11-4[ナビ子ルート]
私は今、先行してしまったミーシャ様を追い、走っていました。
最初はそれとなく敵が倒れていたのですが、今はちょっと変な風になっています。
というのも通路の半分は焼け焦げ、通路の半分は凍りついているからです。
なので敵も焼死体だったり、凍結していたり、又はその両方だったり。
これ、見る人によってはカウンセリングが必要なレベルな気がするのですが。
私、AIで良かったと素で思いますもの。
これはショウとかには見せられません、絶対酷いですもん。
【!この音は戦闘音!?】
追いついてきたのか、前方に誰かが戦う音がします。
叫び声とか悲鳴とか何も聞こえないので、大丈夫と思いますが少し不安です。
ここは少し急ぎましょう。
私は走るスピードを上げ、どんどん音の方へ近づきます。
心なしか音の間隔も短くなってきている気がしますが、一体どういう事なんでしょう。
私は近距離用の携帯武器、ボタンを押すとレーザータイプの刃が現れる、ビームセイバーを構えます。
そして音の出元である小ホールへと辿り着きました。
【こ、これは!】
そこで見たのは予想していない光景でした。
以前闘技場に現れたKKN教団だかのメンバー。
確かマカオとイモホゲ、そして試合でエイレ様に倒された雑魚ーーげふんげふん、名前は分からない一般な兵士の3名。
確か糖党だけの筈でしたが、KKN教がいるということは、私たちの知らないところで何かが起きたのでしょうか。
その点が気にはなりますが、それ以上に気になる者が一人。
それはミーシャ様。
体の半分が炎に包まれ、体の半分が氷漬け。
荒い息が聞こえますから生きているとわかるものの、遠くから見たら死んでいるのではと間違えられれてもおかしくない状況です。
どうしてこんな事になっているのでしょう。
敵から攻撃を受けたからなのか、なにかの能力によるものなのか。
どちらにせよ、助けなければ!
私は急いでホールの中へと入りました。
【!?】
ですが私は足を止めます。
理由はミーシャ様からただならぬ殺気を感じたから。
これ以上近付けば殺される、そう直感しました。
「それが一番と思うぞ、そこの敵よ」
「正しく同意見だよ、マカオ」
敵2人が私の行動を見て言った。
もしかしたら会話できるかもと思い、思い切って訊ねてみる事にしました。
【この状態は貴方達がしたのですか!?】
「本来なら答える義理はないが……これだけは教えてやろう。“私がソイツを見た時には既にその姿であった”。以上だ、後は言わん」
「やっぱりツンデレじゃあないか、マカオ」
そう言って目線をミーシャ様に移す敵ら。
ふむ、最初からこの状態、ですか。
敵故に嘘ついている可能性は無きにしもあらずですが、そうしたとしてもメリットはありませんからね。
明らかにミーシャ様の様子がおかしいのに「実はこうしたのは俺たちだ」だったとしても、催眠系の技と身体強化技を敵にわざわざかけるのは得策ではないので、いまいち信憑性に欠けますし。
それに武器を見れば分かります。
あの氷と炎は剣から出ているように見えますから。
武器が暴走していると考えるのが妥当でしょう。
ならばあの武器を外させるか、破壊をすればいい?
「埒が開かないから、こちらから活路を見出すとしよう」
私はどのようにすれば武器を離すのか考えていると、敵が武器を持ってミーシャ様に向かっていきます。
こ、これは助けてないと!
いくら暴走状態になっているとはいえ、敵に襲われるのは見過ごせません!
私はハンドガンを用意して、敵を狙おうと狙おうと構えました。
「…………」
ですがーー杞憂、と言って良いのでしょうか。
ミーシャ様は自身の剣、誕炎帝を敵に向けた瞬間、一瞬にして敵全員は灰となりました。
【嘘でしょう……!】
通常の誕炎帝はそこまでの威力を持たない筈です。
燃やす事はできても、灰までには無理だったかと。
それなのになんでしょうこの威力。
この状態が何か関係しているのでしょうか。
「…………!」
私は思わぬ威力に驚いていると、ミーシャ様がこちらを急に振り向いてきました。
これ、もしかしてマズいパターンじゃあないですよね。
今から襲いかかってくるパターンじゃあないですよね!?
そう思っていると、ミーシャ様は誕炎帝をこちらに向けてきました。
【……ッ!】
私は反射的に消滅結界を張りました。
しかしどうも間に合わなかったようで、左手を燃やされてしまいました。
【がぁッ…………ッゥ……!】
消滅結界のおかげで灰になる事はありませんでしたが、それでも十分に威力が高い。
というより痛いです!
なんですか、この痛さは!!
【一旦引かないと!】
私はスモークグレネードを取り出し、ピンを抜いて投げつけます。
音と共に白い煙がホール一帯を包みこみ、辺りはもう見えなくなりました。
よし、早速移動しましょう!
