177話 仮攻略
特殊ダンジョン女神の神殿。
半年前に突如として沖縄に現れたそれは、当初2週間ほどで消滅するだろうと思われていた。
しかし当初の予定は外れ、半年経った現在もそれは残り続けている。
ーー女神の神殿にて
「すみませんお待ち下さい」
女神の神殿に入ろうとした俺たち3人は、夜間警備をしているおそらくAランク攻略者に呼び止められる。
「ん、なんだよ?」
『スチャッ』
そう言って神宮寺はその攻略者に詰め寄ると、グラサンをカッコつけて下ろした。
神宮寺のこういう行動、同年代だからかなたまに自分の事のように恥ずかしくなるんだよなぁ。
なので、頼むから俺の目の前でそういう事はしないでほしい。
「これは!大変失礼致しました、S3攻略者の神宮寺さんでしたか」
「おう」
グラサンをとり神宮寺である事を確認したその攻略者は、そう言って笑顔を浮かべる。
「あ、どうもこんばんは」
「おお!その当たり障りのないような雰囲気は、同じくS3攻略者の柴崎さんですね」
「え、は、はい」
なんだよその覚え方、悪意があるのかないのかわからんぞ。
「はは、また変な覚え方されてやんの」
「うるせぇ神宮寺」
「柴崎さんの後ろにいるあなたはもしかして……」
「どもっす、蘭方っす」
「おおー!!ランキング1位の蘭方御厨さんじゃないですかぁ」
蘭方を見るなり警備している攻略者の顔は、先ほどとは別人と思えるほどに輝いていた。
そんなに変わると、こっちまで悲しくなるな……。
「おお、なんか乗り良くなったなあんた!」
「いえいえ、俺、貴方の大ファンなんです、てかなんでいるんだ?お前の乗る予定だった飛行機は、止まっていたはず……」
「自力で飛んできたんだよ、てかあんたこそなんでいんだよ……槙島さん」
『!?』
い、今槙島って言ったのか。
でも俺も神宮寺もこいつだってわからなかったぞ。
狂道化師の力で変装していれば、不死鳥の力でわかるはずなのに。
「おい柴崎、お前なんか感じたか?」
「いや神宮寺、俺は何も……」
「だよなぁ」
『スチャッ』
そう言って神宮寺はサングラスをかけた。
いやかけんなよ!
「てかさ槙島さん、あんたここで何してんの?」
「待っていたのさ君達をね、まぁ蘭方君は待ってなかったけど」
待ってたってどういう事だ。
てかコイツなんでこんなに冷静なんだ?
S3攻略者複数に囲まれてこんな余裕なことってないはず。
「待ってたってお前、犯罪者が俺たち待ってるってのは自首と同じだぞ」
「はは、何言ってるんだい神宮寺、僕は犯罪者なんかじゃないよ」
そう言って槙島はケタケタと笑い出す。
「はぁ!?お前鶏鳴狗盗だろ!したら犯罪者じゃねぇかよ」
「いやいや神宮寺、今の僕は川内稔っていうAランク攻略者なんだよ、だから犯罪者じゃないんだよ」
なんだ、何か嫌な予感がする。
不死鳥の力で狂道化師の変装なら見破れた、でも今回は違う。
ていうか狂道化師もいない。
これは一体。
『ブワッ』
その時、俺達の前にSSSレアダンジョンアイテム不死鳥が姿を現した。
『やぁ2人とも』
「おうフェニクス」
不死鳥は現れるなり、俺と神宮寺の方を見てそう挨拶してきた。
もしかしたら不死鳥なら槙島の今の状態がわかるんじゃないか。
「なぁフェニクスよ、ここにいるのが誰かわかるか?」
そう言って俺は槙島を指差した。
『ん?なんだいそれ、というか面白いな』
フェニクスはそう話すとニヤリと笑った。
「何が面白いんだ?」
『倫也に拓真、こいつ人の身でありがら同化してるんだよ』
「同化だと!」
神宮寺は大きな声でそう叫ぶ。
同化って確か英霊や精霊が適合者を使わないで、顕現する方法だったよな。
でもこいつ……。
「はは、バレちゃった、そうさ僕は英霊ーー」
『いや違う、残念だが槙島くん君は英霊ではない、それにその同化もかなり歪だ、持って1ヶ月といったところかな』
槙島の言葉を遮るようにフェニクスはそう話す。
「1ヶ月ってなんだよ」
『……倫也、おそらくだがこの槙島という男は人でありながら、人である事をやめ我ら精霊紛いの事をしたのだろう、だが完全ではない』
「どうすれば本物の川内さんは元に戻るんだ?」
俺はそうフェニクスに訊ねる。
『わからない、だが拓真よあそこにあるのは女神の神殿、ありとあらゆるダンジョンアイテムの眠る所だ……言っている意味はわかるね』
フェニクスは優しく微笑みそう俺に問い返す。
「なるほどね、それを見つけろって事か」
「ったく、仕方ねぇやってやるよ」
「え、なになに話は終わったの!」
「ら、蘭方くん……それじゃあ2人とも本攻略の前の仮攻略だけど、ダンジョン探索を開始するよ」
そうして俺達は女神の神殿の仮攻略に挑む。




