149.5話 蘭方と四季
「おい織姫!こっちの方が似合うんじゃない?」
「……いやありえないかな」
ここは池袋にあるとある商業施設。
この日、蘭方と四季の2人はお互いの休日が重なった事もあり、ここへ買い物にきていた。
目当てものは特になく、ブラブラしに来ている感じである。
「似合うと思ったんだけどなぁ」
そう言って蘭方は英語で"passion fruit"と大きく書かれたTシャツを棚へと戻した。
「それが似合うって、あんたの感性壊れてると思うよ」
「いやいや壊れてねぇし、普通だし」
「あっそ、あ、あんたにはこれが似合いそうだよ」
四季は近くにあった大きく"夏"と書いてあるTシャツを手に取った。
「そ、それは……」
蘭方はそのTシャツを見るなり動きが止まってしまう。
「めっちゃいいじゃん」
「でしょ、あんたこういうの好きだもんね」
蘭方と違い、四季は蘭方の好みをある程度把握している。
そのためわりと本気でそのTシャツを勧めていたのだ。
「わぁマジでいいじゃん、買ってくるわ!」
手にとって確認すると蘭方はレジへと走っていった。
蘭方と四季が兄弟となったのは、5年ほど前である。
当時の蘭方は親の離婚により、父と2人暮らし、そして四季も小さい頃に父親を事故で亡くして母親と姉の3人暮らしをしていた。
そんな2人の両親が結婚して血のつながらない兄弟となっている。
「あ、このコップ可愛いかも」
そう言って四季は目の前にある白犬のマグカップを手にとった。
そして今から2年前、当時高校生だった蘭方がダンジョンで行方不明となる事件が起きる。
四季を始め家族全員が蘭方を心配し救助に行きたかったが、四季は別の仕事があったり、父海星も研究で忙しく行けなかった。
そんな折、父海星に蘭方の実母である海道カイナからとある提案がされる。
"あの子を助けにいくから、あなたも来ない?"と。
海星は一般人がダンジョンに行く危険性をわかっていたため全力で止めたが、カイナは言う事を聞かず、ほかの高校生の両親たちを巻き込んでダンジョンへと行ってしまう。
そうしてカイナを始めとした親たちは、皆死んでいる。
「織姫ー!」
「御厨、もう買ったの?」
「おう!早速着替えてくるね!」
「はぁ、買ってすぐ着るつもり」
『タッタタタ』
蘭方は四季の静止も聞かずに、男子トイレへと駆け込んでいった。
しかし海道カイナのこうした行動に違和感を覚えたものがいる。
それは四季と四季の姉であり、事件当時の攻略者ランキング5位だった故人、四季神楽。
この2人はそもそも何故、祭らと同じパーティーの姉や祭の盟友を元旦那に持つカイナが、祭へ直接相談しなかったのかというところに疑問を持っていた。
しかし神楽はこの謎を追っている最中、何者かによって殺されている。
そして四季は。
「おーい織姫ー!」
「馬鹿!名前呼んで走ってくるな、脳みそ小学生が!」
「ひ、ひでぇよそれはぁ」
まだこの事件を調べている。




