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魔王軍倒産しました。〜領地は絶賛再建中・勇者は絶賛就職中〜  作者: 瀬大
第10話 マオリョー、宣戦布告されます
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マオリョー、宣戦布告されます⑦ 全員、城門まで退け


「そ、そうよ、わたしたちは烏合の衆なんかじゃ……完璧なアライアンスで、しなじーを生み出す、最強のたーすくふぉーすなんだからぁぁ!」

泥にしゃがみ込んだリリが、半泣きで横文字を撒き散らす。

「追い詰められて横文字吐くな! その意識高い言葉、今まで一個でも役に立ったことあるか!?」


「おっちゃん、後ろや!」

ゼルの叫びと同時に、背後から複数の足音。

振り向きざまに薙ぐが、泥に足を滑らせ、片膝が濁流に沈んだ。冷たい泥水が、じわりと体温を奪っていく。


……強いのに、噛み合わない。

一人ひとりは圧倒的なのに、嵐ひとつで手足をもがれている。このまま意地を張れば、全滅だ。


「だーっ、もう無理! 全員、城門の中まで退くぞ!」

俺は泥から足を引っこ抜き、なりふり構わず叫んだ。

こんなとこで無給のまま犬死にとか、どう考えても割に合わない。意地より命、見栄より撤退。逃げの一手だって立派な戦略だ。

……まあ、ただで追い返されてやるほど、お人好しでもねえけどな。


「ほら、ぐずぐずすんな! 城門の中まで引くぞ!」

俺は泥まみれの剣を振り回した。

死ぬ気はさらさらないが、こいつらを置いて一人で逃げると後で何を言われるか分からない。仕方なく怒鳴る。


「嫌よ! エリートの辞書に撤退の二文字はないわ!」

リリが地団駄を踏んで駄々をこねる。

「じゃあ今すぐ辞書に書き足せ! 撤退、てき、たい!」

俺はリリの首根っこを掴んで引きずった。

「面子で腹は膨れねえし、見栄じゃ命も守れねえんだよ!」


「離せや! 俺はまだ誰も丸焼きにしてへんぞ!」

ゼルが足をばたつかせる。

「腹は減ったけど、まだ一発くらいは……」

「その一発が出る前に嵐で消えるだろ! さっきから火種にもなってねえ!」

俺はゼルの背中を蹴って門へ押し込んだ。


『……わらわに命令するな。足元が泥で汚れて、ただでさえ不愉快なのよ』

西から、アイシスの不機嫌な声。

「その不愉快ごと中に下がれ! 泥を嫌うなら屋根の下が一番だろ!」

「ミィナも突っ立ってないで下がれ! 浄化はいい、今はいい!」

「ですが、この泥を清めれば足場も――」

「後でいい! お前が今やると確実に城門ごと流すだろ!」


影の中でノクテが、急げとばかりに激しく手招きしている。

西で戦っていたアイシスも合流し、俺たちは転がるように半壊の城門の内側へ滑り込んだ。

分厚い木の扉を、俺とゼルで無理やり閉ざす。


ドスンッ!

「……はぁっ、はぁっ……!」

俺は扉に背中を預けて、ずるずるとへたり込んだ。

「死ぬかと思った……マジで二度とごめんだぞ、こんなの」


その時だった。

城を包み込んでいた暴風雨が、嘘のようにピタリと止んだ。


「……あ?」

顔を上げると、真っ暗だった雷雲がスーッと晴れ、青空が顔を出す。

城門の隙間から覗くと、傭兵たちも困惑して立ち尽くしていた。


『いやぁ、泥んこ遊びもこのへんにしとこか』

空から、飄々とした声。

見上げると、黒い翼を持った天狗のストムが宙に浮いている。


「ストム……!」

俺は剣を握り直した。


『あんたらも、時給分は働いたやろ。今日はもう帰るで』

ストムが傭兵たちに笑いかける。

「ふざけんな! 全身ドロドロじゃねえか!」

傭兵の一人が悪態をついた。

「これでボーナス無しなら割に合わねえ! お前んとこの商会も大概ブラックだぞ!」


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