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「2.5次元世界」にて、スキル「フレーム回避」を手に入れたゲーマー俺氏、無双開始秒読みな件について  作者: 木兎太郎
第二部 第四章 これで

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59話 後に


 瞼の奥に、光を感じる。

 ゆっくりと目を開けると、もとの場所に戻っていた。

 目前には、片膝をついて春樹が倒れている。

 肩から腹部にかけて斬った。

 相応の出血をしている。

 流石にあの局面で、最後まで峰打ちを貫くことはできなかった。

 それでも未だに意識を保っている彼は、本当に強い。


「描絵手…先に柵魔さんの治療を。」

「わ、わかった。」


 描絵手はすぐに柵魔さんの元へと近付き、彼女の治療を始めた。

 春樹は傷を抑えながら、ゆっくりと立ち上がった。

 すると今も倒れている秋葉の元へと、ヨロヨロと近づいていった。

 そして彼の方を見る。


「済まない、秋葉。」

「兄…さん。大丈…夫だよ。もう…終わりだね。」

「…本当に…済まない。」


 秋葉はなぜか、俺の方を見た。

 俺はなんとなく呼ばれた気がして、彼の方へと近付いた。

 すると彼は、疲れたような笑顔で話し始めた。

 おかしい、彼は時間の経過ですさまじく弱っていっている。

 出血するような傷を与えたならまだしも…一向に回復の兆しがない。

 何が起きているんだ…?


「君に…最後に会えてよかったよ。それに…夢豚さんにも。」

「…最後?」

「そうさ。僕は…もうすぐ死ぬ。僕のスペシャルスキル…"徴収"にはとある条件があってね。奪ったスキルを使えば…僕は寿命を消費するんだ。強力なスキルは当然代償を伴う。トライアルスキルみたいに、便利なものではないんだよ。見た目は若々しいけど、それは見た目だけなんだ。」

「…。」

「でも…後悔はしていないよ。これで…よかったんだ。もう…疲れた。」


 地下に広がる自然の上で、力なく横たわり、秋葉は天井を見上げている。

 何を考えているのか…俺には到底理解することができない。

 きっと俺よりも長い人生を歩んでいて、それは暗くて辛いものだった。

 だからこそ彼らは、こうして世界を滅ぼそうとしていたんだ。

 やがて秋葉ゆっくりと瞳を閉じた。

 そんな秋葉の手を、春樹がそっと握った。

 瞳から大粒の涙をこぼしながら、彼はじっと秋葉を見つめている。

 そんな俺たちの真横に、静かに誰かが立った。


「話は聞いていました。私なら…彼を救うことができます。」


 俺たちの真横に立ったのは、柵魔さんだった。

 彼女は倒れる秋葉を、興味なさげに見つめている。


「私は純粋な魔人の生き残りです。彼を眷属化することによって、寿命を延ばすことができます。」

「柵魔…さん?」


 これまでの柵魔さんを知っていれば、少しだけ意外な提案だった。

 彼女の視線は、やがて春樹の方へと向いた。

 秋葉はもはや声を出すことすら困難だ。

 決断するのなら、春樹だろう。

 しかし彼には、魔人に対する怨嗟の感情があるように思える。

 実際柵魔さんは、彼らに拷問されていたはずだ。

 提案を飲めば、秋葉は生き延びる代わりに魔人に近い存在になる。

 そんな彼女からのありえない提案に、さしもの春樹も戸惑っている。

 彼の唇は次第に微かに震え始め、やがて瞳から零れる涙の量が増えていく。

 そして彼は、握っていた秋葉の手を放し、柵魔さんの方を向いた。

 両手を地面につけ、最後にゆっくりと頭も地面につけた。

 ズッ、という小さな音が鳴った。


「君にしたことは…全て私が償う…だから…弟を…秋葉を助けてやってくれ。」

「分かりました。」


 意外にも素っ気ない柵魔さんの返事に、春樹はキョトンとした。

 そして秋葉へと手を差し伸べる彼女の方を見ながら、もう一度口を開いた。


「私たちは…君の同族を…何人も殺したんだぞ?そんな私たちを…どうして君は助けることができるんだ?」

「…契躱。」

「は、はい!?」

(い、いきなり名前呼び!?どういう心境の変化だよ!?)

