第45話 平民、王都へ戻る
村を出て数日。
馬車の窓から、
見慣れた王都の城壁が見えてきた。
「戻ってきちゃいましたね」
エリシアが小さく呟く。
村にいた時とは違う。
護衛。
馬車。
並ぶ貴族の紋章。
王都の空気。
近づくほど、
現実へ引き戻される感じがした。
一方。
ガルドは窓へ張りついている。
「うおー! 王都だ!」
「数日前までいたろ」
「なんか久々な感じする!」
気持ちは少しわかる。
リナも苦笑していた。
「村、思ったより落ち着いたもんね」
その横で、
セシルが静かに笑う。
「リオ、村だと別人みたいだった」
「どういう意味だ」
「自然体って感じ」
するとダインも頷いた。
「王都いる時より肩の力抜けてたな」
言われると否定しづらい。
村では、
変に気を張らなくて済むからだろう。
一方。
エリシアは窓の外を見たまま、
小さく息を吐いた。
「また忙しくなりますね」
「王女様だからな」
「今だけその呼び方やめてください」
少しだけ拗ねた声だった。
思わず笑ってしまう。
「じゃあエリシア」
一瞬。
彼女が目を丸くする。
それから、
少しだけ嬉しそうに笑った。
「……はい」
その返事が妙に柔らかくて、
少しだけ落ち着かなくなる。
すると。
「おかえりなさいませ、殿下」
王城前で待っていた騎士たちが、
一斉に頭を下げた。
空気が変わる。
エリシアも、
さっきまでとは違う顔になる。
王女の顔だ。
だが。
馬車を降りる前、
彼女は小さくこちらを見た。
「リオ」
「ん?」
「また行きましょうね」
その言葉に。
胸の奥が、
少しだけ熱くなった気がした。




