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王女が落ちてくる予感はしていた  作者: 蒼井みつき


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第44話 王女、送り出される

 帰る日の朝。


 村の入り口には、

 思ったより人が集まっていた。


「もう帰るのかー?」


「王女様また来て!」


 子どもたちが口々に騒ぐ。


 エリシアは少し困ったように笑いながら、

 一人ずつ手を振っていた。


「はい、また来ます!」


 その返事が、

 妙に本気っぽい。


 一方。


 ガルドは荷物を抱えながら騒いでいた。


「帰りたくねー!」


「お前が一番満喫してただろ」


「村最高!」


 リナが吹き出す。


「ほんと順応早かったね」


 その横で、

 セシルは静かに笑っていた。


「でもわかるかも」


「何が」


「居心地いいんだよね、この村」


 ダインも小さく頷く。


「気を張らなくていい」


 たしかに。


 王都とは空気が違う。


 すると母さんが、

 大量の包みを押しつけてきた。


「はい、お弁当!」


「多っ!?」


「育ち盛りでしょ!」


「誰が」


「全員!」


 雑だな。


 一方。


 エリシアは、

 そんなやり取りを少し寂しそうに見ていた。


 たぶん。


 本当に帰りたくないんだろう。


 そのとき。


「王女様」


 カヤが静かに声をかけた。


「また来ればいいじゃん」


 一瞬。


 エリシアが目を丸くする。


「……いいんですか?」


「リオん家、たぶん勝手に歓迎するし」


「するわよー!」


 母さんが即答した。


 軽い。


 でも。


 エリシアは本当に嬉しそうだった。


「……はい!」


 その笑顔を見ていると、

 胸の奥が少しだけ締まる。


 すると。


「リオ」


 エリシアが小さくこちらを見た。


「また来てもいいですか?」


「好きにしろ」


「それ、許可ってことでいいですよね?」


「勝手に解釈するな」


 だが。


 エリシアは楽しそうに笑った。


 結局。


 馬車が動き出す最後まで、

 彼女は何度も村のほうを振り返っていた。


 その姿を見ながら思う。


 数日前まで、

 この王女はただの面倒ごとだった。


 なのに今は。


 帰るのを少し惜しいと思ってる自分がいる。


 ……たぶん、

 もう手遅れなんだろうな。

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