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王女が落ちてくる予感はしていた  作者: 蒼井みつき


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第13話 平民、一年最強と向き合う

「俺と決闘しろ!」


 朝一番で言われる台詞じゃない。


「嫌です」


「即答!?」


 ガルドがめちゃくちゃ驚いた顔をした。


 周囲もざわつく。


「断った!?」

「今までの流れなら受けると思ったのに」

「むしろ正常だろ」


 最後のやつとは仲良くなれそう。


 俺は真顔で言った。


「なんで毎回戦わされるんだよ」


「強者だからだ!」


「違う!」


 ガルドはぐっと拳を握る。


「セシル様を倒し、王子すら打ち破った男!」


「事故!」


「謙遜するな!」


「話通じねえ!」


 暑苦しい。


 すごく暑苦しい。


 エリシアが小さくため息をついた。


「ガルド」


「なんだ、エリシア殿下!」


「リオは別に戦いたがってないわ」


「む?」


 ガルドは腕を組み、真剣に考え始めた。


 数秒後。


「つまり強者ゆえの余裕か!」


「違うって!」


 だめだ。


 脳筋だこいつ。


 フィナが横で高速筆記している。


『一年最強、運命の恋人へ挑戦状!』


「仕事早いな!?」


 そこへクローディア先生が入ってきた。


「朝から騒がしいぞ」


 教室が一瞬で静まる。


 ガルドだけはびしっと背筋を伸ばした。


「先生!」


「なんだ」


「リオへ決闘を申し込みました!」


「却下だ」


「早っ!?」


 ガルドが崩れ落ちた。


 クローディア先生は淡々と言う。


「決闘は許可制だ」


「そんなルールあったの!?」


「昨日説明した」


「聞いてない!」


「お前が騒いでいたからだ」


 ぐうの音も出ない。


 先生は教卓へ教材を置きながら続ける。


「そもそもリオは基礎訓練段階だ。現時点でガルドと戦わせる意味がない」


「基礎なんだ俺」


「むしろ基礎以前だ」


 ひどい。


 事実だけど。


 ガルドが不満そうに唸る。


「だが、こいつは強いぞ!」


「偶然回避型だ」


「分類された!?」


 クローディア先生は俺を見る。


「リオ」


「はい」


「お前、自分の能力を制御できるか」


「できません」


「だろうな」


 即答だった。


 先生は腕を組む。


「なら今日は座学だ」


 教室がざわつく。


「座学?」

「クローディア先生の?」


 なんか嫌そう。


 するとセシルが小声で囁いてきた。


「終わったね」


「何が」


「先生の座学、地獄で有名」


「なんで!?」


 クローディア先生が黒板へ文字を書き始める。


『魔力理論基礎』


 うわ難しそう。


「この世界に存在する魔力は――」


 十分後。


「……」


 二十分後。


「…………」


 三十分後。


「死ぬ……」


 難しい。


 全然わからん。


 魔力循環?

 属性変換?

 知らん。


 畑には無かった。


 隣を見る。


 エリシアは普通に理解してる顔。


 セシルは余裕。


 レティシアに至っては嬉しそう。


 なんなんだこいつら。


「リオ」


「はい……」


「聞いていたか」


「聞いてました」


「では答えろ。人体における魔力経路の基本構造は」


「えっと……」


 終わった。


 わからん。


 だがその瞬間。


 予感がした。


 今、適当に答えるともっと死ぬ。


 だから正直に言った。


「わかりません」


 静寂。


 クローディア先生が数秒止まる。


 やばい。


 怒られる。


 だが。


「……正直なのはいい」


 怒られなかった。


「理解してないのに知ったかぶりするよりはマシだ」


 助かった。


 セシルが笑いを堪えてる。


「リオって変なとこ真面目だよね」


「嘘つくと怖い予感するんだよ」


「便利なんだか不便なんだか」


 クローディア先生はチョークを置く。


「リオ、お前は放課後補習だ」


「えっ」


「基礎知識不足が深刻すぎる」


「待ってください」


「なんだ」


「帰りたいです」


「却下」


 先生つよい。


 ガルドが突然立ち上がる。


「なら俺も補習を受ける!」


「なんで!?」


「仲間だからだ!」


「いつから!?」


 教室が爆笑した。


 エリシアまで笑ってる。


 レティシアは呆れた顔。


 クローディア先生だけが真顔だった。


「……頭痛が増えた」


 先生、本当に苦労人かもしれない。

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