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「2.5次元世界」にて、スキル「フレーム回避」を手に入れたゲーマー俺氏、無双開始秒読みな件について  作者: 木兎太郎
第二部 第三章 真実の最寄

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47話 友情だとか、愛情だとか


 俺とミルさんは、"姫宮 澪"が住むマンションに来た。

 いわゆるタワマンとか呼ばれる超高級な建物だと、一目でわかる。

 自己主張が強いデザイン、という訳ではない。

 ただここまでの高さがあると、シンプルなデザインでも目立つ。

 この建物に住む人物が一財を築いていることを想像するのは、何も難しいことじゃない。

 彼女はこのマンションの最上階に住んでいるらしい。

 こういう比較をするのは余り良くないかもしれないが、会社を追い出されて地下にラボを構えたミルさんと、随分対照的だ。

 ミルさんが友人と呼ぶ彼女に悪口は言いたくないが、第一印象は最悪だ。

 もちろん姫宮さんがミルさんにしたことを含めて判断している。

 俺たちは早速エントランスに入った。

 ミルさんは手慣れた手つきで番号を押した。

 マンションによくある、"オートロック"だ。

 自宅の扉以外にも、こうしてエントランスに扉を設けている。

 二重ロックできるので、大体のマンションがこれを採用している。


 ピーン、ポーン。


『どちら様ですか?』

「ミル、エスタークです。」

『…‥‥‥‥どうぞ。』


 意外にも、エントランスの扉が素直に開いた。

 俺の"フレーム回避"で強引に進入することも可能だったが、どうもそれをお披露目する必要はなさそうだ。

 もしかすると姫宮さんは、ミルさんが訪ねてきた要件を察しているのかもしれない。

 エレベーターに乗って、最上階まで行く。

 人の住む建物でこんな高さがあるのは驚きだ。

 大げさな言い方をすれば、1階と最上階で、酸素濃度が変わりそうだ。

 エレベーターを出て少し進むと、ミルさんが足を止めた。


「ここが彼女の部屋です。」

「な、なるほど。」


 ピーン、ポーン。


 今回は返事がない。

 ミルさんは容赦なくドアノブをひねった。

 どうも鍵が開いているようだ。

 なんとなく不気味な違和感がした。

 俺とミルさんは無断で侵入し、廊下を進んだ。

 真っ直ぐに進むと、そこにはリビングダイニングがあった。

 部屋には大きな窓があり、その奥がベランダになっている。

 そしてそこに、"姫宮 澪"が立っていた。

 彼女の容姿を簡潔に説明すれば、藍色の髪をした、背の高い女性だった。

 美しい容姿をしていて、どこか大人びた雰囲気がある。

 今もベランダでなびく髪が、彼女の美しさを引き立てていた。

 雰囲気はどことなくミルさんに似ているが、容姿は真逆だった。

 俺が余計なことを考えていると、ベランダに立つ彼女に、先にミルさんが話しかけた。


「そこで何をしているんですか?」

「死のうと思って。」


 姫宮さんは端的に結論から言った。

 ミルさんは特に驚いた様子がない。

 俺としては心臓が口から飛び出そうだった。

 というか不味くないか…彼女に死なれれば手掛かりが…。

 いや、手掛かりうんぬんよりも人の命だ。

 助ける手段は…くそ、どうすれば。


「死ぬ前に、いくつか答え合わせをしませんか?澪。」

「才能のあるあなたには、一生理解できないような理由ね。ミル。」


 二人は無言で見つめ合っている。

 お互いに表情に一切感情を出さない。

 大人の会話って感じがする。


「どうして、シェリーを勝手に?」

「…交換条件だったのよ。」

「交換条件?」

「そう、あのシェリーの起動画面が、どんな効果を持つか私は事前に聞かされていたの。その技術が、私は欲しかった。」

「なるほど、確かにあの技術は私にも魅力的に映りました。でもきっと、本質はそんなことじゃないはずです。それは今回の一件の、上澄みでしかないように、私には思えます。」

「…その通りね。私が今回の一件に踏み切ったのは、あのライブ配信よ。」

「…夢霧無のライブ配信…ですか?」

「そう、その通り。」


 え!?…マジでか!?

