168話 魔神の包囲網
「英雄だぁ?」
サタンは蘭方のその発言に顔を歪ませ、そう言った。
「蘭方くん!!」
「お、鏡花ちゃーん!」
蘭方はサタンを無視して鏡花に手を振った。
「ほう、無視かこの俺を」
『ギュオオオ』
サタンの真獄が再びその出力を取り戻す。
「おいおい、なんだよそこのゴリ野郎、俺とやる気かよ」
『キュオオオ』
蘭方もそれに対抗すべく、左拳に女神の光を宿す。
「……凄いなお前」
蘭方の放つ光を見て、サタンはそう呟く。
「おう俺はすげぇぞ」
「いや、そうなんだが、そうじゃなくて、お前、人でありながら女神の光を扱えるのか」
「うん」
蘭方は淡白にそう答える。
「張り合いのない相手だ、お前と話すのはやめる」
「おう!」
「……」
その返事にサタンは複雑な顔を浮かべつつも、ゆっくりと蘭方の元へと進んでいく。
「なぁ、一ついいか」
蘭方は、地面に座り込む鏡花と、両断された御影を見てサタンにそう問う。
「ああ一つくらいなら構わんぞ」
「これやったのお前か?」
「俺以外にいるか?」
サタンは質問を質問で返す、そしてその返答を聞いて、蘭方の拳にさらに力を込める。
「そうか……なら俺もお前と話すのやめるよ」
「ああそうだな、お互いに拳をぶつけ合う、それが1番だろ」
『ギュオオオ』
そうしてサタンの真獄の出力が上がっていく。
「……」
『キュオオオ』
それに呼応するように蘭方の光も増していく。
「蘭方くん!気をつけてそいつはーー」
『シュッ』
鏡花が"そいつは恐ろしく早い"と言い切る前に、サタンは姿を消す。
『シュッ』
そしてサタンは一瞬にして、蘭方の目の前に現れる。
「蘭方ぉぉぁ!!」
『グルンッ』
サタンが現れたその刹那、蘭方は超反射により即座に反応。
そうして2人の拳は交わり大きな衝撃波を生む。
『ズドォン』
「ら、蘭方くん!!」
『シュゥゥゥ』
「やるな蘭方」
蘭方の拳はサタンの真獄を完全に抑え込み、相殺を成功させていた。
『ススッ』
拳をゆっくりと下げ、身体はサタンへと向けたまま蘭方は、視線だけを鏡花に合わせる。
「鏡花ちゃん、御影先輩を連れてここを離れててくれないか?」
普段はふざけている蘭方の真剣な言葉に、鏡花に緊張伝わる。
「わ、わかった、でも気をつけてね、そいつはおそらく」
「ああ、わかってるこいつの相手は俺にしかできないから」
そして蘭方の視線は再びサタンへと戻る。
「へへ蘭方よ、可愛い事言うじゃねぇかよ」
サタンは笑みを浮かべてそう答える。
「じゃ、じゃあ行くからな」
鏡花は、御影の亡骸を背負い、その場をあとにする。
その時ーー。
「蹴散らせ"魔弾"ウラヌス!!」
『ズドォン』
魔神サタンを、強力な爆撃が襲った。
「おいおい蘭方よ、1人で何をカッコつけてやがるのよ、俺も交ぜろ」
最強の攻略者、祭十蔵の到着である。
「お、おじ様」
鏡花はそう名を呼んだ。
「鏡花、大丈夫か?」
「う、うん、でも御影先輩が……」
鏡花は自身が背負う御影に視線を向ける。
「……そうか、ならしっかりと弔わないとな」
『シュッ』
その刹那、サタンの拳が祭の眼前に現れる。
「いきなり何すんだ、このクソジジイ」
「お、おじ様!!」
『ガギィン』
サタンの拳が祭に当たる寸前、黒紋付袴を着た男の刀が攻撃を止める。
『カタカタカタ』
サタンの拳と刀の当たる嫌な音が、祭の耳元で聞こえていた。
「さすがは旧友、助かったよ」
「……助ける気はなかったが、楓ちゃんや鏡花ちゃんの涙が、俺をそうさせたんだろうよ」
元攻略者ランキング2位花園真蔵、現着。
「おいおい、なんだよこれ、まさかピンチなのか」
サタンは拳を引き、そう話す。
「ピンチだぁ?」
「ピンチだな」
「なっはは、ピンチッスねぇ」
そうして最強攻略者3人は、サタンの前へ一歩踏み出す。
『こっからは俺達が相手だ』
ここに最強の魔神vs最強の攻略者達の戦いが始まる。
ーー1部完結まで残り4話ーー




