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「2.5次元世界」にて、スキル「フレーム回避」を手に入れたゲーマー俺氏、無双開始秒読みな件について  作者: 木兎太郎
第二部 第四章 これで

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58話 暗闇の中で


 春樹の立ち回りにはほとんど隙が無い。

 近距離・遠距離共にうまくスキルでカバーされている。

 そんな中で、どちらが先に被弾するかの戦いになる。

 余談だが、俺のゲーム遍歴を簡単に述べると、アクションゲームがほとんどを占めるだろう。

 格闘ゲームやFPSといった対戦が本筋であるゲームより、一人でどれだけやり込むかが試されるような、そんなゲームをやり込んできた。

 俺がゲーマーになった頃にはすでに流行りが過ぎていたが、"東方project"もやり込んだ思い出がある。

 つまり何が言いたいかというと、俺は弾幕ゲームが好きだ。

 動画投稿について興味を示したのも、最初は饅頭からだった。

 東方キャラクターが可愛いイラストでしゃべるあの感じが、今でも好きだ。

 俺が使用している"おっとりボイス"は、人を選ぶらしい。

 でもそんなことは一切関係なくて、結局好きなんだ。

 今でも根強い人気があることこそ、俺以外にもそんな人たちがいる証拠だろう。

 重要なのは"誰かが"ではなく、"俺が"でありたい。

 彼女たちのキャラクター性が、今でも俺の人生観に影響していることは言うまでもない。

 まぁ何が言いたいかというと、長期戦は不利だがやるしかない。


 俺は春樹の元へと再度踏み出した。

 遠近両方から攻める。

 リモコンで木の葉を操り、周囲に漂わせておく。

 現状操れる合計枚数は、五枚ってところか。

 これ以上は脳みそと魔力が追い付かない。

 でもこれがある限り、春樹も多少は木の葉に警戒を裂くはず。

 手数を少しでも増やしてプレイヤーを被弾にいざなう。

 これが弾幕の王道だ。


 春樹はチラリと木の葉の方を見ながらも、接近してくる俺に対応する。

 間近まで迫る俺に対して、大鎌を回転させるように振るった。

 この攻撃の事前行動として行われる回転、これが案外厄介だ。

 攻撃の出所を隠している。

 大鎌特有の大きい動作による先読みのしやすさを上手くカバーしている。

 戦いにくそうなこの武器を、春樹がしっかりと使いこなしている証拠だ。

 回転から急に斬り上げへと転じた斬撃を、横に動いて躱した。

 すると今度は俺の頭上にゲートが開かれ、そこから大鎌の先端が落ちてくる。

 それ何とか横に回転しながら回避し、その回転の勢いを利用しながら回転斬りを放った。

 春樹は大鎌を体に近づけ、俺の攻撃を防いだ。

 先ほどよりも、確実に反応できている。

 春樹のこの戦術に慣れてきた証拠だ。

 "闇魂"で強い敵と、死にながらも連戦したのを思い出す。

 隙一つ見つけるのにも、結構苦労した。

 死にゲーなんて呼ばれるジャンルだから仕方ないけど、あの仕様が数多くのプレイヤーの心を折ってきたはずだ。

 俺はそんな仕様も、楽しめるタイプだったけど。

 春樹に次の選択肢を与える前に、俺はさらに木葉で追撃を放った。

 彼は大鎌ではなく、体を回転させながらそれを躱した。

 おそらく木の葉が小さすぎて、大鎌では防ぎ辛いのだろう。

 吸収もできず、木の葉と剣による連撃で隙も少ない。

 この状況を続ければ、いつか春樹に隙が出来るはずだ。

 

 春樹は回転しながら傷跡を宙に作るとその中へ消えていった。

 次に出てくるのはどこだ…?

 後ろか、前か…いや、上か?

