145話 最後の魔神
ーー中央区、とあるビルの上
戦火の及ばないビルの上で、御影と嶺王は戦況を見守っていた。
「ねぇ嶺王、私達は戦わなくていいの?」
『うむ大丈夫だ、我らの仕事はこの城壁を維持する事にある、だから戦闘は祭達に任せておけば良いだろう』
そう話すと嶺王は東南方向の城壁を見つめた。
嶺王には、生成した城壁から半径5キロ圏内にいる者たちの強さが探知できる。
そのため嶺王だけがとある怪物の存在に気がついていた。
最強の魔族にして、最強の魔神。
そいつは三度、攻略者達の前に現れる。
『ギュン』
「ここは眺めが良いな」
嶺王の背後にとある魔族が出現する。
『瞬間移動か……よくここがわかったな』
「まぁ昔負けた相手だからな、気配はよく覚えてる」
『そうか……』
「ね、ねぇ嶺王こいつは一体なんなの?」
遅れること数秒、御影がその魔神の存在に気がつき嶺王にそう訊ねる。
『……小夏よ、ここでお別れだ』
「え?」
『ガシッ』
そう言って嶺王は御影を持ち上げた。
『いいか、今からお前をここからぶん投げる、そしたらすぐにスキルなりなんなり使って上手く着地しろ、良いな』
「え、ちょ、な、何を言ってーー」
『ブンッ』
そして嶺王は御影を天高く放り投げた。
「ふ、ふざけんなぁぁぁ」
そう言って御影は高さ45メートルのビルから落下していった。
「驚いた、お前が適合者を見つけるとはな」
『まぁ欲しくはなかったよ、ただ運良く出会っただけさ』
嶺王はそう話すと、落ちていった小夏の方を気にかける。
「なるほどな出会いは大事だ、俺もとある攻略者に出会ってしまったからな、気持ちはわかるよ」
魔神サタン、推定レベル350。
今までの魔族サタンはあくまでも完全顕現に至るまでの過程の姿であり、魔神サタンが完全な姿である。
『お前の出会いと俺の出会いの価値を同じにするな、俺の出会いの方が価値は遥かに上なのだからな』
嶺王、推定レベル340。
他の英霊と比較しても嶺王のその強さは規格外である。
「ああ久しぶりに全力をだせる、嶺王よお前はウォーミングアップだ、神宮寺の前のな」
『ぬかせサタンよ、ここでテメェは殺されてそれで終わりだ』
「何が殺すだ、生意気に適合者なんか作りやがってよぉぉぉ、アルティメットスキル発動、真獄」
『ギュオオ』
サタンの右拳が強力な赤紫のエネルギーで覆われた。
アルティメットスキル真獄。
消費ポイント10万以上、威力測定不能。
右拳にエネルギーを凝縮させて放つ、サタンの得意技である。
『力だけなのは相変わらずか、固有スキル発動、嶺山拳』
そう言うと嶺王の両拳が白銀色に輝き出した。
固有スキル嶺山拳。
触れたモノに山一つ背負わせるが如く強力な鈍化効果を付与するスキルであり、嶺王はこの拳を使いサタンの動きを止めるのが狙いである。
「そっちこそその拳はネタが割れているぞ、千年前と同じ様に俺の動きを遅くする作戦だろう、2度同じ手は食わぬぞ」
サタンはそう言うとニヤッと笑った。
『阿呆が、勝負は手の内が分かってからが本番なんだよ』
そうして千年ぶりに嶺王はサタンと相対する。