そう思って足を踏み出そうとしますが、またもや足を引っ込めました。
何故なら煙をも晴らす絶対零度の冷気が襲いかかって来たからです。
今回は予想できたので全部防ぐ事ができましたが、それでも寒さが身に染みます。
【全く、おかしな事ばかりになっていますね……!】
自分の凍らせた地面を熱で溶かしながら進むミーシャ様。
これは間違いなくピンチというやつでしょう。
正面は勿論進めませんし、後ろに逃げるとしても恐らく振り向く前にはやられてしまうでしょう。
ならば迎撃?
いや、消滅結界があっても耐えきれなくて消失、灰になるか彫刻になるかの二択になってしまいます。
電波妨害を受けている今、運営にD兵器の申請は出来ませんし……。
ああ、いったいどうすれば!?
「あら、お取り込み中のよう、で?」
そんな絶体絶命なピンチの時、ミーシャ様の背後から起死回生の救いの手が。
なんとシーメルさんが扉を開けて現れたのです!
これは助かりました、連携を取れれば何とかすることもできる筈。
そう思い、期待の眼差しを向けます。
「お邪魔しましたー」
ですが現実は非情すぎます。
何とシーメルさん、そう言いながら扉を閉めてしまいました。
【薄情ものー!!】
私は無線機の回線を繋ぎ、大声でマイクに向かって叫びます。
『ちょっと、耳がキーンとなったじゃない!聞こえなくなったらどうするつもりなのよ!!』
【それは失礼しましたが、でもあんまりでしょう!?私がAIだからって無下にし過ぎじゃ無いですか!】
『私も今色々辛いのよ!回復アイテムなくて困ってるんだから!!』
【だからって私、今絶体絶命なんですよ!?】
ーーと、まぁ口論が始まってしまった訳ですが。
実はこの時、二人とも回線を“全回線”に繋げちゃっていたようで。
簡単に言うとショウや宇佐美さん、狂乱状態のミーシャ様にも聞こえていたみたいです。
結果どうなるかと言うと
『うるせぇぇぇぇぇ!!!』
ショウからの怒りの通信が届きました。
『こちとらシリアスに戦いしてんのにうるせぇぇぇぇぇ!!黙って何とかしろや!!!!』
と、普段以上に!マークを使っているような怒声できました。
これには私たちも耳がキーン。
でも悪いのは間違い無いので、いったん冷静になるよう深呼吸をし、シーメル様のみの回線を繋ぎました。
【先程は申し訳ありません。一旦合流できませんか?】
『別にいいけど……。そういえば狂戦士みたいになっていたミーシャは?』
そういえば先程から反応がありません。
あの感じ的にはもう襲われてもおかしく無いのですが……まさか。
私は改めて目線をまっすぐ、ミーシャ様がいたあたりを見てみます。
するとどうでしょう。
耳を押さえて悶絶しているミーシャ様の姿がありました。
ああ、やっぱり私たちの声は大きかったのですね、反省。
【ミーシャ様、耳がノックアウトKOって感じです】
『あー成る程。じゃあ合流できるわね』
安全と分かった私たちは合流し、念のためミーシャ様の手を束縛した後、情報交換を始めました。
と言ってもこの飛行船にKKN教が乗っていて、糖党と手を組んでいるくらいしかお互い情報がありませんでした。
後はシーメル様の血糖値が上昇しているくらいでしょう。
これに関しては私が緊急用で所持していた回復アイテムで解決いたしました。
「で、これからどうする?」
回復アイテムを使い終わり、柔軟をし始めたシーメル様が聞いてきました。
【そうですね、まずはミーシャ様の回復と正気に戻すのが先かと。後は間違いなくショウが戦闘をしている様子だったので、助太刀していいと思います。宇佐美様と先に合流でもいいと思いますし】
「そうね、確かに先にミーシャを回復させましょう」
私はシーメル様の許可を得てから、ミーシャ様に回復薬を使います。
一応説明なのですが、本来回復薬は本人が使わなければいけないのですが、私の“サポートアビリティ”というスキルにより使うことができます。
私自身、戦闘メインではなくて支援がメインのキャラクターですからね。
今回でも分かった課題ではあるのですが、火力不足が否めないのですよね……。
何とか強化をしたいところです。
「あ、目を覚ましたわね」
回復薬を投与して直後、直ぐにミーシャ様が目を開きます。
傷ーー火傷と凍傷が癒えているところ、回復したようですが、なんだか様子が変です。
暴れるわけでも無く、何かを言うわけでも無く、困惑する様子でも無く。
ただ呆然と虚空を見るだけ。
「……行かなきゃ」
そう突然に短く言ったミーシャ様。
ガバッと急に起き、手の拘束をしたまま、走って奥へと行ってしまいました。
「えっ、どういう事!?」
【と、とにかく追いかけましょう!!】
私たちは休む間も無く、走り去ったミーシャ様を追いかけていきました。




