161話 凍狼の最後
「やめてくれよ、そんな、まだ消えないでくれ、頼むから」
連夜の言葉も虚しく、フェンリルの身体はどんどん薄くなっていく。
『ふふ、どうやらここまでのようだ』
フェンリルは己の終わりを悟り、静かにそう呟くと目を閉じる。
「いやまだだ、蘭方先輩が近くにいたはず、あの人なら治せるよ、安心してよフェンリル」
錯乱した連夜は、来れるはずのない遠くの蘭方の治療を期待し、フェンリルの傷を抑えた。
しかし、フェンリルの傷から出る血は止まらない。
『連夜、もういいから私の話を聞いてほしい』
「いや、そんな、嫌だそんな、だってこれからも一緒だって言ったろ、それがこんな終わり方なんて」
『……連夜』
連夜がフェンリルの適合者になったのは、今から3年前、連夜が15歳の時だった。
家族と共に訪れていた福井のダンジョンで偶然出会った2人は、そこから一緒に攻略者として道を歩みを始め、気がつけばランキング14位。
そんな順風満帆に思えた道すがらの相棒の死、連夜は認めたくないと強く思ったが、流れる血がそうはさせなかった。
「もう助からないんだな」
『ああ、終わりだ……楽しかったよ連夜」
幸せそうに目を閉じるフェンリルの姿を見て連夜の目に涙が溢れる。
「ああ俺もだよ相棒、おやすみ」
『ああ、おやすみ』
そうしてフェンリルの姿はさらに薄くなり、小さな青い毛玉となった。
『コロンッ』
「な、なんだこれ?」
『サワッ』
連夜はその毛玉を両手で掬い上げる。
『キャウッ』
毛玉はクルンっと一回転すると、小さな青い狐になった。
「はは、なんだよまだ一緒じゃんかよ」
『キャウッ!』
連夜とフェンリル、一度終わりを迎てしまった2人の、新たな旅が今始まるのだった。




