10-6
「はぁ!?」
俺らの目に映ったもの。
それは中央の採掘機械上空にある、謎の飛行船だった。
こ、これも敵なのだろうか。
いやいやいやいや、絶対違うでしょう。
今まで出てきた敵にロボット系はいないし、何より最初から飛行船はなかった。
となるとこれは何なのだ、って事になるのだが……
「見に行った方がいいかもね」
シーメルが俺の考えを読心してきた。
うーん、確かにそうなのではあるが、なんか別な意味で嫌な予感がするんだよな。
だから正直行きたくないのだが、エイレが心配だというのもある。
「シーメル、ついて来てくれるか?」
「いいわよ、っと」
座っていたシーメルは起き上がり、武器を構える。
俺もミーコさんによって落とされた武器を拾い、中央の方を見る。
「私はミーコさんの面倒みているわ。だから中央よろしく」
「俺もちょっと野暮用ネ。頼んだゾ」
「分かった、行ってくる」
俺とシーメルは中央目指して移動し始めた。
◇
「うっそだろおい」
俺は正直ガッカリしました。
ーー中央採掘機械。
ここはエイレだけが防御を担当していたのだが、特に荒れている訳でもなく、寧ろ被害は少ないと言える。
周りにも敵の亡骸が多くある事を考えるに、一方的に倒していたのだろう。
もちろんだが、それがガッカリした問題はそれじゃあない。
分かってると思うけど飛行船が問題。
でも飛行船は飛行船でも、それに乗っていた奴らが1番の問題なのだ。
いったいどういう状況になってるか分かるかい?
こんなイベントなのに、俺吸糖鬼の宿命の相手、糖党の連中がいるんだぜ?
訳が分からなすぎてガッカリだよね。
「な、何とも言えないわね。もしかしてこれが用意されたエネミーかもだし」
シーメルが読心しながらカバーをはかる。
けど、無理じゃあないかな。
だってあちらこちらで甘いものばっかり食べて、馬鹿騒ぎしているんだもの。
ケーキ食べてココア飲んでるんだよ、追い砂糖しながらさ。
これが糖党じゃなくて何だっていうんだ。
俺は色んな意味で拗ねながら、周りを観察し直す。
というのもここにいるはずのエイレがどこにもいないのだ。
糖党の連中に負けるとは思えないし、かと言ってこの状況はおかし過ぎるし。
一体どこにいるんだ?
そう思っていると、シーメルが俺の肩を叩き、ある場所を指差しする。
俺はその場所を目を凝らしてよく見てみると意外な光景が映し出されていた。
ボロボロの姿で、鎖で繋がれたエイレの姿。
そう、あり得ないと思っていた「糖党に敗北していた」という事実だった。
「嘘だろ」
思わず口に出してしまった俺。
だって俺でも倒せるレベルが多いのに、まさか負けると思わなかったから。
「もしかして近くにいる奴が強いのかもよ?」
「そう、か?」
ぱっと見、フード付きマントをつけた、ただの魔術師系キャラにしか見えないが……
ともかくそいつがもし強かったとしても、今からでも助けに行くべきだ。
「ちょっと待って」
だがそれをシーメルは制した。
「何故!?これ、絶対まずい状況じゃないか!」
「あれ、絶対ヤバい」
また指差しするシーメル。
今度は何だと見るが、俺でもよく分からない。
何を言っているんだと思うのだが、次の瞬間に言っている意味が分かった。
「グルルル………」
先程の巨大狼などの敵が、大勢フード男の後ろからやってきたのだ。
まるで仲間のような振る舞いだ。
これはもしや運営がグル?
それとも実は糖党が糸を引いていた?
なんか頭の処理が追いついていないぞ……
「それは私も。ともかく今出ていったら間違いなくやられてしまうわ。一旦味方を集めましょう」
「同意、だな」
糖党は問題ないがエネミーは脅威だ。
2人はどう考えても辛い。
『という訳で集まれるメンバーは集まって頂戴。ミーコとイーレはその場待機でいいわ』
シーメルは、俺に使っていた電波を送れるアイテムで全員に呼びかける。
数分もしない内にミーシャさん、宇佐美様、リティルのいつメンが集まった。
「ってあれ、他の人は?」
「実は周囲に低級のエネミーが沸き始めまして。そっちの対応をしてくれています」
俺の疑問に、仕事モードに戻ったミーシャさんが教えてくれた。
恐らくwave終了している筈なのになんの表示もされず、敵エネミーが湧く。
それどころか糖党という部外者も紛れ込んでいる。
【因みに、先程から運営に報告しているのですが、妨害を受けているようで繋がりません】
おまけに電波の妨害、か。
これはますますキナ臭くなってきたな。
故に色々考えなければいけないところではあるが、その前にエイレを救出しなければならない。
不幸な事にフード男がエイレを連れて飛行船の中に入っていってしまった。
糖党の団員らも同様に飛行船へと行く。
……逆を言えば見張りはNPCのエネミーのみ。
強敵ではあるが、ユーザーでは無いからまだ増援を呼んだり、連携をとった行動はしない筈。
だったらまだ余裕で勝てる。
「エイレが連れていかれてしまったから急いで倒して行くわよ!」
こうして、よく状況が分からないまま、エイレ奪還作戦が始まったのであった。




