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「2.5次元世界」にて、スキル「フレーム回避」を手に入れたゲーマー俺氏、無双開始秒読みな件について  作者: 木兎太郎
第二部 第二章 夢へ飛ぶ豚

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38話 一石を投じる


 もちろん拾った石をどうするか想像するのは簡単だ。

 恐らくは投げるんだろう。

 俺はそんな予想を立てながら彼女を見ていた。

 すると彼女は、俺の予想通り確かに石を投げた。

 非常に脱力した感じで、適当に。

 投げた石は見事にゴブリンの方へと跳んでいき、その近くに落ちた。

 もちろん音が鳴り、ゴブリンたちは俺たちに気付いた。

 こちらを向いてソワソワとしている。

 彼らは逃げ出すべきか迷いつつ、自分達で用意した石を持った。

 そしてそれをこちらに投げてきた。

 相変わらず小学生のドッチボールくらいの勢いで飛んできたそれは、私夢叶に見事に命中した。


 ポスッ!


 そんな音がした。

 石は変装の為に着ている厚手のコートに当たり、地面に落下。

 私夢叶はノーリアクションでゴブリンの方を見ている。

 当初の予定通り、遠隔外装の耐久テストを実施しているのだろう。

 なんでも遠隔外装の内部構造は、地球産の合金でできているらしい。

 しかし、紫色に塗装されている外装部分はグランディアの特殊な金属でできていると言っていた。

 ゲームにも良く出てくるミスリル…だったはずだ。

 非常に頑丈で軽い。

 アルミニウムの超絶上位互換みたいなものだと思ってくれていい。

 今の石程度では、遠隔外装は無傷だ。

 それでも俺はタブレットを確認する。

 一応はゲームとして実施しているので、彼女の視界は現実世界とゲーム画面を混ぜたかのようなものだ。

 視界の左上にはライフバーとマジックバーが用意されている。

 今の一撃を受けても、ライフバーに変化はない。

 というのも、これはゲームシステムの一部ではないからだ。

 実際の遠隔外装の耐久値を表している。

 つまるところ、今の一撃で遠隔外装には異常がないということだ。

 下のマジックバーは、遠隔外装に搭載された魔石の容量だ。

 そう、遠隔外装は魔法を使用することが出来る。

 グランディアでも、人間が生み出す"ゴーレム"に魔法を使わせることができるらしく、これはその技術の応用なんだそうだ。

 ゴーレムに関して言えば、魔法生命体みたいな感じだ。

 人が魔法によって生み出す、人のしもべ。

 それに意志などはなく、まさしく機械に近い。


《それじゃ行ってきます。》

「お願いします。」


 私夢叶はゴブリンの方へと踏み出した。

 いよいよ戦闘開始だ。

 ゴブリンたちは未だに私夢叶の実力を測り終えていないようだ。

 そのため様子を伺いつつも、逃げるようなことはない。

 好戦的で弱い、酷い言い方だが、テストにぴったりの魔物だ。

 およそ3メートルほどの距離になった瞬間、ゴブリンは動き出した。

 一匹が一気に私夢叶へと飛びかかる。

 この前と同じように包丁を持っており、それを思い切り振り回しながら。

 ただゴブリンたちの筋力は非常に弱い。

 何が起こるかというと…


 ズルッ!


 そんな音が鳴るも、包丁は厚手のコートすら貫けない。

 分厚い布は、案外包丁では斬りにくいものだ。

 それに遠隔外装に着せているコートは軍事用のもの。

 特殊繊維を編み込んでいるらしい。

 結果的にコートにも、遠隔外装にも傷をつけることができなかった。

 ゴブリンたちは不思議そうな顔をしている。

 確かに人間の柔らかい体ならそれで十分だった。

 でも今回は流石にダメだ。

 適当な刃物では相手が悪い。

 包丁だって使い古しで、丁寧に研がれているとは思えない。

 私夢叶は目前まで自ら近づいてきたゴブリンを見下ろし、蹴り上げた。

 一切の容赦などなく、思い切りよく。

 ゴブリンはまるでリフティングの蹴り初めのように、彼女の視線からすれば丁度いい位置まで蹴り上げられた。

 私夢叶は両手を組んで、それを上に振り上げ、一気に打ち下ろした。

 その一撃はゴブリンの脇腹に直撃し、凄まじい勢いで地面に叩きつけられた。


 ゴシャッ!!!


