「……しゃちょうが、帰ってこーへん……? ケーキ、ない……?」


「そうだ! だからいつまでもスネてないで、さっさと火を出せ!」

「お前が今やるべきなのは、俺みたいな優秀で大人な新入社員の言うことを聞いて、暖炉に火をつけることだ!」

「ほら、ガキは大人しく大人の言うことを聞いとけっての!」


俺はさらに畳み掛けた。


「今すぐ火を出せば、俺が初任給をもらった時に、その辺の村のパン屋で安いカップケーキくらいなら買ってきてやるからよ!」

俺は天を仰いだ。

「な? 俺の持ってる泥水ゼリーよりはマシだろ?」


俺が勝ち誇った顔で胸を張った、その瞬間だった。


俯いていたゼルの周囲の空気が、急激に、異常なほどの熱を持ち始めた。


足元の石畳が、パキッ、パキィッ!と嫌な音を立ててひび割れ、その隙間からドロドロに溶けたマグマのような赤い光が漏れ出す。


……あれ?


なんか、さっきより数倍ヤバい気配がするんだが。


俺の『探索強化』の危険度アラートが、城内のノイズをぶち抜いて、頭の中でぶっ壊れた火災報知器のように鳴り響き始めた。視界のレーダーが真っ赤から漆黒へと変わっていく。城内なのに読めてしまう。本当にヤバい。


「……誰が、ガキやねん」


ゼルが、ゆっくりと顔を上げた。


その金色の瞳は、完全に理性を失い、純粋な怒りと破壊衝動だけで爛々と燃え盛っていた。


「社長が嘘つくわけないやろ!! 俺を騙すなや、このクソボケ新入りがあああああああ!!!」


「ひぃぃぃぃぃ!? や、やべえ! 完全に特大の地雷踏み抜いた!」


暴走スイッチ、完全に入った。


「お菓子を取り上げられる(落とした)」「子供扱いされる(ガキ扱い)」「挑発される」。


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