第42話 王女、普通の時間を知る
翌朝。
居間へ行くと、
エリシアが母さんと一緒に朝食の準備をしていた。
「……何してるんだ」
「お手伝いです!」
妙に誇らしげだった。
だが。
「殿下、それ塩ではなく砂糖です」
レティシアが即座に止める。
「危なっ」
「間違えてません!」
「今入れようとしてただろ」
するとエリシアは、
少しだけ頬を膨らませた。
「料理って難しいですね」
「王女だからな」
「リオもできないでしょう」
「できるわ」
村人なめるな。
一方。
ガルドはすでに席へ座っていた。
「朝飯まだ!?」
「お前は待て」
「腹減った!」
子どもか。
その横で、
セシルは眠そうに欠伸をしている。
「ほんと村って朝早い……」
「だから農村だって」
「便利な言葉だね、それ」
一方。
ダインは静かに窓の外を見ていた。
「今日も晴れてるな」
「村は天気悪いと困るからな」
「生活が近いんだな」
ぽつりと呟く。
するとエリシアが、
少しだけその言葉へ反応した。
「……はい」
小さく頷く。
「王城だと、こういう時間ないんです」
朝食は決まった席。
決まった会話。
決まった空気。
静かで。
綺麗で。
でも。
「息が詰まりそう」
カヤが素直に言った。
一瞬。
エリシアが目を丸くする。
それから、
少しだけ苦笑した。
「……そうかもしれません」
そのとき。
母さんが焼きたてのパンを運んできた。
「はい、できたわよー!」
一気にいい匂いが広がる。
「うまそー!」
ガルドが即座に反応した。
「だから待てって」
騒がしい。
でも。
エリシアはそんな食卓を、
少し嬉しそうに見ていた。
「……なんか、不思議です」
「何が」
「特別なことしてないのに、楽しいです」
その言葉に、
居間の空気が少しだけ柔らかくなる。
たぶん。
この王女、
本当にこういう時間に飢えてたんだろう。
するとエリシアは、
少し照れたように笑った。
「だから帰りたくなくなるんですね」
すると。
「へえ」
セシルが面白そうに頬杖をつく。
「王女が村へ移住か」
「しません!」
即答だった。
「でも割と本気で悩みそうだったよ?」
「悩みません!」
「顔赤いけど」
「赤くないです!」
その横で、
リナが吹き出す。
「わかりやすー」
「リナさんまで!?」
一方。
ガルドは普通に感心していた。
「でも王女様、村似合うよな」
「お前まで乗るな」
完全におもちゃにされていた。




