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「2.5次元世界」にて、スキル「フレーム回避」を手に入れたゲーマー俺氏、無双開始秒読みな件について  作者: 木兎太郎
第二部 第二章 夢へ飛ぶ豚

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32話 大学生


 夢豚さんの自宅までは想像よりも時間がかかった。

 彼の自宅はボストンの郊外にあり、都会感は一切ない。

 周辺には家と自然が丁度トントンくらいで並んでいる。

 いや、むしろ自然の方が多く見えるかも。

 そのためか、周囲には豪邸が多い。

 いわゆる別荘地なんだろう。

 歩いている人も心なしか豪華な服を着ている。

 リムジンは他の家からかなり離れた場所に停車した。

 人気がほとんどないような場所だ。


「さて、ここが我が家ですぞ。」

「…すご。」


 たった二文字で感想を済ませたが、本当にその一言だった。

 夢豚さんの自宅は家、というよりは施設みたいな見た目をしていた。

 ドーム状の家で、とにかくデザイナブルだ。

 近未来的なデザインをしていて、他の家とは様相が違う。

 白を基調とした非常に美しいデザインをしている。


「早速入って欲しいですぞ。」


 そういうと夢豚さんは、カギを開け帰宅した。

 すぐに後に続くも、いちいち驚愕して立ち止まってしまう。

 最初に入った通路がすでに広い。

 一般宅の子供部屋を長くしたかのような廊下だ。

 ようは廊下だというのに窮屈感が一切ない。

 そして床は大理石のタイルが敷き詰められている。

 アメリカの文化として土足だというのは本当らしい。

 夢豚さんに続いて俺たちも靴を履いたまま入った。

 もちろん荷物はなるべく引きづらないように、持ち上げて歩いた。

 ありえないほどの豪邸に、全員が現実感を失い始めていた。

 入り口から一直線に進めば、直ぐにリビングに着いた。

 ソファの大きさも一個人が所有するレベルではない。

 異状でしかないその光景に未だに目が慣れず、もはや居心地が悪い。

 もしも現代でも貴族文化が根強ければ、貴族たちはこんな家に住んでいるのかもしれない。

 少なくとも俺はそんな印象を受けた。


「とりあえず二階のいくつかの部屋は来客用に開放してありますぞ。そこに荷物を運んでもらって、後はくつろいでいて欲しいですぞ。」


 一応2~3日泊る見込みでボストンに来た。

 もちろん一番の目的は描絵手の件。

 二番目の目的は"夢霧無"の活動。

 三番目の目的は単純に旅行を通して刺激を受けるためだ。

 かっこつけるつもりはないが、クリエイティブな活動をしている以上、日常に刺激は必要不可欠だと思う。

 夢豚さんの指示と案内に従って、俺たちは荷物を置きに行った。

 二階の規模も同様で凄まじかった。

 豪華絢爛とはまさしくこのことなのだろう。

 そしてもろもろの整理を終わらせ、俺たちは再びリビングに集合した。


「それで夢豚さん、早速で悪いんですけど。」

「わかっていますぞ。描絵手氏の件ですな。」

「えぇ、是非お願いします。」

「少しだけ時間を頂いてもよろしいですかな?説明は夜にしたいですぞ。」

「分かり…ました。何か準備がいるような事なんですか?」

「そういう訳ではないですぞ。単純に、吾輩これから大学に行くのですぞ。」

「…そういえば夢豚さんも学生でしたね。」

「今日は興味のある分野で、どうしても外すことができないのですぞ。」


 そういうとすでにリビングに置いてあった鞄を一つ持ち上げ、夢豚さんは玄関に向かってしまった。


「とりあえず家にあるものはなんでも自由にしてくれていいですぞ。それでは吾輩、学校に行ってきますぞ。」


 ガチャリ…バタン。


