11-5[ショウルート]
俺は敵が少ないところがいいなーと思い、結構地味目のくらーい通路を選んだ。
けどそれが仇となったようだ。
「クックック、いたぞォ、宿敵吸糖鬼だァ!!」
「クックック、我々の力を思い知らせてやらねばな!」
はい、ご覧の通りエンカウントしています。
しかも思っている以上に敵が多く、なんなら複数体に囲まれている状態です。
なんでこーゆー時は運が悪いかな、俺は!
「クックック、我が砂糖剣の錆、いや零れたカスにしてやろう!」
「あーうるさい、光牙天輪!」
丁度円のように囲んでいたため、光牙天輪を使用。
面白いくらいに敵は真っ二つになり、ドサドサ倒れていった。
「クックック、我々の一部を倒したところでいい気になるで無い!!」
だがそれでも敵はまだまだいっぱいいるわけで。
だー!面倒臭い!!
いくら強化状態とはいえ、この数の相手を面倒するのは至極面倒臭い!
場所が場所なら光牙滅斬でまとめて倒したいところだが、現在は飛行船の中。
下手したら轟沈墜落、俺らまで地獄へサヨナラバイバイだ。
となれば小技で地道に倒すしか無い。
「おるぅらぁ!!」
愛用の武器と化した定規片手に、時々吸糖しつつ敵をバッサバッサ倒し。
たまーに落ちていた石を拾っては、敵に全力投球の石投げかまし。
何とか通路を抜け、少し広めな場所へとたどり着いた。
あたり一面、コンクリートの無機質な感じなのでちょっと圧迫感がある。
こんだけ色々抱えている俺だが、閉所恐怖症でなくてよかったなーと思った。
今までの経験上、もしそうなら絶対発症して震えていたからな。
そうそう、丁度あそこでうずくまっている布切れみたいな。
「って、もしかしてこれって敵、か?」
俺は定規でツンツンしてみる。
布切れは「ひぃぃぃぃ!!」と怯えて震えるばかり。
……うん、俺はこいつを倒せない。
俺も対人ならこうなっちゃうから、気持ちはよく分かる。
辛いよな、怖いよな、震えちゃうよな。
そんな奴を俺は倒せん。
俺は選別と言わんばかりに、吸糖して健康体にしてからこの部屋を出た。
あばよ、達者で暮らしてくれ、俺みたいな人よ。
「お、今度は敵なしか」
次の通路は敵は全くなく、トラップも何もない、ただただ簡単な一本道。
そうなると疑問に思うことが一つ。
なんでこんな配置だったんだ?
もしかしてさっきの人、実は強かったりするのだろうか。
『通路に兵いっぱい置いて、弱ったところをコイツに止めさしてもらいましょう』的な。
そうならば味方の苦手が分からない無能指揮官となる訳なのだが。
まぁあくまで予想だし、実際は違うだろう。
そう思いながら次のドアを開けた。
「うぉう!」
今度の部屋はいかにも総帥がいそうな部屋であった。
広い空間、赤い絨毯に、糖党のマークが描いてある垂れ幕がいっぱい。
奥には玉座があり、そこにはエイレをさらったフード男が座っていた。
「ほう、まさかここまで辿り着くとは、意外と吸糖鬼は強いのですね」
フード男は椅子から降り、立ち上がる。
表情は驚きの表情。
まさに『万全の布陣で用意したのにまさか生き残るとは』みたいな感じだ。
あくまで俺の予想だけど、予想だけど!
