10話おまけ 「エイレの孤軍奮闘記」
丁度全員が分かれた直後、体量のエネミーがこちらに向かってくるのが見える。
様子を見るに中型エネミーの群れと、ゴリラのような大型エネミーが来ているよう。
「さーて、私1人って大見得を切ったのだから頑張らないとね」
私は迫りくる敵の群れを睨みつける。
覚悟を決めた目で。
絶対に守りきるという強い意志を持って。
「行くわよ!!」
私は手を鉄砲のような形にして、集団目掛けて照準を合わせる。
そして出来るだけ引きつけ、丁度いい頃合いを見て技を放つ。
「鬼砲!!」
鬼と名のつく種族が使え、威力が十分高いこの技。
私の武器防具の能力も相まって、更なる高威力と化したこの技は、多くの敵をなぎ倒してくれた。
「でも全員は倒せないか」
できればゴリラさんが来るまでにもっと減らしたかったのだけれど、ここはしょうがない。
もてる技を使って敵を殲滅していこう。
この際、最終waveは考えない。
全力全開で行かないとダメだと思うもの。
「でも何を使おうかしら」
武器はやはり使いたくは無いところ。
鬼砲を使ったから六道輪廻は出来るだけ使いたく無いけど……宝の持ち腐れはダメよね。
「六道輪廻肆獄、畜生!」
その技名を言うと目の前に大きな黒い穴が開く。
そこから色んな獣が混ざった、いわゆるキメラと呼ばれる生物がゆっくりと現れる。
それが1体、4体と数を増やす。
「さぁ地獄に住う弱肉強食を好む獣たちよ、弱き愚者共を貪り屠るがいい!!」
ビシッと前に手を掲げながら言うと、彼らは敵陣に向かって暴れにいった。
六道輪廻の肆獄、畜生道。
人間以外の生物が落とされ、互いに傷付け合う弱肉強食の世界。
この技はそれを再現して作られた技。
たくさんの獣が襲い傷付け殺し合う、敵味方関係なく。
がぶり、がぶり、がぶり。
ぐさり、ぐさり、ぐさり。
気付けばたった1分程で阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
ーーが。
「でもあなたは流石に倒れなかったのね」
振り向くとそこには、大型エネミーのゴリラさんがいた。
しかも無傷の状態で。
これは思っていた以上に苦戦するかもしれないわね。
「さぁ戦いましょう、ゴリラさん」
まず先手を打ったのはゴリラさん。
丸太のように太い両腕を、私目掛けて振り下ろしてくる。
幸いにも攻撃速度がそこまで早くなかった事もあり、簡単に後ろに避ける事ができた。
追撃は……来ないようね。
「単純に“攻撃力と耐久力が高いエネミー”という事かしら?」
私は二撃目が来る前に、ロングソードを二本用意する。
そして「俊足」と「飛翔」の魔法を重ね掛け。
いつぞやの時と同状態となる。
「技名を決めてなかったけど……生命を刈り取る者という意味の『レーベンシュニッター』とでも名付けようかしら」
私はその生命を刈り取る者を使い、ゴリラさんに斬りかかる。
光のような速さで斬撃を2、8、16、32、64と、どんどん重ねて切り刻んでいく。
しかし、本来だったら体がえぐり取られてもいいのだけれど、ゴリラさんは未だ耐え切っている。
というより薄皮一枚程度しか傷付けられていない。
全く、どれだけ硬いのよ!
私は一旦攻撃をやめ、後ろに下がって様子を見る。
やはり薄皮一枚ぐらいしかダメージを与えてないみたい。
「……やっぱり、本気出さなくちゃダメなのね」
私は持っていたロングソードをゴリラさんに投げつける。
けど刺さりもせず、そのまま地面に落ちた。
「ウオォォォォォォッ!」
そのタイミングでゴリラさんはこちらに向かって突進をする。
ーーだがすぐに静止。
ゴリラは動きを止めてしまった。
「“少しだけ”出してあげる」
私は両手を前に突き出し、大声で叫んだ。
「六道輪廻壱獄、天!反転輪廻!!」
そう言うと辺りは光に包まれたと思うと、私とゴリラさんは地面の中にチャポンと沈んだ。
沈んだ先は奥が見えない真っ暗。
しかし自身の体やゴリラさんの姿はよく見え、言わば『全てが黒色で出来ている世界』というような感じ。
初めてこの世界を体験するゴリラさんは、何が起きたのかと困惑している様子。
NPCにしてはいい表情だわ。
「けれど、時間も惜しいからすぐ終わらせるわ」
私は指をパッチンとする。
すると何もないところから、先程のキメラが2体現れ、ゴリラさんに噛み付く。
今度も傷つきはしない、はずであったが
「ガァァァァッ!?」
その牙は敵の腕を噛みちぎった。
「現は幻、幻は現に。全てが“反転する世界”」
無い物を生み出し、強靭な肉体を脆弱な肉体に。
生と死、それ以外は全て変わってしまう。
私の技を除いて。
「六道反転輪廻、終獄。浄土」
唱えた瞬間、地面より巨大な黒い穴が開く。
そこへと私以外のすべての生命は堕ちていった。
抵抗する事もできず、ただただ堕ちるのみ。
ゴリラさんの虚しさを感じる叫びと共に穴は閉じ、私はまたもや地面の中にチャポンと落ちる。
気付けば元の場所に戻っていた。
「けど、やっぱりはね返りも凄いわね、これ」
私はその場にずり落ち、座り込んでしまう。
……全てを反転する反転輪廻は、わたしにも影響を及ぼす。
精神力もだけれど、ダメージなんかも反転。
無傷なら重症に、元気潑剌であれば疲労困憊に。
気付けば体は傷だらけ、目や口から出血。
虫の息となっていた。
「けど……MPは回復したから……機械は大丈夫ね……」
まだ意識は辛うじて残っているし、ここで六道輪廻の畜生道を使っていれば防衛できるだろう。
そう思い安心したーー丁度その時。
突然背中に鈍い痛みを感じたと思うと、激痛が体全身を駆け巡った。
そして私はその痛さに意識を失ってしまったのであった。




