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王女が落ちてくる予感はしていた  作者: 蒼井みつき


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第38話 王女、畑ではしゃぐ

「では、頑張ります!」


 エリシアが妙にやる気だった。


 畑の前で、

 なぜか拳まで握っている。


「そんな気合い入れる作業じゃねえぞ」


「でも大事なお仕事です!」


 間違ってはいない。


 一方。


 親父は妙に面白そうだった。


「まあ、雑草抜きくらいなら平気だろ」


「親父、絶対面白がってるだろ」


「失敗も経験だ」


 絶対そうだ。


 するとエリシアは、

 さっそく畑へしゃがみ込んだ。


「これですか?」


「それ野菜」


「難しいですね」


 開始十秒である。


 一方。


 リナはもう笑いを堪えきれていない。


「向いてなーい!」


「まだ始まったばかりです!」


 エリシアが抗議する。


 だが。


「これは?」


「野菜」


「こっちは?」


「それも野菜」


「難しすぎません!?」


 全然進まなかった。


 その横で、

 セシルが肩を震わせている。


「王女が真顔で雑草探してる……」


「笑うな」


「いや無理でしょこれ」


 一方。


 ガルドは別方向で問題を起こしていた。


「お、これ抜けばいいんだな!」


「待てそれ収穫前!」


「えっ」


 親父が真顔になる。


「ガルド」


「はい」


「畑から出ろ」


「なんで!?」


 即戦力外だった。


 一方。


 ダインは静かに畑を見回していた。


「意外と広いな」


「まあ村だからな」


「便利な言葉だね」


 セシルが笑う。


 そのとき。


「あっ!」


 エリシアが急に声を上げた。


「今度こそ雑草です!」


「……合ってる」


「やりました!」


 たかが一本で、

 なんでそんな嬉しそうなんだ。


 すると近くで遊んでいた子どもたちが、

 少しずつ集まってきた。


「何してるのー?」


「王女様が雑草抜いてる」


「王女様!?」


 一気に人数が増える。


「うわ、綺麗!」


「ほんとにお姫様みたい!」


 いや実際そうなんだけど。


 だがエリシアは、

 少し困ったように笑った。


「こんにちは」


 その自然さのせいだろうか。


 子どもたちは、

 ほとんど緊張していなかった。


 むしろ普通に囲み始めている。


「王女様って魔法使えるの!?」


「あー……」


 リナが面白そうに笑った。


 一方。


 レティシアは嫌な予感をした顔になる。


「殿下、あまり目立つことは――」


「少しくらいなら大丈夫ですよね?」


 もう聞いてない。


 エリシアは子どもたちへ向き直ると、

 小さく手を前へ出した。


 ふわり、と風が舞う。


 花びらが浮かび、

 子どもたちが一斉に目を輝かせた。


「すげー!!」


「もう一回!」


「王女様すごい!」


 その中心で笑っているエリシアは、

 学院で見る王女とは少し違った。


 もっと年相応で。


 ずっと楽しそうだった。


 すると。


「おーいリオー!」


 遠くからガルドの声。


「暇!」


「知らねえよ!」


「もう追い出された!」


 早すぎるだろ。

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