「兵は勿論なのですが、北方五英神に匹敵すると言われたあの男を倒してしまうとは。いやいや、計算違いでした」
いかにも知的キャラ、策略キャラ風に言っているフードさん。
でも事実は違うんだよなぁ。
お前のミスで、その切り札的人は戦うことができなかったんだよなぁ。
ここまで来るとギャグキャラかお間抜けキャラだわよ。
俺はフードさんに呆れた表情をするが、気付いていないのか話を続ける。
「ですがーー私がいます。ここであなたは死んでしまう事でしょう。王女を助ける事なく、ね」
カツ、カツと靴を音立てながら歩いてこちらに近付いて来る。
うわぁやっぱり厨二臭いし、ポカやらかすし救いようが無いな。
本来はここ、シリアスシーンになると思うのに、俺の感情は呆れしかない。
シリアスになれないわ。
「おや、恐怖で何も言えないのですか。これを見たらもっと恐怖の表情に染まると思いますよ」
フードさんは勝手に変な解釈しているようだけれど……まぁ別にいいっか。
別に恐怖してる訳じゃないし、何かを見たからって怖がることもないだろうし。
そう思いながらフードさんの方を見てみる。
「うぉっふ……」
だが恐怖はしないものの、正直びっくりしてしまった。
それは装備。
防御力が高く、属性耐性も高い課金防具「神風のヴェール」
その下には聖属性に凄ぶる耐性をもつ課金防具「大神聖長官のローブ」を着用。
腕にはそれぞれ攻撃上昇の課金アクセ「武神の腕輪」、魔法威力向上の課金アクセ「魔神の腕輪」
武器は強力な課金武器の「剣神のつるぎ」と「聖女の杖」の二刀流。
他にも細かい課金装備がいーっぱい。
課金で身を固めた廃課金ソルジャーな姿がそこにはあったのだ。
確かにこいつはある意味恐怖かも。
単純に強力な武装だらけだから勝つのが難しいからね。
フードさんがそう言う理由も分からなくもない。
「安心なさい、苦しまずに倒してあげますよ」
俺の驚いた表情を見てか、剣を構えながらにっこり笑みを浮かべて言うフードさん。
これは流石に呆れている場合じゃあないな。
俺も改めて定規を構えた。
「いきますよ!!」
フードさんは踏み込みながら剣を俺に振り下ろした。
俺はそれに対し、定規を上に構え受け止める。
ギィンと鈍い音がするが、武器の耐久は問題無し。
しっかりと受け止めることができた。
「ほう、ふざけた武器かと思いましたが案外凄い武器のようですね」
「俺の最高の武器だからな!」
武器を押し上げ敵の体制を崩すと、そのまま肘打ち込みの体当たり。
相手を突き飛ばすと構え直し、フードに向かって斬りかかる。
だが流石は課金装備、たかが服の袖に防がれてしまった。
「片方フリーにしてはいけませんよ」
フードは防いでない方、杖で俺に攻撃してきた。
俺は瞬時に攻撃をやめ、後方に下がる。
辛うじて攻撃をかわせたようだ。
「貴方、思った以上にプレイヤースキルが高いですね。北方で鍛えていましたか?」
「教える義理はない、ねッ!!」
今度は相手の腹部めがけ水平に斬りかかる。
しかし今度は余裕もあってか、簡単に杖で防がれてしまった。
だがこれが狙い。
その状態で剣から眩い光を出す。
「うっ!?」
目が眩んだ隙に、思い切り勢いつけた蹴りをお見舞い。
フードは吹っ飛び、近くの壁に激突。
「おりゃあ!」
俺は追撃として、斬撃を飛ばして攻撃。
4回ほどでやめ、土煙が舞う中、正面に定規を構えて敵の動きを待つ。
「ほうほう、本当にお強い事で」
土煙が晴れるとーー予想通り、ダメージを受けていないフードが姿を現した。
やっぱり通常攻撃と武器の能力だけじゃダメージ与えられないか。
こいつは困ったもんだ。
「ですが威力は伴ってないですね。寧ろ弱い部類です」
「吸糖するだけが能の種族だからな。悲しいほど能力は低いさ」
「それじゃあやはり私を倒せませんよ?」
「それはどうかな!?」
俺は斬撃を複数回、乱雑に飛ばす。
「ご乱心ですか?」
フードはその場を動く事なく、攻撃を受け続ける。
だがダメージを与えている感じは全くしない。
やはりノーダメージのようだ。
「見苦しいですね!」
それでも攻撃を続ける俺に痺れを切らしたのか、剣に炎を纏わせ攻撃を仕掛けて来る。