 俺が見上げれば、丁度頭上に傷跡が開くところだった。

 勘でしかないが、当たったみたいだ。

 俺は木の葉を数枚宙に設置し、そこを飛びながら空中の傷跡に接近した。

 丁度春樹が傷跡から出てくる。

 接近してくる俺に対して、明らかに驚いていた。

 今更"リモコン"の応用編が、次々に想像できる。

 沙良校長が創意工夫の重要性を教えてくれたおかげだ。

 そんな接近してくる俺に対応しようと、春樹は再び大鎌を振るった。

 しかしそれは俺に対してではなく、宙に対してだった。

 そのまま傷跡から傷跡へ、彼は消えた。

 すると今度は下に傷跡が出来上がり、そこから出てくる。


「お前のスキルは地面とリンクしていたと思うが?」

「発想を変えた。もうどこにでも足場を作れる。」


 配置した木の葉の上に立ち、あえて春樹を見下ろした。

 二枚を上手く使えば、こんなこともできる。

 流石に人間一人を乗せ続けると、魔力消費が多いが。


 俺はすぐに回転しながら飛び降りた。

 地面へと降り立つ前に、木の葉を足場にして移動。

 春樹の元へと接近した。

 飛びながら戦おうとすると、流石に腹が痛い。

 …限界が近いのか、眩暈もある。

 でもまだ…やれるはずだ。

 春樹の元へと急接近し、彼の顎目がけて夢霧無を振るった。


「この期に及んでまだ峰打ちか…。舐められたものだな。」


 春樹はいとも簡単にその夢霧無を大鎌で受けた。

 するとすぐに向こうからこちらへと接近してきた。

 突然新しいパターンを増やして欲しくない。

 脳が爆発する。

 春樹が放ったのは蹴りだった。

 フレーム回避を発動しながら、よこに逸れつつ何とか躱した。

 春樹はそのまま蹴り足の勢いを利用して、大鎌を振るった。

 俺は大鎌を迎えに行くように動き、フレーム回避を発動した。

 春樹の大鎌が俺の体を通りすぎるのと同時に前進。

 俺が最も有利な位置関係を作った。

 大鎌の武器部分はあくまで鎌であり、柄には何の脅威もない。

 強いて言うのなら、不気味なだけだ。

 俺は大鎌の柄を強引に握りしめた。

 大鎌が振るわれるのを阻害すれば、傷跡が作れなくなる可能性もある。

 動きを封じるのに最も端的なのは、肉体行使だろう。

 春樹は一瞬だけ驚いた顔をするも、少しだけ口角を持ち上げた。


「なるほど、そう来たか。」

「…何がおかしい?」

「いや、ここまでの苦労が報われただけだ。」


 俺は春樹の大鎌を強く握りしめつつ、そのまま膝蹴りを放った。

 狙うは春樹の腹、多少は効くだろう。

 見事に膝蹴りが当たるも、彼の表情は全く変わらない。

 一応魔法で強化しているはずだが、それでも効いていない。

 どんな鍛え方したらこんなことになるんだよ。

 それでも大鎌を放さないようにしていると、春樹の方へと強引に引き寄せられていく感覚がある。

 魔法で強化してなお、若干力負けしているみたいだ。

 先ほどまでの攻撃に対して、全て回避を選択したのは正しかったらしい。

 これ以上踏ん張るのは、腹的にもキツイ。

 大鎌から手を放した瞬間、その瞬間が重要だ。

 完全に全てのタイミングを合わせてみせる。


 俺は大鎌から手を放し、即座に夢霧無を振るった。

 春樹は大鎌を器用に動かして、その一撃を受けようとした。

 フレーム回避を発動して、大鎌を夢霧無が通過する。

 春樹はその瞬間上半身をのけぞるようにして、その一撃を避けた。

 状態を逸らした彼に対して、空から二枚の木の葉が追尾する。

 先ほど宙に俺が立つのに使った木の葉を、あえて残しておいた。

 身をよじってその木の葉を躱そうとするも、腹部の側面を二か所、木の葉が切り裂いた。

 春樹の表情が一瞬だけ歪む。

 俺は夢霧無の峰で、のけぞる春樹の足を払った。

 彼の姿勢が更に崩れていく。

 今度は"リモコン"を落ちている小石にかけ、一気に上昇させた。

 春樹の背中に、3個の小石が直撃した。


「ガハッ!!!???」


 計画通り、"リモコン・バックスタブ"を直撃させた。

 だがここで油断すれば、ここまでの苦労が無駄になる。

 直撃した小石の威力で、春樹の上体が再び起きた。

 この隙を逃さず、丁寧に顎を狙って夢霧無を薙いだ。

 結果、春樹の顎が軽く回転し、ようやく彼の膝が揺れた。