 そのままあっさりと夢豚さんはいなくなってしまった。

 なんというか嵐みたいな人だという印象がある。

 さっきまで魔物相手に重火器をぶっ放していた人が、普通に学校に向かっていってしまった。

 自分の人生もなかなかだとは思うが。

 夢豚さんはまた違った感じでてんやわんやしている。


「夢豚さん、行っちゃいましたね。」

「…でも、それなら今は自由時間…ということですよね?」


 水無瀬さんがウキウキした様子でそう言った。

 なんとなく考えていることは分かるが、彼女は仕事で来ているはずだ。

 ただそんな無情なことを言えるはずもなく、俺は素直に答える。


「たぶん夕方までは。」

「なら私は少しアメリカの景色を楽しんできます。特に買い物をせずにはいられない、それが女子です。」

「は、はぁ。分かりました。」


 申し訳ないが、見た目に女子要素は一切ない。

 彼女はどちらかというとお姉さんだ。

 今日だってしっとりとした黒を基調とした服を着ている。

 しっかりとしている大人の女性にしか見えない。

 でも感情に動かされる感じは、少しだけ子供っぽくもある。

 最も、俺も子供だが。

 水無瀬さんは最低限の荷物を手に持つと


 ガチャリ…バタン。


 玄関から出て行ってしまった。

 夢豚宅に残ったのは三人だけだ。

 なかなかトリッキーな初日になってしまった。

 確かに俺たちの事情に、夢豚さんまで巻き込むわけにはいかない。

 学業をおろそかにされては罪悪感がある。

 しかし日中の手持ち無沙汰感が否めない。

 俺はなんとなく描絵手の方を見た。

 すると丁度彼女が俺に話かけてくるところだった。


「みんないなくなっちゃったね。」

「ま、当然といえば当然かも。」

「…そうだ!」

「え?」

「どうせなら撮影に行こうよ!アメリカで、"夢霧無"の!」

「あぁ…確かに丁度いい機会かもな。」


 俺はスマホを手に取る。

 これがあれば土地勘が無くても迷うようなことはないだろう。

 マップアプリの現在地にピンを置き、GPSを作動。

 そうすればもう迷うことはない。


「柵魔さんはどうしますか?」

「…私はもう少しこの家にいます。後から追いますので、描絵手様に何かしようとすればすぐに始末しますから。」

「肝に銘じておきますよ。…でも一体何を?」

「この家の安全確認です。そもそもの問題点として、あの豚が味方ではない可能性を皆さん考慮するべきです。」

「確かに不審者みたいな人ですけど、いい人なんですよ夢豚さん。発展途上国に学校を建てたり、井戸を建てたりしてますし。」

「あの豚がどういう人間かは私の目で判断します。」

「わ、分かりました。」


 説得したいところだが、どうもうまく行きそうもない。

 とりあえず今の俺に柵魔さんを止めるすべはない。

 家族のような関係であるはずの描絵手の方を見た。

 描絵手も俺の方を見たが、静かに首を振るうだけだ。

 どうも一度決めると、なかなか折れないタイプみたいだ。


「なら俺たちは撮影に行こうか。」

「賛成!」


 俺たちは柵魔さんを止めることを放棄し、外出することにした。

 もちろん目的は撮影で、それ以外の何でもない。

 た、例えばデートとかではない、決して。

 だから下心は0%以下だといっても過言ではない、多分。

 若干の浮かれ気分だったこの時の俺は、まさかあんなことが起きるとは思ってもいなかった。



 ●序章後●


 

 俺と描絵手は倒れている四人組の暗殺者を拘束した。

 彼らの靴紐やベルトを使えばそこまで難しくはない。

 ただグランディアの人たちを紐とかベルトで拘束しても通じるか不安だ。

 拘束手段を思案していると、遠くから走ってくる誰かの姿が見えた。

 その人物は一般人ならありえない速度でこちらに到達した。

 