炎の分で範囲も増えていたが、ここは持ち前のセンスで回避。
そのまま俺は回避しつつ、目的の場所へと向かう。
俺の斬撃によって崩れてしまった壁の方へ、だ。
「結局逃げるだけですか?」
「……いいや、最強の武器を手に入れただけさ」
俺はその壁の破片を持つと、右手で投擲をする。
フードは同じように、なんともないと攻撃を受けようとするが、突然回避しようと動く。
しかし突然の事、回避しきれずヴェールの部分に当たってしまった。
その瞬間、ヴェールは爆発四散。
そこらへんの塵と同じようになってしまった。
「これなら火力は足りるだろう?」
俺はにぃっと笑いながら言った。
フードは表情を変えないものの、額の血管が浮き出ている。
これは間違いなく怒っておりますなぁ。
「……確かに足りていますね。これは本気でいきませんと」
ーーもっと怒らせて冷静さを削ぎ、隙だらけの時に高威力の技を叩き込む。
正直なところ、これが俺の勝ち筋だ。
勿論石投げを当てて倒してもいいのだが、一度見せてしまった以上全力で避けてくるだろう。
だから如何にかして俺ペースに持っていけるか、が重要になってくる感じと思っていたが。
少し考えが甘かったみたいだった。
「!?」
「さあーー懺悔なさい」
身体強化光主をも超えるスピード。
俺の懐に入って剣による斬撃。
正直防げない。
「自動防御ッ!」
何とか自動防御が発動し、その攻撃は防いだ。
しかしこれはまずい、このままじゃあ本当にやられてしまう。
なんとかして耐えて反撃しないと!
「まだですよ」
また神速からの攻撃。
しかし今度は何とか目で追えていたので、武器で防ぐことができた。
が、それをかい潜っての峰打ち。
俺はその攻撃に当たってしまった。
「かはっ……!」
峰打ちとは言ったが結構痛い!
身体強化使っていると言うのに、HPが半分ちょいしか残っていない。
くっそ、何とか敵の速さに喰らいつかないと!
「ようやく一撃、でもまだです」
またまた攻撃が襲ってくる。
次は……また懐か!
懐、前方、足元、また前方。
敵の行動を予測して何とかくらいついて防いだ。
だが正直辛い。
少しでも行動をミスるか、予測が外れたらゲームオーバーだ!
俺は改めて武器を構えなおーー
【薄情ものー!!】
そうとしたら、イヤホンから大音量なリティルのシャウトが聞こえてきました。
これには思わず右耳から出血大サービス。
「え!?」
フードさんも予期せぬ状況に動きを止めて固まる。
そりゃあ攻撃してないところから血がドビューっと出たらビビるわよな、うん。
俺もびっくりだ。
『ちょっと、耳がキーンとなったじゃない!聞こえなくなったらどうするつもりなのよ!!』
【それは失礼しましたが、でもあんまりでしょう!?私がAIだからって無下にし過ぎじゃ無いですか!】
『私も今色々辛いのよ!回復アイテムなくて困ってるんだから!!』
【だからって私、今絶体絶命なんですよ!?】
だがそんな状況お構いなしに、リティルとシーメルが大大大声量で喧嘩を始める。
右耳はもう聞こえんが、無事な方の左耳がキンキンしてやばい。
というか頭にめっちゃ響いてくる。
おい見ろよ、あんだけ敵意丸出しだった敵さんフードが心配し始めたじゃあない。
「え、これ、大丈夫です?」って、一度立て直したシリアスがそのまま爆破解体して無限の彼方に消えてもうたぞ。
ついでにショウさんの怒りゲージがフルマッハ着火ボンバーですわ。
【人でなしー!!!】
「うるせぇぇぇぇぇ!!!」
俺はプツン、無線機のマイクに向かって怒鳴った。
「こちとらシリアスに戦いしてんのにうるせぇぇぇぇぇ!!黙って何とかしろや!!!!」
そうして無線機を外すと思い切り地面に叩きつけ、何度も何度も踏み潰す。
思わず呼吸が荒くなり、目が血走っているような気がするが、もうどうでもいいわクソが。
「ハァ……ハァ……」
「あの、一旦3分ほど休憩してからやり直しませんか?お気持ち察し致します」
「感謝する……。受けたダメージはそのままにするから、そうして頂きたい……」
こうして俺と敵は休憩する事になりましたとさ、ちゃんちゃん。




