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「2.5次元世界」にて、スキル「フレーム回避」を手に入れたゲーマー俺氏、無双開始秒読みな件について  作者: 木兎太郎
第二部 第三章 真実の最寄

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42話 記憶改竄について


 …待てよ、決意したのは良いが、俺はどうして無事なんだ。

 そもそも俺は最後、確かに呪われたはずだ。

 無事デュラハンを討伐できたとは思うが…。

 事情を知っていそうなのは…この中だと私夢叶…か。


「私夢叶さん、そういえばどうして俺は無事なんですかね?」

「あぁ…それは私の姉が助けたからです。」

「姉…というとピースさんが…。」


 俺はチラリとピースさんの様子を伺った。

 さっきまであんなに怒っていたのに、今は女神像のように朗らかだ。

 嵐の後は快晴になりやすいが、まさしくあれに近い。

 逆に不安をあおられるが、そこは俺の自業自得だ。


「ピースさん、ありがとうございました。解呪してくれたんですよね?」

「はい、確かに私が解呪したのです。デュラハンの呪いは強力ですから、私が後一時間助けるのが遅れていれば、あなたは死んでいました。」

「い、命の恩人です。」

「先ほどまでは助けたことを後悔しそうでしたが、今は満足しています。御礼は大丈夫ですから、今後の態度で示すのです。」

「分かりました。なら見ていてください。もう迷いませんから。」

「さっきまでとは大違いですね。もうそこまでの大口をたたきますか。」

「一度進む方向が決まれば、後は進むだけです。たまに迷いますが、描絵手やピースさんみたいな優しい人がいるから、こうして俺は戻ってこれます。」

「…み、見る目のある若者なのです。」


 ピースさんは満足そうに"鼻スコ(鼻の下を人差し指でこする行為)"している。

 女性が鼻スコするところは見たことがないが、本当によくわからない人だ。

 清廉潔白な女性的魅力の中に、少年のような無垢さと熱を含んでいる。

 どこまでも複雑なジグゾーパズルみたいだ。

 最初はバラバラなパーツにしか見えないけど、完成系はかくも美しい。

 俺は今のところ、彼女にそんな印象を持っていた。

 そんなことを考えつつも、俺は不意に疑問に思えたことを口に出していた。


「それにしても解呪って初めて経験しました。やはり難しいんですか?」


 俺がそんな質問をすると、周囲の呆れた視線がこちらに向けられた。

 何かまずいことを言ったのか?

 本当に純粋な疑問を口に出しただけなんだけど。


「そういえばまだ夢霧無氏には、ピース氏の正体を伝えてはいませんでしたな。」

「正体?私夢叶さんのお姉さん以外に肩書があるんですか?」

「彼女は…聖王ですぞ。」

「聖…王?まさかそれって…なんかこう、凄そうですね。」


 聖王ってなんだっけか。

 授業で習ったような気もするけど、あんま覚えてないな。


「聖王とは、地球側でいう大統領みたいなものですぞ。それも大統領とは違い、グランディア全ての決定権を持っている唯一無二の人ですぞ。」

「あ…思い出しました。すみません。でもなんでそんな人がこんなところに?」

「…分りませんぞ。」

「妹が心配だったのです。」

「姉は…重度のシスコンなんです。」


 私夢叶の疲労感たっぷりな表情を見て、それが事実なんだと悟った。

 そもそも妹を追ってここまでくる時点で、その気配はあった。

 ただ大統領の親族なら、十分世界規模の重要人物だとも思う。

 心配するのも少しは理解できる。

 どちらにせよ、本人が警護に来るべきではないと思うけど。

 俺が考え事をしていると、夢豚さんが説明を続行してくれた。


「この世界に"呪術Ⅴ"の呪いを解呪できる人は三人だけですぞ。」

「状況証拠と推測で一人は想像できます。目の前のピースさんと…。」

「そもそも夢霧無氏、聖王様…と呼ぶべきですぞ。」

「いいえ、ここには聖王としては来ていないのです。姉として来ているので、ピースさん、ピースでもご自由に呼んでください。」

「流石に呼び捨ては…このままピースさんと呼ばせてください。」


 俺がそういうと、ピースさんはこちらを見た。

 そして頬をほんのり赤く染めながら、別の名称を提案をした。


「それか…お姉ちゃん、と呼んでもいいのです。私、弟はいませんので。」

「…は?」


 俺は思わず一文字で返してしまったが、周囲が睨みつけるように俺を見た。

 確かに大統領クラスの人間に"は?"はいくらなんでもまずい。

 だが周囲の威圧感に押され、俺は思わず口にしてしまった。


「お姉…ちゃん?」

「す、素晴らしいのです。聖王として、それ以外の呼称を禁じます。」

「わ、分かりました。」


 きょ、今日は聖王じゃないんじゃ?