 さらに俺はフレーム回避で彼の背後へと回り、後頭部へと夢霧無を薙いだ。

 バックスタブに次ぐバックスタブ、流石に耐えられないだろう。


 そしてこの追撃で、俺は油断してしまった。

 春樹は正面へとのけぞりながら、俺の足を掴んだ。

 流石にあの連撃に耐えることはできないと思ってしまった、俺が愚かだった。

 そのまま足を強引に引っ張られ、地面へと投げ飛ばされた。

 捕まれた場所こそ違えど、それはまるで柔道の背負い投げだった。

 地面へと背中から叩きつけられ、衝撃で肺からすべての空気が抜けた。

 腹部の傷にもそれは響き、尋常ではない痛みが走る。

 そこから春樹は大鎌を振るい、なぜか俺の真横に傷跡を作った。

 そして俺は、その傷跡へ吸い込まれてしまった。

 先ほどまでは俺を吸収することはできなかったはず。

 …そうか、大鎌への接触。

 それが人間を傷跡内に通すための条件だったのか。

 

 傷跡内は、闇に包まれていた。

 あたりの景色を見通すことは、一切できない。

 唯一幸なのが、この空間に床があることだ。

 地面すらなかったら、流石に俺は死んでいただろう。


「この空間では、俺だけが全てを見通せる。この空間に入った時点で、お前の負けだ。」

「…確かに不利だけど、流石にさっきのはあんたにも効いただろ?そこまで余裕はないはずだぞ?」

「ふん…小賢しい。本当にお前は、あの男に似ている。常に全てを見通しているかのような…あのラペックスに。」

「ラペックス?確か歴代最高の聖王だったな。そして…あんたを倒した男だ。」

「遺憾だが、その通りだ。あの男を倒せていれば…おそらく俺の大鎌は今頃、勇者の血を吸っていただろう。」

「だがあんたは負けた。…なぜ聖王に負けてなお、復讐を続けるんだ?」

「憎しみが消えないからだ…それ以外に理由が必要か?」

「やり直せたはずだ、全てを。あんたほどの実力があれば、勇者の座に返り咲くことすら不可能じゃなかった。」

「お前は全てを失ったことがないから、そんなことを言えるのだ。ただその感情を理解する機会すら、お前にはもうない。ここで私が、お前を殺す。」

「いや、ここで俺があんたを倒して、全部救うさ。それが…夢霧無だ。」

「夢霧無…か。秋葉が…よくお前の動画を見ていた。お前と同じように、秋葉もゲームが好きで……いや、これ以上は語るまい。」


 春樹の声が聞こえなくなった。

 小さな呼気すら、この空間では聞こえない。

 もはや目を開けていても意味をなさないので、俺は目をそっと閉じた。

 気配を感じて戦うだなんて、そんな恰好付けたことも俺にはできない。

 爽さんや織田さんなら、この状況もなんとかするんだろうな。

 どちらにせよ、次の一手で決める。

 俺ももう…動けそうもない。 


 イメージするんだ。

 この瞼の内側に広がる闇に、架空の春樹を描け。

 さっきまで戦っていた…春樹ならどうするか。

 もう何手もあいつの行動パターンを見てきた。

 想像を推測へ、推測を現実にする。

 それが俺の、唯一の勝ち筋だ。

 

 俺の中の春樹が、暗闇から俺へと大鎌を振るった。

 俺が静かにその場でか屈むと、頭上で


 ブンッ!!!


 という音が鳴った。

 わかる…完全に俺の想像と現実が…重なり合っている。

 こういうのは前にもあった…ゲームをしている時に…何度か。

 俺が思ったタイミングで、思った通りの攻撃を敵がしてくる。

 集中力がまるでアイスピックの先端のように尖り、一切の歪みもなく真っ直ぐに伸びていく感じだ。


 …ここだ。


 俺は振り返りながら、静かに夢霧無を振るった。

 たった一筋、見えない闇に向かって。

 瞼の内側に移る、想像へ。


この小説が終わるまで、後ほんの少しです。

この戦闘長引いて、本当に申し訳ないです。

本当はやりたかったことがありましたが、これが最終章なのでシナリオを少し変えました。

一応本来の流れを説明すると、柵魔さんのランチパックに入った"剣"が契躱のものになるはずでした。

でもそうなると、話が長くなってしまいますので大幅カットしました。


それと東方のみ実名なのは、なんとなくです。

でもそういうフィーリングって、重要ですよね。

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