第32話 平民、帰省メンバーがおかしい
「採用された」
「なんで!?」
嫌な予感しかしなかった。
というかもう予感じゃない。
確定で面倒事だ。
「いや待ってください」
俺は本気で頭を抱えた。
「なんで帰省に剣術科トップ連れて行く流れになってるんですか」
「面白そうだから?」
「本人が認めた!?」
ダインが楽しそうに笑う。
止めろ。
その“楽しそう”で大体ろくなこと起きないんだよ。
エリシアは少しそわそわした様子でアレクシスを見る。
「兄上、本当にいいの?」
「護衛付きなら問題ない」
「いや問題しかないんですけど!?」
王女。
王太子。
剣術科上級生。
平民の村。
絶対おかしい。
どう考えてもおかしい。
「安心しろ」
アレクシスが淡々と言う。
「表向きは学院休暇中の視察扱いにする」
「余計だめでは?」
「視察!?」
エリシアの目がきらっと輝いた。
やめろ。
なんで嬉しそうなんだ。
「視察なら自然ね!」
「自然じゃない!」
普通の村だぞ!?
王都から離れた田舎だぞ!?
畑しか――いや畑しかないわけじゃないけど!
ダインが吹き出した。
「ははっ」
「笑うな!」
「いやだって、お前の反応おもしろいし」
「お前ほんとそればっかだな!」
すると。
「おーい!」
廊下の向こうから声が響いた。
振り向く。
ガルドだった。
後ろにはセシルとリナ、レティシアまでいる。
「なんで全員来た」
「リオが連行されてたから!」
ガルドが元気よく答える。
助けに来たわけじゃないんだな。
セシルは状況を見回して、小さく笑った。
「へえ。なんか面白そうな話してる?」
「してない」
「してるわよ!」
エリシアが即答した。
嫌な方向へ話が進んでる。
「リオの村へ行く話なの!」
「やめてください」
だがリナが目を輝かせた。
「えっ、行くの!?」
「増えるな」
「空、綺麗そう!」
「いやお前ら、自分の故郷帰れよ!」
思わず真顔で突っ込んだ。
「休暇だぞ!?」
「帰る場所あるだろ!?」
だがリナはけろっとしている。
「実家、王都だし」
「あ」
そうだった。
セシルも肩をすくめる。
「俺も似たようなもの」
レティシアは静かに口を開いた。
「私は帰省予定ありません」
「なんでみんな暇なんだよ……」
ガルドだけは腕を組んで悩んでいた。
「俺は帰るか迷う!」
「迷ってるやつ初めて見た」
その空気の中で。
エリシアは完全に乗り気だった。
「楽しそうね!」
「どこが!?」
するとセシルが吹き出した。
「ははっ。でも実際ちょっと面白そう」
「お前まで!?」
止まらない。
誰も止まらない。
その横で、アレクシスだけは静かだった。
「決まりだな」
「決まってない!」
だが。
エリシアはもう完全に楽しそうだった。
「楽しみね!」
終わった。




