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王女が落ちてくる予感はしていた  作者: 蒼井みつき


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第26話 平民、嫌な相手に気に入られる

「お前いると、チームの動き変わるんだな」


「……は?」


 思わず聞き返す。


 だがダインは、それ以上説明しなかった。


 楽しそうに笑ったまま、また木剣を振ってくる。


「うわっ!?」


 慌てて横へ飛ぶ。


 木剣が鼻先を掠めた。


 近っ!!


「お前ほんと危ないんだよ!」


「避けるお前がおかしいんだって」


「知らん!」


 観客席から笑いが起きる。


「また避けた!?」

「あの平民なんなんだ!?」


 俺も知りたい。


 だが、その間にも試合は動いていた。


 中央前線。


 ガルドが剣術科前衛二人と押し合っている。


「おおおおっ!!」


 大剣同士がぶつかる。


 ごっ、と重い衝撃音が競技場へ響いた。


 だが向こうの連携がうまい。


 一人が正面から押さえ、もう一人が横から崩してくる。


 ガルドが少しずつ押され始めていた。


「ぐっ……!」


 まずい。


 このままだと前線が崩れる。


 その横。


 障害物を使って回り込んでいたセシルが、一気に前へ出た。


「右、空いてるよ」


 低い声。


 次の瞬間。


 ばんっ!!


 セシルの木剣が、剣術科前衛の障壁を揺らした。


「ちっ!」


 相手がたまらず後ろへ下がる。


 その隙。


「ガルド押せ!」


「おらぁ!!」


 中央からガルドが押し返す。


 重い一撃。


 観客席がどよめいた。


「一年押してるぞ!」

「連携やばっ!」


 流れは悪くない。


 ガルドが正面を押さえ、セシルが横から崩す。


 上空では、リナが風弾で牽制していた。


「そっち行くぞー!」


 後方では、レティシアが細剣を構えたまま氷魔法を展開している。


 完全に止まって詠唱してるわけじゃない。


 前線寄りで動きながら、隙を見て氷を差し込んでいた。


 そして俺は、その全体を見ながら指示を飛ばしている。


 本来なら、かなり理想的な形だった。


 なのに。


「よそ見」


「っ!?」


 ぞわっ、と背筋が冷えた。


 反射的にしゃがむ。


 直後。


 ダインの木剣が頭上を横薙ぎに通り抜けた。


 風圧で髪が揺れる。


 近っ!!


「お前マジでしつこい!」


「試合中だからね」


「絶対楽しんでるだけだろ!」


 ダインが笑う。


 細い目が、ずっとこちらを見ていた。


 他の連中が前線で戦っている中、こいつだけ空気が違う。


 試合してるっていうより。


 観察されてる感じ。


「……なんなんだよお前」


「んー?」


 ダインが笑う。


「いや、お前さ」


 木剣を肩へ乗せたまま、こちらを見る。


「普通そこ見える?」


 その瞬間。


 胸の奥がどくりと鳴った。


 だが考える暇はない。


 後方。


 剣術科後衛が魔法陣を展開していた。


 淡い緑色の光。


 風魔法。


 狙いは――


「リナ上!」


「えっ」


 上空を飛んでいたリナが慌てて箒を傾ける。


 直後。


 風刃がその横を通り抜けた。


 轟音。


 後方障壁へ激突した風刃が、白い光を弾けさせる。


「うわっ!? 危なっ!」


「対空来てる!」


 リナが高度を上げながら叫ぶ。


 剣術科、かなり準備してきてる。


 しかも。


 左側。


 剣術科前衛の一人が、レティシア側へ抜けようとしていた。


 胸の奥がざわつく。


「セシル!」


「うん」


「左止めろ!」


 返事と同時に、セシルが障害物を蹴った。


 低い石壁を飛び越え、一気に左側へ回り込む。


 迎撃に出た剣術科前衛が、真正面から木剣を振り下ろした。


 だがセシルは受けない。


 半歩だけ体をずらし、相手の剣を横へ流す。


「っ!?」


 体勢が崩れる。


 その隙。


「レティシア!」


「はい!」


 レティシアの細剣が走った。


 氷を纏った斬撃が、相手障壁を大きく揺らす。


 さらに。


「ガルド今!」


「おおおおっ!!」


 中央からガルドが突っ込む。


 重い一撃。


 轟音。


 剣術科前衛の障壁に、大きなひびが走った。


 観客席が爆発みたいに沸く。


「一年やばっ!?」

「剣術科第三押してるぞ!」

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