「ハァッ、ハァッ…これは一体どいう事態ですか?」


 流石に走り過ぎたのか、柵魔さんは息切れしている。

 それでも彼女は描絵手の方を見た。

 とても心配そうな表情をしている。


「この人たちに襲われて、それで契躱君が拘束してくれたの。」

「…なるほど。」


 柵魔さんは一度深呼吸をして息を整えると、姿勢を整えた。

 そして俺の方を見る。


「また描絵手様を助けていただいたみたいですね。ありがとうございます。」

「描絵手を守ることは俺の意志でもありますから。」

「…今回だけは素直に感謝しておいてあげます。」


 俺と数回会話すると、柵魔さんは暗殺者たちを見た。

 彼女は彼らの手首や足首を見て首をかしげる。


「…まさかこれで拘束したつもりですか?」

「…一応そのつもりです。」

「はぁ、これではまた逃げられるのがオチです。これだから人間は。」

「ちょっと文歌、そんな言い方はないでしょ。」

「か、描絵手様。ですが厳しく言っておかなければ。」

「文歌!」

「す、すみません。」


 柵魔さんはしょんぼりしてしまった。

 なんとなく言いたいことは分かるので、仲裁に入る。


「まぁまぁ描絵手、これで逃げられちゃ最悪だし、取りあえず柵魔さんの話を聞こう。言い方は少しだけキツイけど、彼女も心配しているだけだ。」

「契躱君がいいならいいけど。」

「に、人間にしては物分かりがいいですね。見どころはあります。」


 柵魔さんの中の評価が上がったらしい。

 素直に喜んでおこう。

 俺たち二人に観察される中、柵魔さんは動き出した。

 彼女は両手を胸の前で合わせ、ゆっくりとそれを広げる。

 するとそこに10センチ四方の黒い箱が現れた。

 もちろん俺はあれが何だか知らないし、今の所授業でも習っていない。

 柵魔さんが手を少しだけ回転させれば、呼応するように箱も回転する。

 次に彼女は手と手の幅をさらに広げた。

 それに呼応するように、今度は箱が大きくなった。

 大体1メートル四方くらいだろう。

 彼女はそれを地面に置くと、開いた。

 そして俺たちが見守る中、次々に暗殺者をそこに放り込んでいく。

 まるでゴミを掃除するような手つきで、暗殺者たちはこの世から消えた。


「…えっと、もしかして殺しました?」

「何を言っているんですか?私はあなたが考えているほど愚かではありません。ちゃんと生まれてきたことを後悔するほどの苦しみを与えてから、ゆっくりと苦しめつつ殺そうと思っています。」

「いや、殺さないでください。というかそもそもそれは一体?」

「これは私のスペシャルスキルで"亜空間収納ランチパック"です。」

「えっと、それって一体?」

「私が所持する決まった要領の別次元に、箱を通してなんでも収納できる能力といえば頭の悪い人間でも分かりますよね?」

「た、確かに分かりますけど。」


 …ゲームにあるアイテムボックス的な効果の"スペシャルスキル"っていうことなのか。

 同じ生き物である以上、魔人がスペシャルスキルを持っていてもおかしくはないか。

 生まれ持った才能的なイメージなんだよな、確か。


「ちなみにそこに入った人間はどうなるんですか?」

「入る寸前の状態のままです。死んでいれば死んだまま、生きていれば生きたまま、気絶していれば気絶したままです。」

「つまり気絶から復活することはないと。便利なスキルですね。」

「これくらいの才能がなければ、描絵手様の側仕えという名誉は得ることが出来ませんから。」


 柵魔さんは意味ありげに俺の方を見てくる。

 描絵手の側にいたければ、力を示せとでもいいたんだろう。

 とりあえず今は、柵魔さんに認めてもらえるように頑張ろう。

 それが描絵手を守ることにもつながるしな。

 でもまぁ、前途多難なことだけは確かだ。


ブックマークありがとうございます。

大変励みになっております。


今回のパワーフレーズ。

「そもそもの問題点として、"あの豚"が味方ではない可能性を皆さん考慮するべきです。」

人のことを豚呼ばわりしてはいけません。

喜ぶ人もいれば、傷つく人もいます。

余談ですが、私はMです。

自覚はないですが、沢山の人からそう言われます。

十人十色、みんな違ってみんないい、だって人間だもの。

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Twitterアカウント:@SKluMYkhIpMoZ2I◆Twitter始めたので、良ければフォローお願いします。といっても、今の所フォロワーZEROですけど。
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