第39話 平民、変に意識してしまう
「王女様すげー!」
「もう一回!」
子どもたちがエリシアを囲んで騒いでいた。
小さな風魔法。
それだけなのに、
村の子どもたちは目を輝かせている。
一方。
エリシア本人も、
妙に楽しそうだった。
「そんな大した魔法じゃないですよ?」
「でも綺麗!」
「わあ……」
花びらが舞うたび、
歓声が上がる。
その様子を見ながら、
ガルドが感心したように頷いた。
「人気だなー」
「そりゃ王女だし」
「いや、なんか普通に好かれてる」
それは少しわかる。
エリシアって、
距離の詰め方が変なんだよな。
身分高いくせに、
妙に近い。
だから子ども相手でも、
壁がない。
すると。
「リオ兄ちゃん!」
急に呼ばれた。
「ん?」
「王女様のこと好きなの?」
「ぶっ――!?」
盛大にむせた。
一瞬で空気が止まる。
「な、なんでそうなる!」
「だって仲良い!」
「いつも一緒いるし!」
「王女様、リオ兄ちゃん見ると嬉しそう!」
子どもって容赦ないな!?
一方。
エリシアも固まっていた。
耳が赤い。
わかりやすすぎる。
その横で、
リナが完全に笑いを堪えている。
セシルなんか、
もう肩震わせてる。
「青春だねえ」
「うるさい!」
一方。
ガルドはなぜか真剣な顔だった。
「つまり両想いか?」
「話を飛ばすな!」
「え、違うのか?」
「違――」
否定しようとして。
言葉が止まる。
頭に浮かぶ。
笑う顔。
楽しそうな声。
村ではしゃいでる姿。
そして。
『……帰りたくなくなりますね』
少し寂しそうに呟いた声。
「……リオ?」
エリシアが、
少し不安そうにこっちを見る。
期待と不安が混ざったような目。
ずるい。
本当にずるい。
「……嫌いではない」
気づけば、
そんな言葉が口から出ていた。
一瞬。
空気が止まる。
そして。
「わーーー!!」
子どもたちが騒ぎ始めた。
「好きって言った!」
「言ってない!」
「今のほぼそうじゃん!」
リナがとうとうしゃがみ込む。
セシルは笑いすぎて息苦しそうだった。
一方。
ガルドはなぜか感動している。
「リオ……成長したな……」
「なんで親目線なんだよ!」
その横で、
ダインが静かに呟く。
「……否定しなかったな」
「お前まで乗るな」
だが。
エリシアは顔を真っ赤にしたまま、
小さく俯いていた。
耳まで赤い。
その様子を見た子どもたちが、
さらに騒ぎ始める。
「王女様も照れてるー!」
「うわー!」
「やめろお前ら!」
もうめちゃくちゃだった。




