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「2.5次元世界」にて、スキル「フレーム回避」を手に入れたゲーマー俺氏、無双開始秒読みな件について  作者: 木兎太郎
第二部 第一章 違和感

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26話 違和感


 一週間の休みが終わるのは案外あっという間だった。

 学生が一週間休むのはインフルエンザか大怪我くらいだろう。

 長期間休んでから学校に向かうのは、なんとなく変な気分だ。

 俺はいつも通り学園前の転移門に出た。

 するとそこには描絵手が待っていた。

 今日は描絵手と話すために少しだけ早く来た。

 というのも描絵手が相談したいことがあるらしい。


「おはよう。」

「久しぶりだね。体、大丈夫?」

「まぁまぁかな。まだ連休で少しだけだるい。」

「あの一件の怪我について聞きたいんだけど…。」

「怪我はあらかた描絵手とお医者さんが治してくれたら、学校を休んだ主な理由はサボりだ。」

「学生らしからぬ話だね。」

「学生である以前に人間だから、サボりもする。」


 そして俺の視線は当然描絵手の頭に向かった。

 この一週間で何があったかは知らないが、明らかに髪型が変わっている。

 あの戦いで髪の毛を切られたなんてこともなかったはずだが。


「気づいた?」

「いわゆるショートヘア…だよね。」

「うん、そうなんだ。色々あったからこの機会に髪を切ってみたんだ。」

(何かあると髪を切る女性が多いって、本当だったんだな。)


 以前は肩甲骨までくらいの長さだったけど、今は顎くらいまでしかない。

 それが全体的にふんわりとしつつも、毛先は内側にカールしている。

 前髪は少しだけ分けられ、彼女の眉と目がはっきりと見える。


「それよりも…どうかな?」


 描絵手は頬を少しだけ赤く染めると、うつむきながら聞いてきた。

 何かを。 


「どうかなって?」

「い、いくら何でも鈍くない?」

「待って、やっとわかった。」

「本当?」

「うん、とっても綺麗だよ。」

「…う、嬉しいけど、そんなにはっきり言われると照れる。」

「え?靴、新品だよね。」

「‥‥‥‥ま、わかってたけどね。」


 この機会に一新したのはどうも髪型だけではないらしい。

 特に驚いたのは自作イラストTシャツを着ていないことだ。

 言い方は悪いけど、野暮ったいオーバーオールも脱いでいる。

 女子らしいミニスカートに、焦げ茶色のカーディガン、中は無地のTシャツで、かなり大人っぽい恰好をしていた。

 髪型から含め、全身気合が入っている気がする。

 女子力のレベリングに成功したみたいだ。

 元々素材がめちゃくちゃいいから、周囲の視線をかなり集めている。

 男女問わず描絵手の方を見ていた。


「全体的に気合入っている気がするけど、どうかしたの?」

「う~ん、あの一件の一番の教訓は後悔しない選択をすることだと思って。」

「それで…服を?」

「そう、一番欲しいものを素直に取りに行くことにしたんだ。」

「一番欲しいものって?」

「秘密です!でもまぁ、そのうち知ることになるかもね。」

「う、占い師みたいだ。」

「はぁ、本当…なんだか。でもきっといつか、()()()()()もらうから。」

「わ、わかった…。」


 俺は思わず一歩後退った。

 なんというか性格そのものがアップデートしている気がする。

 自信がなかった彼女からも一新しているということだろうか。

 一週間という時間はそこまで長くないと思うけど、見事に変化をもたらしてくれたみたいだ。

 世界から一週間分だけおいて行かれてしまったような、そんな感覚だ。


「そういえば相談って?」

「まずはあれなんだけど。」


 描絵手はそういうと、門から少しだけ距離のある路地を指さした。

 とくに変化のない、いつも通りの光景に見えるが、確かにそれがいる。

 電柱の裏に、髪の長い女性が隠れていた。

 マスクにサングラスにハットをかぶって正体を隠している。

 でも背格好には少しだけ見覚えがあった。


「あぁ…水無瀬さん、かな。」

「そうなんだ。あれ以来、シェルが私の後を必ず付いて来るようになったの。」

「つまり、どういうこと?」


 俺がそう聞くと、描絵手は水無瀬さんを手招きした。

 水無瀬さんは周囲をキョロキョロと見まわすと、素早く変装を解いた。

 あれだと不審者丸出しで、学生に近づいたら即逮捕だろう。

 当然の処置だ。

 足音を完全に殺しながら、彼女はこちらまで近づいてきた。

 なんとなく有名ゲーム"鉄歯車"の"蛇"を思い出しそうな素振りだ。


「…待たせたなぁ。」


 水無瀬さんは近づいてくると、第一声でそういった。

 間違いなくそれでしかないトーンと口調に、俺は思わず目を見開く。

 でも描絵手は当然であるかのように彼女にお願いした。


「水無瀬さん、私にした説明を契躱君にもしてくれない?」


 描絵手がそういうと、水無瀬さんがこちらを向いた。


「あぁ…君は確か特記事項に書いてありましたね。」

「特記事項?なんの話ですか。」

「こっちの話です。良くわかりませんが一応説明してあげます。」

「あ、ありがとうございます。」

「"夢霧無"とかいう"クソ配信者"がしたライブ配信以来、描絵手さんには警備が付くようになりました。私が選考された理由は、描絵手さんと同じくゲーム好きだからだそうです。」

(クソ配信者って、めちゃくちゃアンチじゃんか。)

