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魔王軍倒産しました。〜領地は絶賛再建中・勇者は絶賛就職中〜  作者: 瀬大
第2話 マオリョー、人材確保します
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マオリョー、人材確保します⑤ 忠誠心の方向が、おかしい

「湧き出させるな! 足元が泥沼になってんだろ!」

俺はこめかみを押さえた。

「お前のその重すぎる忠誠心、方向が完全にイカれてるんだよ!」

「なんで追放されたのにそんなに慕ってんだよ!」

「ストーカー通り越してただのサイコパスじゃねえか! 悪気がない分、タチが悪すぎる!」


俺は悲鳴を上げながら後ろに飛び退いた。


これはヤバい。こいつは本物の厄災だ。隣にいる大声で自爆するポンコツサキュバスとは真逆の、静かに笑顔で特大の惨劇を引き起こすタイプの、最悪のポンコツだ。


「……おい、ポンコツ人事。俺は今、猛烈にこいつを城に連れ帰るべきか迷っている」

俺はツッコんだ。

「っていうか、連れ帰りたくない。絶対に連れ帰りたくない」


「なによ! わたしだって連れ帰りたくないわよ! でも安定したお水が必要なんでしょ!」

「わたしの気合いの水は昨日一滴しか出なかったし! お互い背に腹は代えられないってやつよ!」


「お前も嫌なのかよ! じゃあ二人揃って嫌がってんのに、なんで連れ帰ることになってんだよ!」

俺は天を仰いだ。

「……くそっ、わかってる。水がないと死ぬのは俺だ」

「こいつの『良かれと思って』やる行動が、全部致命的な大惨事に直結してるのはわかってるけど、背に腹は代えられねえ……!」


俺たちがヒソヒソと(いや、大声で)揉めていると、ミィナがスッと距離を詰めてきた。


相変わらずの、完璧な微笑みだ。


「……勇者様。ひどいです。わたし、こんなに健気で、アイシス様のため、会社のために粉骨砕身する覚悟があるのに」


「その覚悟の矛先が常に間違ってんだよ!」

俺はこめかみを押さえた。

「お前、城に戻ったらまた『アイシス様のために』とか言って、何かとんでもないものを水没させる気満々だろうが!」


「……いいえ、そんなことしません。わたしも反省しています」

ミィナは頬に手を当てた。

「……よろしければ、アイシス様のために、この倒産したボロ城の穢れをすべて浄化して、一度きれいな湖の底に沈めてさしあげましょうか?」

「新しいピカピカの城の基礎になりますよ。……ふふっ」


「ナチュラルに城を滅ぼそうとするなああああ!!」

「お前は息をするようにテロを提案するんじゃない!」

「笑顔で静かに言うから余計にサイコパスみが増して怖いんだよ!」

「お前は絶対、無意識のテロリストだ!」


俺は頭を抱えてしゃがみ込んだ。


関わりたくない。全力で逃げ出したい。


だが、背に腹は代えられない。水がないと俺が死ぬ。俺の命がかかっているのだ。


「……くそっ。わかった、連れて帰ってやる」

「お前を再雇用してやるから、絶対に俺の許可なく魔法を使うなよ!」

「特にアイシス絡みで勝手に動くな! いいな!?」


「……本当ですか!? またアイシス様のおそばで働けるんですね!」

ミィナはにっこりと笑った。

「ありがとうございます、勇者様! わたし、今度こそ役に立ちますから!」

「どんなご迷惑な仕事でも、このミィナにすべてお任せください!」


「お前が一番の迷惑なんだよ! なんで自分から迷惑って言っちゃってんだよ!」


「……ふふっ。迷惑かどうかは、かけてから判断してくださいね」


「事後承諾前提かよ! かける前にやめろっつってんだよ!!」


俺の悲痛な絶叫は、美しい湖畔の青空に空しく吸い込まれていった。


こうして俺は、安定した水源と引き換えに、静かに微笑む歩く厄災を一つ、城へと連れ帰ることになったのだ。


俺の平穏な異世界生活というささやかな夢は、この時点で、完全に水底へと沈んだのだった。


---


「……おい、ポンコツ人事」

俺は声を張り上げた。

「俺の耳が完全に腐って異世界のバグを受信しているのでなければ、お前、今信じられない単語を口にしたよな?」


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