 あのライブ配信が…今回の原因?

 描絵手とシェルター以外に、そこまで大きな影響は…。

 そうか、ミルさんの前職なら、シェルターと密接な関係が…。

 ワンダーウェポンは、シェルターに武器提供していたはずだ。

 つまりあのライブの影響で、"ワンダーウェポン"が業績不振に!?

 いや、でもそんなことはありえないはず。

 だってシェルターはあれ以来も普通に活動している。

 武器の需要がなくなるわけない…ならなぜだ?

 俺は何をやらかしたんだ?


「一目でわかったわ。あの時、夢霧無とかいうイカレ野郎が使っていた武器が、ミルの作った武器だとね。」


 なんか俺のチャンネル、ある一定層にはめちゃくちゃ嫌われているな。

 イカレ野郎っておい、めちゃくちゃアンチだ。

 描絵手を助けようとしてシェルターに立ち向かっただけなのに…。

 でもまぁ、シェルターの組織規模を考えれば…イカレているのかもな。


「確かに、夢霧無には私が武器提供しています。」

「私があなたを会社から追い出してから、そこまで時間は経っていないはず。でもあなたの武器技術は、"ワンダーウェポン"にいた時とは比較にならないほどに発展していた。」

「時間があれば、技術は発展していくものです。あなたが私を会社から追い出してくれたおかげで、増えた時間もありますから。」

「あなたのそういうところが、昔から嫌いだった。自身の才能を傍若無人に振り回して、周囲が傷ついていくことにも気づかない。あなたの生み出す全てのものが凡人の想像の上で、私たちは疲れていたのよ。」

「…だから役員会でも、あんなに簡単に私は追い出されてしまったのですね。」

「あなたの新しい武器を見た時、私は嫉妬したの。あなたを追い出して以来、忘れていた感情が、また蘇った。」

「嫉妬…ですか。」

「あなたには分からないでしょうね…そんな感情が。」


 姫宮さんはそう断言すると、振り返った。

 ベランダの外へと。

 彼女の体が、徐々にベランダの仕切りから外へと傾いていく。

 まずいまずいまずい。

 でももう、行くしかない。


「"筋力強化ハイパワー"」


 俺は駆けだした、外へと飛び出していく姫宮さんの元へと。

 もちろん間に合うわけがない。

 俺がベランダにたどり着いた瞬間には、彼女は落下を開始している。

 だから俺も、跳んだ。

 後先考えていたわけじゃない。

 もうこの瞬間には、姫宮さんをどう助けるかしか頭になかった。

 落ちていく自分の体を加速させようとしたのは、人生で初めてだった。

 体をなるべく真下に真っ直ぐにして、全力で加速した。

 落下していく姫宮さんに、直ぐに追いついた。

 そして彼女を強引に抱きしめる。

 目を見開く彼女と、空中で視線が合った。

 こんな場面じゃなきゃ、恋に落ちていたかもしれない。

 なんてことを考えている場合じゃない。

 俺は万が一を考えて持って来ていた夢霧無を右手で抜刀した。

 なりふり構っている場合ではないので、マンションの壁面にそれを全力で突きさした。

 腕に尋常ではない負荷がかかる。

 肩の筋がブチブチと伸びていく感じがする。

 それでも勢いは止まらない。

 全く、ミルさんの刀は切れ味が良すぎる。

 

「止まれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」


 祈るように叫んだ。

 何階分そのまま落下したんだろうか。

 腕が引きちぎれそうだ。


「くそ…腕が痛い。…でも、止まったぞ。」

「その刀…そう、あなたが…。」

 

 姫宮さんが、刀の方の夢霧無を見てそんな感想を吐露した。

 でも今は彼女に構っている場合ではない。

 俺は下までの距離を確認した。

 相当ギリギリだったみたいだ。


「"防御強化プロテクト"」


 俺は二階分の距離から姫宮さんを抱えながら飛び降りた。

 もっと早く腕を頑強にしていれば、無傷で助かったかもな。

 地面までたどり着くと、もはや腕が上がらなかった。

 結構重症な気がする。

 彼女を降ろし、俺は夢霧無をしまおうとした。


「待って、その刀…見して。」

「…どうぞ。」


 助けたお礼など当然なく、彼女はミルさんの作った刀に興味を示した。

 正直思うところもあったが、俺はとりあえず夢霧無を見せた。

 彼女にも何か、思うところがあるんだろう。

 彼女がしばらく刀を見つめていると、ミルさんがマンションから出てきた。

 すると真っ直ぐに姫宮さんの元まで歩いてきた。

 そして


 バチンッ!!!