「あなたは、どうして私を助けたのですか?」

「それは…ただ君を…助けたかった…から…です。」

「だ、そうですよ。」

「…。」


 春樹は無言で柵魔さんの方を向いた。

 彼女は秋葉の手を強く握りしめた。

 その手が、徐々に光輝く。

 やがて秋葉の髪は、徐々に黒色に染まり始めた。

 その黒髪は、艶やかで若々しさを感じるものだった。

 徐々に呼吸が元に戻っていく秋葉を見て、春樹が更に涙をこぼす。


「本当に…済まない…。ありがとう、…ありがとう。」


 春樹はゆっくりと目を開けた秋葉の体を強引に抱き寄せた。

 秋葉はそんな春樹に、キョトンとしている。

 だが次第に秋葉も、春樹の背へと手を回した。

 二人は暫く抱き合っていた。


「出来るだけ早く駆けつけたつもりでしたが、もう全て終わっているのですね。」


 俺たちは声が聞こえる方を見た。

 するとそこには、階段から降りてくるお姉ちゃんの姿があった。

 彼女はゆっくりとこちらに近づいてくる。


「元凶は…やはりあなた方でしたか。」


 彼女はそういうと、春樹の肩に触れた。

 彼女の手元がうっすら光る。

 春樹の傷が徐々にふさがっていくのが見え、何が起きているのか理解した。

 お姉ちゃんは春樹を治療している。

 そういえば彼女は、光属性適正だった。


「ピース・セル…レアリゼ…私は…私達は…。」


 春樹の傷は、やがて完治した。

 するとお姉ちゃんは立ち上がり、春樹の方を静かに見た。

 何をするのかと思えば、腰に差した剣を突然抜刀した。

 俺たちは目を見開き、お姉ちゃんの方を見る。

 その瞳は真剣そのもので、その迫力は竜並みだった。

 誰もがその気迫に飲まれ、声を挙げることすらできない。

 そんな中、春樹だけがゆっくりと立ち上がった。


「最後に一つだけ頼みがある。弟の命だけは…助けてくれ。」

「…。」

「…そうか。」


 春樹は大鎌を静かに手を取って、お姉ちゃんと向き合った。

 意外にもその瞳には迷いがあり、俺と戦っていた時とは少しだけ違う。


 二人の間に数瞬の間が空き、先にお姉ちゃんが踏み出した。

 その速度は俺の視力ではとても追えるものではなかった。

 唯一春樹と爽さんだけが、首を少しだけ動かした。


「"閃光瞬斬フラッシュ・ブレイド"」


 いつの間にかお姉ちゃんは春樹の後ろに立っており、春樹は少しだけ大鎌を持ち上げただけだった。

 かなりの力量差があることが、俺でも理解できた。

 ただ春樹の体には、目立った外傷がない。

 

 パキンッ!!!


 という音が鳴ったかと思うと、春樹の持っていた大鎌が折れた。

 それも、五等分に。

 ばらばらになったそれの中で、柄の一部だけが春樹の手の中に残った。


「どういう…ことだ?」

「今私が斬ったのは、あなたの罪なのです。それに…思い知ってもらいたくて。私はラペックス・セル・レアリゼよりも強いのです。彼以上の戦士がおらず、それが証明できないだけで。」

「ハハハ…笑わせてくれる…。仰ぎ見ることすら困難な、天頂か。」

「さて、これからあなたにはやって貰わなくてはいけないことがあるのです。」

「な、何をさせる気だ?」

「週休二日、土日祝日含む…でどうでしょう?」

「…は?」

「決まりですね。聖印の元に、あなたが我が聖王軍に努めることを定めます。奪った命よりも倍の命を救うことが、あなたがの罰なのです。」

「いや、ちょっと…待ってほしい…私は…。」

「チェストォォォォォォ!!!」


 お姉ちゃん春樹の背後に一瞬で回り、彼の後頭部をぶん殴った。

 一撃で春樹は気絶。

 あれだけ手こずった俺が馬鹿みたいだ。


「優良社員ゲット…。さて…"斎条 秋葉"。」

「…は、はい。」

「あなたはよく世界を見ることが罰です。エルフの里の現代的発展に、あなたが手を貸しているのは知っていました。あなたにはすでに善行の実績が、いくつもあります。今後をどうするべきかは、自分で決めなさい。」

「…ですがエルフの里から…パーストを奪いました。そんな僕が…許されるはずがありません。」

「…あなた達が思っている以上に、この世界は頑丈ですよ。世界樹はもうすぐ春を迎えます。そうすれば、新たな命が芽吹く。枝の一つくらい、また落ちるかもしれませんね。」

「…?」


 "その葉が落ちれば木となりて、雫が落ちれば恵みとなれど、枝が落ちれば人となる"…確かそんなことをお姉ちゃんは言っていた。

 …まさか!?

