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「2.5次元世界」にて、スキル「フレーム回避」を手に入れたゲーマー俺氏、無双開始秒読みな件について  作者: 木兎太郎
第二部 第四章 これで

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57話 斎条春樹


 柵魔さんはまだ完全に救えた訳じゃない。

 ただあの謎の紋章から遠ざけただけだ。

 柵魔さんと俺たちの間には、まだ春樹がいる。

 確かに焦る必要は無くなったが、慎重にならざるおえない状況だ。

 おそらく柵魔さんをあれ以上強引に動かせば、春樹もそれに対応するはず。

 今の位置関係がベストだ。

 それに…俺は春樹と会話をしてみたかった。

 この兄弟に対する疑念を、明らかにするために。


「対話をしないか?お前達兄妹には、明らかに心がある。快楽的にこんなことをしている訳ではないのは明らかだ。俺たちは…分かり合えないのか?」

「…他人の業をいくら背負おうとも、最後は裏切られるだけだぞ。事実、私達はそうだった。私達の全ては…もう失われているのだ。愛する人も、帰るべき家も、捧げるべき忠義も、何もかも…私たちは失った。今更逃げおおせて、明日を造る意味もない。お前と今更対話をしても、もう何も変わらないのもわかっているのだ。」

「変わるさ…今その第一歩を、歩めばいい。」


 俺がそういうと、少しだけ春樹の表情が動いた。

 少しだけ眩しそうに、彼は俺の方を見ていた。

 しかしその表情は、直ぐに元に戻った。

 俺の言葉は、彼の奥深くまでは届いていない。

 表面をいくら撫でても、なんの意味もない…か。

 だとすれば、まずは彼に認めてもらう必要がある。

 そうすれば…この不毛な戦いも終わるはずだ。


「爽さん、俺に時間を。俺が、春樹と戦う。」

「契躱、その体じゃ…本当に死ぬぞ?」

「…このまま何もかもうやむやにして、この機会をやり過ごしたくない。あいつらに…悲しみを背負わせたままじゃ嫌なんだ。」

「…わかった。でも春樹は本当に強い。…気を付けて。」


 爽さんはそういうと、紫雲木を腰にしまった。

 そして数歩下がると、腕を組んで見の姿勢を取った。

 描絵手も、夢豚さんもこちらを不安そうに見ている。

 それでも俺は…貫きたかった。

 自分の意思を。


「お前を見ていると…あの男の顔がちらつく。お前という幻影を斬り、私は世界を滅ぼす。」

「それは意地でも止めるさ。他でもない、お前たちの為に。」


 春樹は大鎌を構えた。

 真っ黒なオーラが、妖艶に大鎌の周りを漂っている。

 黒いオーラが、一瞬だけ蠢いた。

 それは春樹が、大鎌を振るった証拠だった。

 俺の目前に、また黒い傷跡が現れた。

 そしてそこから、大鎌が振り下ろされる。

 フレーム回避を発動し、それをやり過ごそうとする。

 大鎌は俺に当たる寸前で、急停止した。

 フレーム回避発動は俺の足踏み、その瞬間を正確に見切られている。

 タイミングを少しずらして、大鎌が振り下ろされた。

 この攻撃のいやらしさ、織田さんを思い出す。

 戦いに勝利するための、最短ルートを通る剣。

 俺は体を回転させながら、横に移動し、何とかその斬撃を躱した。

 このやり取りだけで、いかに春樹の力量が高いか理解できた。

 勇者っていうのは、皆こんなにも凄い奴らなのか。

 でもだからこそ、残念でならない。

 きっと春樹が彼の正義を失わなければ、今でも数多くの人々を救っていただろう。

 それこそ俺には想像できないくらいの人々を。


「余計な考えは、死を招くぞ?」


 俺が少しだけ余計なことを考えていたのを、春樹に見切られた。

 大鎌はすぐに俺を、まるで蛇のように追い回す。

 俺がフレーム回避で躱そうとすれば、そのタイミングをずらし、俺が反撃すれば、その全てを防いでくる。

 このまま受けの戦いを続ければ、程なく俺は敗北するだろう。

 フレーム回避を、攻めに転じる。

 俺はフレーム回避を発動しながら、春樹を通過した。

 背後を取ろうとするも、春樹は正確にそれを目で追っている。


「なるほど…面白いスキルだ。だがこの戦いの間に、見せすぎたな。」


 春樹は単純に前方に数歩出るだけで、俺の間合いから出た。

 背後に向かう俺と、前方に出る春樹。

 間違いなくこの戦法に対する、最も端的な対処法だろう。

 そのままお互いに振り返りながら、次の一手に出る。

 春樹と俺の大鎌には、大きなリーチ差がある。

 向こうの攻撃は届くが、こちらの攻撃が丁度届かない距離。

 それを上手く作られてしまっていた。

 春樹が即座に大鎌を、右から薙いできた。

 フレーム回避で躱そうとすれば、再びあの大鎌は止まるだろう。

 俺は屈みながらその斬撃を躱した。

 頭上からまるで、丸太が通り過ぎたかのような音が聞こえる。

 あれが直撃すればおそらく即死だ。

 夢霧無で受けるのも、悪手でしかない。

 力でも確実に負けているし、腹部の傷に害を与えるだけだ。

 でも大丈夫なはず、ステータス的に負けていることなんて、ゲームではよくある話だ。

 プレイヤーはその不利を、常に頭脳で凌駕してきた。

 考えろ…勝利までの道筋を。


「幼稚な剣技だ。少なくとも、今のお前のままでは俺には勝てない。」