 という音が鳴った。

 近くの森が多少音を吸ったが、それでも俺の耳には残る。

 正直剣で戦うよりも、打撃の方が遥かにグロテスクだ。

 地面に半分めり込んだゴブリンは、もはや動かない。

 一撃で絶命したみたいだ。

 他二匹のゴブリンたちも、そんな様子を見て唖然としている。

 そんな彼らへと、私夢叶はゆっくりと歩み寄った。

 彼らからすれば、最強最悪の魔王が近づいてくるようなものだろう。

 二匹のゴブリンたちは一気に踵を返すと、とてつもない速さで走り出した。

 およそ五秒もすれば、彼らは森に入って見えなくなってしまった。

 すると私夢叶と共有しているタブレットの画面に変化が起きた。

 ナイスハント、という文字と共に、スコアが表示された。

 現状開発段階のこのゲームは、現状はスコアを競い合うシステムだ。

 そのため、まだプレイヤーにはレベルなどがない。

 ゴブリンを倒したスコアは


『Nice Hunt !!!

Your SCORE 10!!!』


 少な。

 まずい、ついつい本気が出た。

 完成品では、これがレベルを加算させる仕組みになるんだと思う。

 それにしても…少ないな。

 たぶんゲーム内のゴブリンは、いわゆる"不味い"魔物だ。


《…逃げられてしまいました。》

「そのようですね。」

《これでテスト結果は十分なんですか?》

「う~ん、少し確認してみます。時間をください。」


 俺はすぐに夢豚さんへと無線を繋いだ。

 

「こちらβ、応答せよ、どうぞ。」

『こちらα、どうぞ』

「テストを進行していますが、魔物が弱すぎる可能性があります、どうぞ。」

『了解、テスト映像を確認する…少し待て。』


 一分後。


『こちらα、確認完了した。確かに動作に問題はなさそうだ。テスト段階を性能テストへと進行する。黄点をテストケースとする。どうぞ。』

「了解しました。テストを進行します。どうぞ。」

『…どうぞ?』

「…どうぞ?」


 なんか最後は変な感じになったが、無線が切れた。

 それにしても黄点の魔物か…俺の負担が大きいな。

 でも今の感じ、遠隔外装で何とかなりそうな感じもする。

 黄点の魔物のリストを見たけど、どれも"デブデーモン"以下だと思う。

 俺が狩ったことのあるアルーや、ミノタウロスがそれにあたる。

 問題点を挙げるとすれば…私夢叶の武器くらいだろう。

 メリケンサック…か。

 多少強くて、人間くらいの大きさの魔物を用意すれば問題なさそうだ。

 あんまりでかいと攻撃力が足らなそうに思える。

 タブレットに黄点リストを表示させて…シェリーで索敵…。

 お、運がいいな。

 丁度近くに手ごろな魔物がいるぞ。

 ダイアウルフだ。

 白い毛並みで、大きさは二足立ちさせれば成人男性くらい。

 狼にしてはかなり大きい方だろう。

 古代に同じ名前の狼がいるが、同種ではない。

 あくまで魔物としての狼だ。

 俺たちはダイヤウルフの元へと向かうことになった。

 といっても、移動時間は五分程度だったが。

 すぐに目的地までたどり着いた。

 ゴブリンの時と同じような場所で、人気はない。

 郊外は自然が多くて人が少ない。

 なんてありがたいんだ。

 私夢叶は再び"ステータス"を起動した。


『ダイアウルフ LV87(総合点)

 PA:21(物攻)

 PD:16(物防)

 MA:0 (魔攻)

 MD:10(魔防)

 AG:30(敏捷)

