第34話 王女、普通に同行してくる
嫌な予感は当たった。
「準備できました!」
「なんで来てるんだよ」
学院の正門前。
馬車の横で、
エリシアが満面の笑みを浮かべていた。
しかも普通に旅行服姿である。
「変装しました!」
「全然隠れてない」
隣ではレティシアが、
すでに疲れた顔をしていた。
「止めたのですが……」
「止まらなかった?」
「はい」
知ってた。
一方。
「うおー! 馬車旅!」
ガルドは妙に元気だった。
「お前ほんと楽しそうだな」
「初めての辺境だぞ!」
「観光気分やめろ」
リナは笑いながら荷物を見ている。
「でもちょっと遠出って感じするね」
「お前まで浮かれるな」
その横で、
セシルは静かに笑っていた。
「ここまで大人数で移動するの、なんか新鮮だね」
「俺は不安しかないけどな」
「もう手遅れじゃない?」
否定できない。
一方。
ダインは落ち着いた様子で馬車へ乗り込む。
「数日くらいなら悪くなさそうだ」
「お前順応早いな」
「騒がしくなりそうだから見ておきたい」
他人事みたいに言うな。
だが。
実際かなり不安だった。
王女連れて帰省する平民ってなんだよ。
しかも護衛騎士付き。
絶対村で騒ぎになる。
するとエリシアが、
馬車へ乗り込みながら振り返った。
「リオ、早く行きましょう!」
「お前が一番乗り気だな」
「当然です!」
なんでだよ。
だが。
その笑顔を見ていると、
少しだけ毒気を抜かれる。
結局。
俺たちは王都を出発した。
石畳の街。
並ぶ店。
見慣れた景色が、
少しずつ後ろへ流れていく。
「……帰るんだな」
ぽつりと呟く。
すると向かい側のエリシアが、
静かにこちらを見た。
「楽しみですか?」
「半分くらい」
「残り半分は?」
「不安」
即答すると、
リナが吹き出した。
「王女様連れてるから?」
「それもある」
「それ“も”なんだ」
全部だよ。
一方。
エリシアは窓の外を眺めながら、
少しだけ目を細めていた。
「王都の外って、久しぶりです」
「そんな出れないのか」
「立場上、自由には」
その声は軽い。
でも。
少しだけ本音が混ざっている気がした。
だからだろうか。
「……まあ、今回は好きに見とけ」
気づけば、
そんな言葉が口から出ていた。
一瞬。
エリシアが目を丸くする。
それから。
「はい!」
やたら嬉しそうに笑った。
その顔を見た瞬間。
たぶん今回の帰省、
静かには終わらないなと思った。