 なんて疑問は、周囲の圧で封殺された。

 だ、ダメだ、打開する手段が見つからない。

 でもまぁ俺には実害なさそうだから、このままでもいいだろう。

 それはさておき、問題は柵魔さんだ。

 現状何も手掛かりがない…どうすればいいんだ。

 もしも撮影の時に襲ってきた暗殺者と同業者なら…。

 いや、そもそもあの時の暗殺者を持ち帰ったのは柵魔さんだ。

 ならこれはもう手掛かりにならない。

 …なんでもいい、どんな些細なことでも知るべきだな。 


「描絵手、どんな些細なことでもいい。敵は何か言ってなかったか?それか不自然な行動でもいいんだ。」

「不自然な…行動?…そういえば私、転移する瞬間まで鎌男を見ていたんだけど、彼は別に私を追う様子がなかったような。」

「…転移するまでの間…、そういえば描絵手は水無瀬さんに押し倒されていたんだよな?」

「うん…その通りだけど。」

「なるほど。…敵は瞬きの間にある程度の距離を移動できるほどの速力を持っていたはずなのに、どうして描絵手に追撃しなかったんだ。」

「確かに…おかしいよね。」

「…最後の瞬間、つまり描絵手が転移する寸前、敵はどこを見ていたんだ?」

「そういえば、ずっと文歌を見てた。私じゃなく、文歌を。」

「もしかして狙いは…描絵手じゃなかったのか?」

「わからない…でも。」

「あぁ、だとすれば今でも文歌さんが生きている可能性は高い。」

「そうだよね。でも探す方法が…ないよ。」


 描絵手は一瞬希望に満ちた表情を見せるも、またシュンとしてしまった。

 柵魔さんが生きているのなら、なおさらまだ何か出来るはずだ。

 必ず彼女を助けるぞ。

 …そういえば根本的なことを忘れていたな。

 まずは元々ある手元の情報から整理しておこう。

 何か柵魔さんを攫った奴らの手掛かりが分かるかも。

 もしも柵魔さん狙いで連れていかれたのなら、まだ時間はあるはず。

 落ち着いて、一つ一つ積み重ねていくぞ。

 もうミスはしない。


「夢豚さん、そういえば描絵手の例の件について、まだ聞いてませんでした。柵魔さんを助ける手掛かりになるかもしれません。直ぐに教えてください。」

「わ、分かりましたぞ。それではみんな、地下に来てほしいですぞ。」


 例の件、というのは描絵手に関する記憶改竄のことだ。

 俺たちは夢豚さんの誘導に従い、全員地下へと降りた。

 夢豚さんは、記憶改竄について説明しようとしたあの時の状況を再現した。

 つまりまたパソコンを操作して、天井からモニターを降ろして、なぜかそこにシェリーの起動画面を表示させた。


「今回描絵手氏についての記憶改竄で使われたのは、いわゆる"ステガノグラフィー"…ですぞ。」

「えっと…すみません、よくわかりません。」

「どこかのAIみたいな口調ですな。なら簡単に説明しますぞ。ステガノグラフィーとは、データ隠匿技術の一つで、あるデータを他のデータの中に隠すこと…ですぞ。」

「なるほど、…よくわかりませんね。」

「…さらに細かく説明すると、例えば一見ただの画像に見えるデータでも、その中には暗号的に隠しデータなどが隠されている…のですぞ。」

「つまり、見た目は子供、頭脳は大人…みたいな?」

「確かにそれに近いかもしれませんな。ある子供の体の中に、別の子供の内臓がびっしり入っているみたいな感じですぞ。」

「めちゃくちゃ怖い例えですが、ようやく理解できた気がします。でもそれの何が描絵手の件に関係あるんですかね?」

「結論を端的に述べると、シェリーの起動画面の画像データ、あれの中に魔法陣が格納されていますぞ。」

「…は?」


 説明を受けてもあんまり理解できない。

 そんな俺の表情を読んでか、夢豚さんはパソコンを操作した。

 シェリーの起動画面、表紙といってもいいかもしれない。

 それを何らかのソフトで読み込み始めた。

