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王女が落ちてくる予感はしていた  作者: 蒼井みつき


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第27話 平民、最後に押し切られる

「一年やばっ!?」

「剣術科第三押してるぞ!」


 観客席が大きく沸く。


 実際、流れは悪くなかった。


 ガルドが中央を押さえ、セシルが横から崩す。


 リナが上空から牽制し、レティシアが前線を支えている。


 そこへ俺が指示を飛ばす。


 一瞬だけ。


 本当に、一瞬だけ。


 剣術科第三を押し返していた。


 だが。


「へえ」


 ダインが笑う。


 その瞬間。


 空気が変わった。


 ぞわっ、と背筋が冷えた。


「っ!?」


 次の瞬間、ダインが目の前まで踏み込んでいた。


 速い。


 今までより明らかに速い。


 横薙ぎ。


 しゃがむ。


 突き。


 避ける。


 だが、そのせいで。


「ガルド!」


 指示が一瞬遅れた。


 中央前線。


 剣術科前衛二人が、一気にガルドへ踏み込む。


 ごっ!!


 重い衝撃音。


「ぐっ……!」


 押し返される。


 さらに後方。


「リナ上!」


「うわっ!?」


 対空魔法。


 風刃が連続で飛ぶ。


 リナが回避へ回らされる。


 上空支援が止まった。


 まずい。


 一気に流れが向こうへ行く。


 その間にも、ダインは俺へ張り付いていた。


「ほんと面白いな、お前」


「嬉しくない!」


 避けるので精一杯だ。


 指示へ集中できない。


 その瞬間。


 中央でガルドの障壁が大きく揺れた。


 さらにレティシア側へ前衛が抜ける。


「っ!」


 止めきれない。


 ばんっ!!


 ガルドの障壁が砕け散った。


 観客席がどよめく。


「前衛落ちた!?」

「まずいぞ一年!」


 セシルが無理やり戻る。


 だが数が足りない。


 その隙。


 ダインが笑った。


「そこ空いた」


 嫌な感じ。


 反射的に後ろへ飛ぶ。


 だが遅い。


 ばんっ!!


 衝撃。


 俺の障壁が大きく揺れる。


 同時に。


 後方でレティシアの障壁も砕け散った。


「そこまで!」


 教師の声が響く。


 一瞬、競技場が静まり返った。


 そして次の瞬間。


 歓声が爆発する。


「うおおおおっ!!」

「剣術科第三の勝利!」


 俺はその場へ座り込みそうになった。


「負けたぁ……」


 だが。


 観客席の視線は、妙にこっちへ集まっていた。


「あの一年やばくね?」

「平民の指揮おかしかったぞ!?」


 やめて。


 聞こえてる。


 そのとき。


「いやあ、楽しかった」


 ダインがこちらへ歩いてくる。


 汗ひとつかいてない。


 化け物かこいつ。


「次もお前とやりたいな」


「俺はやりたくない」


 即答だった。

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