第24話 平民、初戦から嫌な相手に絡まれる
第一競技場は、朝から異様な熱気に包まれていた。
石造りの巨大な円形競技場。
何段にも並ぶ観客席には、すでに大勢の学院生が集まっている。
「人多っ……」
思わず呟く。
ざわめきがすごい。
完全に祭りだ。
「すげえな!」
ガルドだけは目を輝かせていた。
「燃える!」
「俺は帰りたい」
「今さら?」
セシルが笑う。
その横では、リナが観客席を見上げていた。
「上級生めっちゃいるじゃん」
「教師陣までいますね」
レティシアが静かに周囲を見回す。
今日はいつもの学院制服ではなく、全員合同大会用の戦闘服だった。
レティシアは腰へ細剣を下げている。
やっぱりそっちのほうがしっくりくる。
「リオ」
観客席から声。
見上げると、エリシアがこちらへ手を振っていた。
その隣にはアレクシスもいる。
腕を組んだまま、相変わらず怖い顔だった。
目が合った瞬間、軽く頷かれる。
なんであの人、応援だけで威圧感あるんだ。
「参加チームは整列!」
教師の声が響く。
各チームがフィールド中央へ集まり始めた。
中央フィールドには低い石壁や障害物が点在している。
かなり実戦寄りの構造だ。
「へえ」
セシルが周囲を見回す。
「障害物多いね」
「動きやすそう!」
リナは嬉しそうだった。
逆に俺は嫌な予感しかしない。
そのとき。
「お」
聞き覚えのある声。
振り向く。
剣術科第三チームだった。
その先頭。
細い目の男が、こちらを見て笑っている。
「やっぱいた」
「……誰だっけ」
「ひどくない?」
ダインだった。
周囲がざわつく。
「剣術科第三だ……」
「ダインいるぞ」
かなり有名らしい。
だが本人は気にした様子もなく、こちらへ近づいてくる。
「へえ」
じろじろ見られた。
嫌だ。
なんか獲物見られてる気分なんだけど。
「お前がリオ?」
「そうだけど」
「普通だなあ」
「初対面で失礼すぎるだろ」
セシルが小さく笑う。
「一応褒めてるんじゃない?」
「どこが」
ダインは楽しそうに肩をすくめた。
「いや、もっと怖いやつかと思ってた」
「平民に何想像してんだよ」
「でも模擬戦見た感じ、面白そうだったし」
その言い方に、少し引っかかる。
面白そう。
なんか、試合相手を見る目じゃない。
「……何」
「別に?」
ダインは笑ったまま答える。
だが視線だけは、ずっとこちらを見ていた。
そのとき。
教師が前へ出る。
「これより合同大会第一試合を開始する!」
観客席が一気に沸いた。
「組み合わせは掲示済みだ!」
嫌な予感。
ものすごく嫌な予感。
教師が紙を広げる。
「第一試合――一年混成チーム対、剣術科第三チーム!」
うわ。
観客席が大きくどよめいた。
「初戦から!?」
「いきなり当たるのかよ!」
ダインが、にやっと笑う。
「よろしく」
「全然よろしくない」
即答した。
ガルドは逆に燃えていた。
「いいじゃねえか!」
「お前はな!」
リナも苦笑する。
「まあでも、相手かなり強いらしいぞ」
「知ってる」
セシルが小さく肩をすくめた。
「特にダイン。剣術科でもかなり有名」
「帰っていい?」
「もう整列してるから無理」
レティシアは静かにフィールドを見ていた。
「ですが、戦えない相手ではありません」
「え?」
「向こうは正面から押す戦い方です。連携を崩せば勝機はあります」
なるほど。
たしかに真正面から殴り合ったら終わる。
なら。
視線を巡らせる。
障害物。
距離。
動線。
なんとなく、流れが見えた。
その瞬間。
「へえ」
ダインが小さく笑った。
「やっぱお前、面白いな」




