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「申し訳ありません、大丈夫でしたか!?」
ゲームを終了し、現実世界に戻ってきて一番初めに聞こえたのは、スタッフの謝罪の声であった。
恐らく今回の討伐イベントに関してだろうけど、どこまでが不具合でどこまでが仕様なのだろう?
俺はゲーム機から飛び起き、スタッフの方を向いて説明を待つ。
全員がログアウトした段階で、スタッフは説明を始めた。
「今回の討伐イベにて不具合が一点確認されました。お気付きの通り、準備ターン中の攻撃がそれに当たります。誠に申し訳ありません。今回の勝敗はその部分も加味しての判断となりますのでご了承ください」
その内容に大体が渋々納得し「その様な対応ならまぁ……」的な感じになっている様だった。
勿論俺は不満ばかりだ。
マモリさんがいなかった事、明らかにユーザーが動かしていた事、もし違うとしてもアイテムを使用したという事。
後、気にし過ぎかも知れんが“俺狙い、俺を封じる様な動きをする”点もある。
直接攻撃で狙ってこなかったが、全体攻撃で俺を潰していた様に感じるのだ。
これはあくまで予想の域から出ないものである。
けどあの敵の動きはそんな感じがしてならない。
あーモヤモヤするぅ!!
「結果が出た様です。モニターにご注目ください!」
モヤモヤし過ぎて頭をバリバリかいていると、スタッフさんがディスプレイの前に立っていた。
ここにその結果が表示されるのだろう。
少々不機嫌になりながらも、俺はモニターを見つめる。
「ではこれが結果です!!」
その声と共に、モニターに結果が書かれた表が表示された。
内容的にはこんなん。
◆青チーム
討伐タイム 11:23
経過ターン 6ターン
ボーナス 100
◆赤チーム
討伐タイム 18:56
経過ターン 11ターン
ボーナス 0
……あるぇ?
もしかしてスタッフが言ったやつ以外は仕様だったの、か……?
いくら石投げが強いとはいえここまで差が出るとは思えないんだが。
まさか俺らの方が実は弱かった??
わ、分からなくなってきた。
「という訳で青チームの勝利となります。おめでとうございます!」
す、素直に喜べねぇ……
なんか釈然としないし、なんとも言えねえ。
青チームみんなが喜んでいるけど、流石に一緒に喜べる気分じゃない。
でも流石に1人だけすましてる訳にもいかないから、勝ったチームがもらえる特典の発表時、そこで喜んでおこうかね。
密かにどんなのが貰えるか期待しているし。
何が貰えるかなー!!
「なおボーナスですが、まだ配布されていないスサノミズチの素材を使った武器、そして更に経験値が追加で入手できます!」
◇
「はぁぁぁぁぁ……」
俺は超どでかいため息をついた。
「何よ、アンタ勝ったくせにため息ついて。あーあ、限定武器欲しかったなー!」
「羨ましいですよねー!」
と、マニさんと宇佐美様。
……そりゃあ普通のキャラなら大喜びだったろうさ。
でも俺の今のキャラは、普通の武器が全く装備できない、経験値がアホほど必要な吸糖鬼ですのでありがたみがないんです、はい。
経験値は多少嬉しい部類の筈なんだけど、レベルアップしたばかりだからな。
雀の涙程の上昇率しかない。
今回のイベントといい、レベルアップといい、ボーナスといい。
何か歯車ズレているんだよなぁ、ガッカリ。
なおマニら合流後に、「そっちはイベントどうだったの?」と聞いてみたところ
「結構強かったわね。いやーな技が揃ってるから攻撃通らない事が多かったし、単純にHPが多かったし」
「MPを考えながら技を選ばないといけませんでしたよね。後半はちょっと焦っちゃって管理ミスっちゃいました……」
「でもそっちがそこまでかかっていたとは思わなかったわ。だって石投げあったでしょう?使わなかったの?」
との事。
やっぱり誰かが操作した感じではないのか。
うーん、モヤモヤが加速するなぁ。
「そういえば午後はどうするのかしら?」
1人頭抱えている中、マニがお茶を飲みながら聞いてきた。
そういえば言ってなかったが、今は早めの昼食をとっている最中である。
今回も美味しいご飯に舌鼓を打っている訳だが、メンバーはいつメンだけ。
ミーコさん達はちょっと色々あって別テーブルで食べている様だ。
「午後ですか?午後は午後でイベントがあるらしいですが……」
「次はさっきのグループじゃないらしいな」
さっき昼食前に巳渡が軽い説明をしていたんだが、その時に少し触れていた。
と言っても俺と宇佐美様が言ったくらいの情報しかない訳なんだが。
次も新エネミーの討伐だったりするのだろうか。
それか大規模PvPとか?
どちらにせよ楽しみではある。
このモヤモヤも晴れる様なものを期待するとしよう。
「皆様、お食事中失礼いたします」
さてそろそろデザートでも取りに行くかと思った頃、またもや巳渡がマイクを持って現れた。
雰囲気的に次イベの話かな?
そう思ってると、また分厚い書類が配布された。
えー今度はなーんだ?
「防衛戦……?」
「次のイベントの概要を簡単に説明いたします。次は表紙にある通り、エルトラスト防衛戦というイベントになります」
またここから俺の省略。
次はエルトラストという黄金がよく取れる島を舞台とした防衛戦をするらしい。
チームは任意約10名、3チーム程に分かれるとの事。
敷地内にある採掘機械5機、及び動力源を完全に守らないといけないらしい。
1機でも破壊されれば終了、全員が全滅したら終了の結構手厳しいルールだ。
なおwaveに分かれて敵が出現するらしく、最大10wave。
どっちが長くもつか、何機残っているかで勝敗が決まるそう。
「以上で説明を終了します。チームが決まり次第、こちらにいるスタッフにお申し付けください。では以上です」
巳渡は一礼してから、またこの場を後にした。
にしても今度は防衛戦でチームメイト決めれるタイプとは。
さっきのチーム分けは何だったんだ?とは思いつつ、俺は2人に話を振った。
「誰仲間に入れる?」
「あら、私は一緒にやるなんて言ってないんだけどってそんな捨てられている子犬の様な表情はしないで頂戴!!」
「と、とりあえず私たちで3人、後7人ですけど……」
メンバーに入れるとすれば、やはりミーコさん辺りを入れておきたい。
あそこは実力共に申し分ないし、何より俺が慣れている。
「やっぱりそうよねぇ。ミーコのところにでもいきましょうか」
「はい!」
しかしあそこ全員入ったとしても6人、後4人入れなきゃいけない。
こんな時にエイレやマモリさんがいれば楽なんだが……。
「あ、私達もいいですか?」
と思った時、初めて見かける女性2人からお誘いがあった。
「……あなた達初めて見るのだけれどどこの誰?」
マニが超警戒態勢で訊ねる。
そりゃあそうだ、さっきも言ったがこの人達は、このイベント始まってから一度も会ってない、本当の意味での初見さんなのだ。
コミュ障の俺でもわかっている事、一体何者なんだ?
「ここでは大きく言えないのですが、『あなた達の仲間からの使者』といえばご理解いただけます?」
「あー成る程ね」
つまりはエイレ達の使いって訳か、理解。
マニはため息を一つ吐くと、「分かった、了承するわ。にしても大変ですねぇ」と労いながら承諾した。
使いの人は「いえいえ……」と苦笑いしつつ、その場を去るのだった。