 IN:10(知性)』


 さっきとは雲泥の差だが、強さ的には丁度いいだろう。

 決して強すぎず、弱すぎずだと思う。

 黄点の中でも最弱クラスの魔物だと思う。

 余談だが、ゲーム内の一般概念として、最大レベルは100だ。

 でも夢豚さんが用意したレベルはあくまで総合点だ。

 だから100レベルくらいはたやすく超える場合もある。

 現実世界に合わせて、ゲーム内の概念を分かりやすくしたんだろう。

 俺としてはかなり高評価だ。

 レベルが高いほど強い魔物という、もっとも単純な指標になる。

 俺は少し遠くに見えるダイヤウルフを注意深く観察していた。

 すると隣から小さな音がした。

 流石の彼女も緊張しているのか、息を飲む音だったようだ。

 遠隔外装はそんな人間らしささえ、兼ね備えているらしい。

 俺もいつでもサポートできるように、周囲を把握しておく。

 流石に狼の警戒力は高く、半径10メートル地点で気付かれた。

 ただし逃げる様子はない。

 ゴブリンと同じく好戦的だが、彼らほど弱くはない。

 生息地は森なので、市街地で目撃することはない。

 ただこの世界に絶対はないので、一般人が目撃すればゲームオーバーだろう。

 少なくとも銃ではどうにもならないクラスの魔物だ。

 私夢叶はゆっくりと前に踏み出した。

 するとダイヤウルフもすかさず走り出した。

 その速度には目を見張るものがある。

 俺がよく引き合いに出す"縮地"よりは遅い。

 しかしオートバイくらいの速力は十分にある。

 私夢叶は接近してくるダイアウルフに対して、スピード勝負は不利だと判断したのか、冷静にその場で構えを取った。

 本当に少しだけ右足を後ろに下げ、両拳を眉間の高さまで持ち上げる。

 前腕は少しだけ八の字を描くように配置された。

 これはまさしくムエタイスタイルで、俺も見たことがある。

 ダイヤウルフがいくら大きいとは言っても、その頭部は丁度人間の腹部に当たるくらいの高さにある。

 俺は彼女が何をしようとしているのか、直ぐに理解できた。

 ダイヤウルフが彼女の間合いに入った瞬間、彼女は動き出した。

 最短距離で足を持ち上げ、回し蹴りを放ったのだ。

 その一撃はつま先で非常に美しく弧を描いた。

 コンパスで描いてもあそこまで美しくなるだろうか。


 スパンッ!


 という音を鳴らしながら、ダイヤウルフのこめかみに直撃した。

 あまりに美しい一撃だった為、俺は思わず見とれてしまった。

 しかしダイヤウルフも甘くはなかった。

 重厚な毛皮に守られ、打撃には随分強そうだ。

 遠隔外装が履いていたズボンの膝から下を、蹴られながらも噛み千切ったのだ。

 やはりゴブリンとは雲泥の差があるらしい。

 私夢叶はそれが想定内だったのか、驚いたような様子はない。

 ダイアウルフも警戒したのか、先ほどのように不用意に向かってこなくなった。

 お互いの距離は大体3メートルほど。

 微動だにせず構えを取り続ける私夢叶の周囲を、ダイヤウルフが弧を描くようにゆっくりと歩いて移動している。

 俺が彼女の背後にいるため、完全に円を描くことはないが。

 一分ほど膠着状態が続いた。

 でも正しいと思う。

 素早い相手に対してこちらから動くのは悪手だ。

 一瞬のタイミングを狙い、一撃で落とす。

 俺も同じ選択をしただろう。

 だが今回先に動いたのは私夢叶だった。

 彼女はなぜか先ほどと同様の回し蹴りを放った。

 当然だが、それは美しく空ぶった。


 ブンッ!


 という音だけが周囲へと響く。

 ダイヤウルフはその隙を逃さず、すかさず踏み込んできた。

 俺ならば逆に警戒して踏み出さない。

 しかしダイヤウルフは獣だ。

 その一瞬の隙を逃さなかった。

 本能だったんだろう…それがブラフだと知らずに。

 ダイヤウルフが接近する中、空ぶった足が真上に持ち上げられた。

 そして再びダイヤウルフが間合いに入った瞬間、それが振り下ろされた。

 踵落としは見事にダイヤウルフの脳天に直撃。

 

 ゴスッ!!!


 という嫌な音と同時に、ダイヤウルフの動きが一瞬止まった。

 私夢叶はその大きな隙をの逃さず、ダイヤウルフの背にまたがった。

 彼女はその状態から何度もメリケンサックを付けた拳を振り下ろした。

 グロい。

 あまりにもグロテスクだ。

 何度も嫌な音を立て続けた打撃は、一分もしないで終わった。

 ダイヤウルフは地面に倒れ、動かなくなってしまった。

 俺はダイヤウルフの亡骸を、同情するように眺めた。

 私夢叶の表情は分からないが、汗をぬぐう動作をしている。

 流石の遠隔外装にも、汗をかく機能はない。

 そんな余計なことを考えていると、近場の森から異様な音が聞こえた。

 ガシャンッ、ガシャンッ、という音が数回繰り返された。

 やがてその姿が見えた時俺はそれが足音だったことを悟った。

 見えた姿はデュラハン。

 おそらくダイヤウルフの"死"に誘われて出てきたんだろう。

 タブレットに表示されたマップ上の点は、残念ながら"赤"い。

 前述を否定する。

 やっぱり森が沢山あっちゃだめだ。


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