 大きな音が鳴った。

 姫宮さんは刀を手に持ったまま、頬を赤く染めた。

 といっても、真っ赤な手形が付いただけだが。

 あれは痛い。

 俺も最近、似たようなビンタを二回ももらう機会があった。


「最初に一つだけ断言しておきます。もう一度私から、私の大切なものを奪えば、私は迷いなくあなたを殺します。仮にあなたが死んでいても、あなたを一生呪うでしょう。」

「…そう、あなたにとって彼は…。」

「それと、これは友人として。簡単に死なないでください。私にだって嫉妬の感情はあります。今だって、まさに嫉妬している所ですから。命を懸けて助けてもらえる弱いあなたに。」


 ミルさんはチラリと俺の方を見た。

 そこに込められた感情はわからない。


「友達…?」

「少なくとも私は、あなたのことをそう思っていました。」

「……ごめん…なさい。私…取り返しのつかないことを…。」


 姫宮さんの表情に、今日初めて後悔が見えた。

 彼女はそのまま涙を流すと、膝から崩れ落ちてしまった。


「人は誰だって間違えます。それこそ、私だって…。…あなたの気持ちに気付くことが出来なくて、ごめんなさい。澪が生きていてくれて…本当によかった。」


 ミルさんはそういうと、姫宮さんを力強く抱きしめた。

 しばらく姫宮さんは、ミルさんを抱きしめて泣きじゃくった。

 大人の女性が大泣きするところを始めて見た。

 でもそこに醜さはなくて、ただ単に美しかった。

 それはきっと抱き合う姿に、友情とか、愛情とか、いろんなものが込められていることを、俺も感じることができたからだろう。

 例えば病院の窓から見える、一枚の枯れ葉のように。


 それからしばらくして、姫宮さんは泣き止んだ。

 そしてミルさんは俺に、病院に行くことを勧めた。

 ただ時間に余裕があるわけではない。

 俺たちは病院に行く前に、姫宮さんの部屋へと戻った。

 俺にはまだやるべきことがある。


「姫宮さん、あなたに"お願い"をした人たちとは、どうやって連絡を取っていたんですか?」

「…メールで。私の個人アカウントに、突然メールが来たの。」

「ありがとうございます。ミルさん、メールから敵を辿れますか?」

「可能です。」


 ミルさんはそういうと、すぐに姫宮さんの自宅パソコンの前に座った。

 姫宮さんに特に何か聞くわけでもなく、パソコンを操作し始めた。

 しばらくタイピングの音が鳴り続けた。

 やがて、ミルさんはこちらを向いた。


「…代理アカウントという訳では無さそうです。よっぽど油断していたようですね。ネカフェじゃないみたいなので、おそらく特定できます。」

「ということはもしかして。」

 

 敵の心臓部にたどり着いたみたいだ。

 流石ミルさん。

 俺も一緒に見ようとして、パソコンへと近付いた。

 これで柵魔さんを助けることができるはずだ。


「ハッキング成功です。後は…これを開けば…ッ!?」


 あぁそうか…完全に油断していた。

 敵はあえて形跡を残したんだ。

 俺たちに地雷原を歩かせるために。


 ワンクリックマジック。


 確かにそれがあるなら、俺たちの記憶を消した方が速い。


この二日間は普段から比べると、ブックマーク結構伸びたと思います。

それも読んでくださる皆さまのおかげです。

大変励みになっております。

今後とも、是非よろしくお願いいたします。

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Twitterアカウント:@SKluMYkhIpMoZ2I◆Twitter始めたので、良ければフォローお願いします。といっても、今の所フォロワーZEROですけど。
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