「水無瀬さんが答えてくれるのはこれだけなんだ。」

「でも警備なら、悪いことじゃないよね。」

「まぁそうなんだけど…どこへ行こうにも四六時中ついてくるから。」

「ハハハ、それは確かに煙たそうだね。」

「うん…凄く。この前なんてアキバにゲームを買いに行ったら、一緒に来て同じゲームを買って帰ったの。」

「あれ、凄くおもしろかったですね。」

「そ、そうですか。」


 描絵手は困り顔で水瀬さんを見た。

 俺は不意に、以前沙良校長から受けたアドバイスを思い出した。


「考え方を変えてみたら?趣味は同じなんだし、年の離れた友達みたいな。」

「す、凄いポジティブだね。」

「まぁとりあえず害を与えてくるわけじゃないし、描絵手に守ってくれる人が必要なのは事実だし。あのライブ配信で、世界が描絵手を知ったから。」

「…そう、それなの。」

「それ…って?」

「ねぇ、違和感がない?」

「違和感って…う~ん。」


 俺は周囲を見渡した。

 といっても相変わらずいつも通りの光景で、これといった変化はない。

 それでも俺はようやく気付いた。

 違和感がないことが違和感なのだと。


「描絵手の正体は世間にばれたはず…だよな。それなのになんで、こんなにも周囲は普通なんだ?」

「そうなの。」

「シェルターが何かやったとか?」


 俺は水無瀬さんの方を見たけど、彼女は首を横に振るだけだった。

 もしも世間が彼女の存在を認識していないのなら、あのライブの意味がない。

 彼女が世間に認識されることこそが、守ることにつながるはずなのに。


「…どういうことだ?」

「あの、いいんですか?」


 俺が疑問を解決するために周囲を見渡していた。

 残念ながらいくら見まわそうとも、不自然な点はない。

 そしてそんな中、水無瀬さんに声をかけられた。


「何がですか?」

「もうすぐ学校が始まってしまいますよ。」


 いつの間にかチャイム目前まで時間が迫っていた。

 俺は違和感を抱えつつも、そのまま教室へと向かった。

 そして教室内でも、変化はあった。

 俺の視線は変化の方向に釘付けで、もはや視線を逸らすことはできない。

 朝のホームルームだというのに、全く集中することができない。

 だが先ほどから視線を合わせてくる向こうもそれは同じだろう。

 白木先生がホームルームを進める横に、知り合いが立っていた。

 近くの女生徒が小声で密かに噂をしている。


「織田先生、めっちゃかっこいいよね。確実にこのクラス当たりなんだけど。」

「わかる~、渋くてかっこいいよね。同学年の男子じゃあの色気は絶対にだせないんですど。」

「マジやばいよね、私本気で狙ってみようかな。」

「え~、禁断の恋じゃん。」

「逆に燃えちゃうんですけど。」

「わかる~。」


 俺はその噂が耳に入るも、一瞬も織田さんから視線を逸らさなかった。

 そのため、彼が一瞬だけにやけたのを見逃さなかった。

 明らかに彼女たちの噂話は聞こえている。

 というか女子高生にちやほやされてにやけるおっさんのどこに色気があるのか、是非俺に説明して欲しいところだ。

 それに女子高生を容赦なく殺そうとするような大人だぞ。

 ホームルームが終わると、織田さんは俺に視線を合わせたまま親指で廊下の方を指さした。

 俺は素直に従い、彼に付いて行く。

 廊下に出ると織田さんは闘志ムンムンでこちらを見てきた。

 尋常ではないその様子に、周囲の生徒が少しだけ距離を取る。


「久しぶりだな。…お前の顔を見ると、あの時なぜ負けたのかイラつく。」

「ま、実際余裕でした。百回やっても百回俺が勝ちます。」

「ほう…一度地面でおねんねしていたと思うがな?」

「そっちも、地面とディープキスしてましたよ?」


 俺と織田さんは徐々に近づき、今にもお互いに手が出そうだった。

 周りの視線さえなければ、喧嘩になっていただろう。


「俺は今この学校で教師として朝比奈描絵手を守っている。だがお前の警護までは命じられて無いんでな。」

「自分より弱い奴に守られる気はないです。」

「…やはりもう一度決着をつける必要がありそうだな。」

「えぇ、俺もその必要を感じます。」

「俺は戦闘科目の教員としてこの学校に来ている。今日最後の授業の剣術でお前と決着をつけてやる。」

「面白いですね。受けて立ちますよ。」

「ビビッて早退するなよ?」

「そっちこそ。女子高生にちやほやされている暇があったら、もう少し修行しておくべきだったと思いますよ。」

「妬いているのか?」

「…ちょっと。」

「…そうか。」


 俺たち二人はその場で分けれた。

 しかし織田さんはすぐにこちらに振り返った。


「そうだ!忘れていたが学校では俺のことを先生と呼べよ。」

「最低限のルールは守りますよ。」


 彼は再び職員室の方へ向き直り、適当にこちらへ手を振って去っていった。

 心の中ではすでに戦いのゴングが鳴っているが、学校では流石に喧嘩できない。

 剣術の授業を真面目に受けた経験はないが、今日は別だ。

 バチバチに本気で行こうと思っている。

 織田さんを泣かせる準備はすでにできているといっても、過言ではない。


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Twitterアカウント:@SKluMYkhIpMoZ2I◆Twitter始めたので、良ければフォローお願いします。といっても、今の所フォロワーZEROですけど。
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