第17話 平民、合同大会メンバーにされる
「無理です」
即答だった。
王様だろうが関係ない。
無理なものは無理だ。
「俺、剣使えません」
「知っている」
「魔法も使えません」
「知っている」
「なのに大会出ろっておかしくないですか!?」
俺が思わず身を乗り出すと、円卓の向こうに座る国王は落ち着いた様子で紅茶を口にした。
絶対楽しんでるだろこの人。
重厚な会議室には、王族や学院関係者、数人の貴族たちまで集まっている。
その貴族たちも、さすがにざわついていた。
「正気ですか……?」
「学院の合同大会だぞ?」
だよな!?
味方いた!
するとアレクシスが静かに口を開く。
「確かに、普通なら無理だ」
「普通です!」
「だがリオは普通ではない」
「最近みんなそれ言う!」
エリシアが隣で肩を震わせていた。
笑うな。
国王は机へ肘をつき、こちらを見る。
「合同大会は、単純な戦闘能力だけを見る場ではない」
「と言いますと」
「連携、判断、状況対応……そういった総合力も重要になる」
嫌な予感。
国王がにやりと笑った。
「つまり、お前の“予感”にも価値があるということだ」
「そんな期待されても困るんですけど」
すると、年配の貴族が不満そうに鼻を鳴らした。
「所詮は偶然でしょう」
お。
久々の擁護派。
「平民が合同大会で成果など――」
「では賭けるか?」
アレクシスが静かに言った。
一瞬で空気が止まる。
怖い。
「兄上?」
「もしリオが結果を出したなら」
金色の目が細くなる。
「今後、学院内で平民であることを理由に難癖をつけるな」
貴族たちが息を呑む。
王太子の圧が強すぎる。
先ほどの男も言葉を失い、やがて苦々しげに頷いた。
「……承知しました」
アレクシスはそこで初めて、少しだけ笑う。
「そうか」
怖い。
笑ってるのに怖い。
国王が椅子から立ち上がった。
「話は以上だ」
「終わり!?」
「なんだ、不満か」
「胃が痛いです」
「慣れろ」
無茶言うな。
会議室を出た瞬間、ようやく肺に空気が入った気がした。
「し、死ぬかと思った……」
壁へもたれかかる。
エリシアが隣で苦笑していた。
「お疲れさま」
「お前よく平気だな」
「平気じゃないわよ」
彼女は小さく息を吐く。
「でも……少し嬉しかった」
「何が」
「ちゃんと嫌だって言ってくれたこと」
金色の瞳が真っ直ぐこちらを見る。
ずるい。
「……本当に嫌だったけどな」
「そこは知ってる」
エリシアがくすっと笑う。
そのときだった。
「面白いことになってるね」
後ろから声がした。
振り向く。
セシルだった。
なんでいる。
「なんで王城いるんだ」
「僕も呼ばれてたから。合同大会の参加候補だよ」
あ。
そういや優秀組だった。
セシルは面白そうにこちらを見る。
「聞いたよ。“結果を出せ”だって?」
「他人事だと思って笑うな」
「でも出るんだろ?」
「出たくない」
「へえ」
セシルがにやっと笑う。
「じゃあ断る?」
「……」
断れば楽だ。
面倒も減る。
でも。
胸の奥がざわつく。
ここで逃げると、後悔する。
最近ずっとこれだ。
「……出るよ」
そう答えた瞬間、エリシアの顔がぱっと明るくなった。
「本当!?」
「お前その顔ずるいぞ」
「嬉しいもの」
セシルが吹き出す。
「完全に尻に敷かれてるね」
「違う」
「違わないわね」
エリシアまで乗ってくる。
そのとき。
廊下の向こうから、どたどたと騒がしい足音が響いた。
「リオーーー!!」
嫌な予感。
次の瞬間、ガルドが突っ込んできた。
「聞いたぞ!!」
「早いな情報!」
「合同大会に出るんだろ!?」
「半分強制だけどな!」
するとガルドはぐっと拳を握る。
「なら俺も出る!」
「なんで!?」
「仲間だからだ!」
「まだ続いてたのその設定!?」
さらに。
「空中戦なら任せろ!」
リナ。
「取材価値しかありません!」
フィナ。
「……騒がしくなりそうですね」
レティシアまでいた。
なんで全員いるの。
セシルが肩を震わせる。
「チーム、もう決まりじゃない?」
嫌な予感がした。
ものすごく。
たぶん今、
とんでもなく面倒な混成チームが完成しようとしていた。