 するとシェリーの表紙はものの数分で、姿を変えてしまった。

 以前の形は真っ黒な画面に白い文字で、"shelly"と書いてあるだけだった。

 しかし今は、画面を埋め尽くすほどの魔法陣になっている。

 つまり一見ただの表紙に見えても、中身は魔法陣だった…ということか。

 ちょっとイメージするのが難しいけど、あっているはずだ。


「魔法陣をデータ化する。ここ最近吾輩がたどり着いた境地だけれど、どうも他にもそれを実現した者たちがいるようですぞ。」

「つまり、科学と魔法が融合し始めている…ということなのですね?」

「…その通りですぞ。」


 聖王であるピースさんは、画面を真剣に見つめている。

 おそらく事態を重く受け止めているんだろう。

 もちろんその理由は、俺には分からない。

 でも彼女が魔法陣を見る目は、やけに険しい。


「この起動画面をタップすると、魔法陣を承認したことになり、自分の魔力で魔法を使うことになりますぞ。」

「そんなことが…。いや、でもだからこそあの時、織田さんたちはこれと言った魔力反応はなかったと言っていたのか。知らない間にみんなが自分で魔法を使っていたから、一か所に大きな反応はなかった。ただ恐らく、小さな反応が沢山あったはずだ。これは何かのヒントに使えるかも。」

「吾輩、これを昔の詐欺になぞられて、"ワンクリックマジック"と呼んでおりますぞ。」

「そういえば昔、ワンクリック詐欺って流行りましたね。」

「そうですな。」


 俺たちは暫く画面を見つめた。

 何かここから探り出そうと、全員が魔法陣を見つめている。

 そんな中、お姉ちゃんが再び口を開いた。


「ここにいる皆さんは、どれくらい魔法の知識がありますか?」


 お姉ちゃんは全員を見まわした後、水無瀬さんで視線の動きを止めた。

 聖王ほどの力になれば、見ただけで誰が何を先行しているのか分かるのかも。

 水無瀬さんは魔法使いで、間違いなくこの中で一番魔法の知識がある。

 それか水無瀬さんは帰還者だったはずだから、もしかするとすでに面識があるのかもしれない。


「自分で言うのもなんですけど、私は魔法に関しては博学だと思います。」

「それは殊勝なのです。ではこの魔法陣を見て、何か思うことは?」

「…まずこの魔法は"エルフ術式"ですね。あぁ…皆さんにも分かりやすく説明すると、魔法には大きな流派が二つあってですね。そもそも最初に生まれた魔法が、古の種族:エルフ達のエルフ術式。そして次に人間たちがそれをより分かりやすく簡略化したのが、フマ術式です。」

「エルフ術式、フマ術式…ここまでは吾輩でも知っていますぞ。」

「で、エルフ術式はさらに細分化することが出来て、古代術式、中世術式、近代術式の三つがあって…そうか、これは…古代術式ですね。」

「その通りなのです。」

「つまり…そうなると…。」

「古代のエルフ達、"エンシェント・エルフ"たちが、今回の一件に関わっている可能性が…あるのです。」


予想を立てていた方も、そうでない方も、記憶改竄の真相回です。

この一件自体はもう少し根深いですが、記憶改竄のトリックは以上です。

ステガノグラフィーは実在します。

一昔前に流行ったので、皆さんも知っているのかも。

面白いですよね。

例えばポルノ画像に、国家レベルの重大情報が隠れているかも。

例えばアニメ第一話の挿絵に、最終回のエンディングが隠れているかもしれませんね。

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Twitterアカウント:@SKluMYkhIpMoZ2I◆Twitter始めたので、良ければフォローお願いします。といっても、今の所フォロワーZEROですけど。
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