第33話 平民、帰省することになる
「帰省?」
エリシアが目を丸くした。
昼休みの中庭。
俺が頷くと、エリシアは少し不思議そうな顔をする。
「リオ、実家へ帰るんですね」
「そりゃ帰るだろ」
「なんか想像つきません」
「どういう意味だ」
「学院にずっといるイメージでした」
それは俺もだよ。
王都へ来てから、
毎日何かしら騒がしかった。
一方。
ガルドは妙に乗り気だった。
「辺境の村なんだろ?」
「まあな」
「気になる!」
「観光じゃねえんだぞ」
するとリナまで笑う。
「でもちょっと見てみたいかも」
「お前もか」
嫌な予感。
その横で、
セシルが面白そうにこちらを見ていた。
「リオの地元、ちょっと興味あるな」
「なんで」
「学院だとずっと振り回されてるから」
「誰のせいだと思ってる」
セシルが吹き出す。
一方。
ダインは静かに考えるように呟いた。
「ラグナ村……薬草で有名な辺りか」
「知ってるのか?」
「少しだけ」
初めて知った。
するとエリシアが、
少しだけ身を乗り出した。
「ラグナ村へ帰るんですね」
「まあな」
「……また行ってみたいです」
一瞬。
ガルドたちが目を丸くする。
「え、王女様もう行ったことあるの?」
「落ちてきました」
「???」
ガルドが混乱している。
「待って情報量!」
「俺も最初そうだった」
一方。
エリシアは少しだけ懐かしそうに笑った。
「静かで、あったかい場所でした」
一瞬。
胸の奥が少しだけざわつく。
なんでそんな顔で言うんだよ。
すると。
「決めた!」
ガルドが突然立ち上がった。
「俺も行く!」
「は?」
「楽しそう!」
「遊びじゃねえ!」
一方。
リナは完全に面白がっている。
「王女様も行きたそう」
「えっ」
エリシアが固まった。
わかりやすい。
「……行きたいです」
小さく呟くみたいに言う。
嫌な予感がした。
かなり強いやつ。
「いや無理だろ」
「どうしてですか?」
「王女だからだよ!」
するとエリシアは、
少しだけ頬を膨らませた。
「ちゃんと変装します」
「そこじゃない」
「迷惑はかけません!」
もうかけてる。
だが。
その青い瞳は、
本気で楽しみにしている子どもみたいだった。
……断りづらい。
するとセシルが、
肩を竦めながら笑う。
「もう諦めたら?」
「他人事だと思って……」
「でもたぶん来るよ、この人」
否定できない。
そのとき。
エリシアが、ふっと笑った。
「リオの育った場所、もう一度見てみたいです」
一瞬。
胸の奥が少しだけざわつく。
なんでそんな顔で言うんだよ。