「そういうことは、一度でも俺に勝ってから言ってどうぞ。」


 俺は春樹の方へと、また踏み出した。

 このままでは俺の間合いの外から攻撃され続けるだけだからだ。

 敵の崩し方は、ゲームと変わらない。

 俺の有利である点を、ひたすら敵にぶつけ続けるだけだ。

 春樹の大鎌はリーチが長い分、小回りが利かないはず。

 常に近距離で戦い、隙が出来るのを待つ。

 俺が最接近すると、春樹はまた大鎌を振るった。

 また屈んでそれを避けた。

 しかし、今度は春樹の動きが先ほどとは違った。

 振り切った後、自身の右側に大鎌で黒い傷跡を付ける。

 そしてそこに鎌の先端を突っ込んだのだ。

 その瞬間、屈んでいた俺の真横に黒い傷が現れ、そこから大鎌の先端のみが出てきた。

 さらに前進し、フレーム回避を発動しながらなんとかそれを避けた。

 こめかみを貫通されていてもおかしくはなかった。

 そんな攻撃パターンがあるのか?


「お前のやろうとしていることはある程度分かる。一瞬も、読み間違えるなよ?」


 春樹はそういうと、静かに笑った。

 爽さんと同じく、戦いを楽しんでいる。

 春樹はそういうと、大鎌を自分の方へと引いた。

 するとその動きに対応しながら宙の傷跡が広がり、今は俺の真後ろにある大鎌の先端が、俺の後頭部へと迫ってきた。

 即座にバックステップを踏みながら、フレーム回避を発動。

 その一撃もギリギリで避けた。

 そして俺は、そのまま春樹から距離を取った。

 ただ…想定外だ。

 近距離は俺が有利だと思ったのに、あんなことができるのか。

 だとすればそもそも…距離の概念が…ないッ!?


 ブンッ!!!


 俺がそう考えるのと同時に、俺の目前にまた傷が出来た。

 そこから大鎌が振り切られる。

 何とか後方にのけぞりながらそれを避けるも、想定外であることは確かだ。

 春樹は自分の弱点であるはずの近距離戦闘の対策が出来ている。

 ある意味当然といえば当然だが、付け入る隙がない。

 どうすれば…?


 いや…手段はあるはずだ。

 俺のリーチを長くできれば…そうだ。

 こんなのはどうだ?


「"遠隔操作リモコン"・"防御強化プロテクト"」


 俺は近くの落ち葉にリモコンをかけ、それに防御強化を付与した。

 数枚の木の葉が、同時に宙に浮く。

 春樹はその様子を、興味深そうに見ている。

 すぐに右手を前に出し、浮かせた木葉に前進の指示を出す。


「…!?」


 春樹は驚きながらも、その攻撃を横っ飛びに躱した。

 だが残念、通常の魔法とは違うんだなそれは。

 仮に躱されても、俺が追尾するように操作してやればいい。


 木の葉はそのまま直角に曲がり、春樹の方へと迫る。

 彼はすぐに自身の正面に傷を作り、その中へと消えた。

 そして春樹は俺の真正面に出てきた。


 上から振り下ろされる大鎌を、俺は真正面に突進しながら躱した。

 フレーム回避を発動しながら、春樹を通り過ぎる。

 するとすぐに彼は先ほどのように前進し、俺の間合いから脱出。

 俺も春樹の方へと振り返り、彼の方を見る。

 そしてさらに前進し、春樹との距離を詰める。

 俺は途中で、急ブレーキをかけて立ち止まった。

 春樹は怪訝な顔でこちらを見ている。

 俺はフレーム回避を発動し、自分の背後に迫る木の葉を通過させた。

 春樹の方へと前進したのは、位置交換するためだ。

 さきほどの経験で、春樹の前進という選択は明らかだった。

 同様の動きをブラフに、春樹に本命を届かせる。 

 それが俺の狙いだった。

 それに、ある推測も立てている。

 おそらく確実に、この推測は当たる。

 春樹は俺の予想通り、突如迫る木の葉を屈みながら避けた。

 よほどギリギリだったのか、春樹の髪の毛を俺の木の葉が数本切り落とした。

 これはある種、確認作業でもある。

 あの春樹が作る傷跡、あれにはちょっとした制限があるはずだ。

 おそらく春樹があの傷跡で、俺や俺の攻撃を吸収しないのには理由がある。

 確か水無瀬さんの話では、吸収した魔法を外部に放出していたはず。

 ただそれは、おそらく"魔法限定"の話だ。

 春樹以外かつ魔法以外の物質が、あの中に入るのには何らかの条件がある。

 そしてその条件を満たしているのが、"秋葉"だ。

 条件そのものは不明だが、おそらく物理攻撃は無力化されない。

 吸収される恐れもあったが、遠距離物理攻撃は春樹に通じるはずだ。

 例えば銃とか弓矢に、案外春樹は弱いんじゃないのか?

 "リモコン"がある限り、俺は遠距離物理攻撃手段を常に補充できる。

 あとは春樹の隙を見つけられれば、勝てる。 


 狙うは、"リモコン・バックスタブ"だ。


戦闘シーンが長いです。

申し訳ないです。

一話当たりが少しだけ短くて、こんな長引くはずじゃなかったんです。

間延びした…。

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Twitterアカウント:@SKluMYkhIpMoZ2I◆Twitter始めたので、良ければフォローお願いします。といっても、今の所フォロワーZEROですけど。
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