 エンシェント・エルフって…復活するのか…!?

 フェニックスかよ!?

 お姉ちゃんはそれだけ言い残すと、そのまま転移で消えた。

 なんて自由な人なんだ。

 その場に残された秋葉は、ボカンとしながらこちらを見ている。


「あぁ…まぁ良かったじゃないか。多分今回の事件…というか全てはグランディア預かりになるだろうから、聖王がOKなら本当に自由にしていいんじゃない?」


 グランディア領で起きた犯罪は、全てグランディア預かりになる。

 そこに地球の裁判制度は採用されない。

 彼らは確かに地球側に害を与えているが、捕まったのがグランディアであるため、恐らくはそうなるはずだ。

 テロ行為だから地球側もしばらく騒ぐかもしれないけど、そこらへんはシェルターが上手くやるだろう。


「そういえば僕は…侍女さんの眷属になったんじゃ?」


 秋葉はそういうと、柵魔さんの方を見た。

 彼女もまた、興味なさげに秋葉の方を見る。


「特に気にしなくていいですよ。眷属化した存在には隷属効果を与えることもできますが、私が何かしなければ特になにも起きませんから。」

「じゃぁ…僕は…本当に自由の身なのかい?」

「自由…なのかな?一応お姉ちゃんが言っていた、罰は受けるべきだと思うけどな。」

「…お姉ちゃん!?」

「いや、諸事情でそう呼んでるだけで、血のつながりはない。」

「ふ、不思議な関係だね。」


 俺が立ち上がろうとすると、足にかかった負担で再び吐血した。

 すぐに描絵手が俺に駆け寄り、体を支えてくれた。

 そして魔法で治療してくれた。

 そんなやり取りをよそに、夢豚さんが遠隔外装だというのに、額の汗を拭うような動作をした。


「ま、何はともあれ、無事に全てが終わりましたな。」

「…確かに、終わってみれば随分あっけなかったですね。」

「ゆ、夢豚さん。…良ければサインをもらえませんか?」

「む?もちろんいいですぞ。秋葉氏へ…でいいですかな?」

「あ、ありがとうございます!本当に嬉しいです!」

「気にしないで欲しいですぞ。」


 こうして無事に全てが終わり、また俺は入院することになった。

 内臓へのダメージはかなりのもので、仕方がないことだろう。

 というか入学して以来、入院してばっかりなんだが…。

 まぁいいか。

 ある意味入院している時が、一番心が休まるしな。



 ●



 この後、無事にエルフの国の戻った秋葉が、歴代最高のゲームメーカーと言われる"ワールドツリー・カンパニー"を立ち上げる。

 やがて大企業ワールドツリーは、従業員のほとんどが"エルフ"であることから、注目を集めることになる。

 そして発展途上国である国々にいくつもの学校、医療設備を立ち上げ、世界の技術水準を大きく上げる偉業を成し遂げた。

 さらにその数年後、世界から飢餓を無くしたとして、秋葉はノーベル平和賞を受賞することになる。

 春樹は聖王への軍事奉仕を続け、グランディアに訪れるいくつもの危険を未然に防ぐことに成功する。

 さらに数年後、ラペックスが倒したとされる邪竜が復活すると、その討伐という偉業を成し遂げた。

 影の協力者に、とある動画配信者がいたとかいないとか。

 やがて春樹は邪竜討伐の実績が世界から認められ、第12代勇者を襲名することになる。


 さらにこの後、兄弟が成し遂げたいくつもの偉業をまとめた著書:夢霧勇むむおが発売され、ベストセラーを記録する。

 名前の絶妙なダサさと、未来永劫名前が記録されるほどの偉業を成し遂げた、とある配信者と名前が似ていたことから、話題性もあった為だ。


 上記は本書を現代だとした時、さらに未来の話となる。

 つまり現代の契躱たちからすれば、これらは全てがまた別の話であることは、言うまでもないだろう。



 第二部:ゲーマーズ・ヲォー 完


次で最終回になります。

色々カットしたので、モヤッとした方も多いと思います。

でもまぁ、らしくていいかな、とも思いました。

デウス・エクス・マキナ=聖王を作っておいて良かったです。


多分最後は、もっとあっさり終わると思います。

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Twitterアカウント:@SKluMYkhIpMoZ2I◆Twitter始めたので、良ければフォローお願いします。といっても、今の所フォロワーZEROですけど。
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