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正直言ったものの何が起きたか理解できなかった。
だって準備ターンの筈なのに敵は攻撃をし、気が付けば自分が地面に伏していたからだ。
あの案内人め、嘘をついたのだろうか?
いや、嘘はついていないかもしれない。
なぜなら“強化の魔法や技を発動したら反撃する”的な感じかもしれないから。
これなら嘘にはならない。
攻撃じゃなくて能力みたいなもんだからね。
まーそもそも「攻撃はしません」って一言も言っていないんだけどさ。
どちらにせよ、とてもいい性格していることになる。
「みんな無事か!?」
あの騎士の人が叫ぶ。
顔だけ動かして見ると、剣を杖にしながら辛うじて立っている騎士の姿が確認できた。
そのまま周りを見てみると、同様に武器を支えにギリギリ立っている人がほとんど。
俺みたいにノックアウトした人はいない様だが、全員麻痺かなんかで動けなくなっている模様。
唯一平然と立っているのは、魔法障壁を張っていたミーコさんだけの様だ。
「とりあえず、私だけでも全体にバフをかけるデース!」
ミーコさんは早速呪文を唱え、最低限の攻撃と防御バフを全体にかける。
それが終わったと同時に『第一ターン』と大きく中央に表示された。
「とりあえず先程の通りに行くぞ!全力で攻撃するのだ!!」
騎士の号令により、みんな各々の最強技を選択している様子。
そして全員の選択が終わると、彼らはその技を全力で龍に繰り出した。
「大切断!」
「アイシクルフォール!」
「ファイヤーレイン!」
「流星剣!」
「竜巻斬り!」
最強技、その言葉通り威力の高い強い技たちが放たれていく。
これだったら普通の敵だったら瞬殺だろうな。
だが一つだけ。
リタイヤして安全にかつ冷静に状況を見れる身として言いたい事がある。
おそらく攻撃が通らないと思うぞ?
「なっ……!?」
攻撃による煙幕が晴れると、そこには無傷のスサノミズチがいた。
どんな攻撃でも傷は、ダメージは与えられず。
平然と立つ姿に一部ユーザーが絶望の表情に染まる。
『第二ターン』
「ま、まだだ!それぞれ攻めていくぞ!サポートできる奴は出来るだけ強化を頼む!!」
始まった第二ターン、どうやらバフをかけてからコスパの良い技で攻める作戦の様だ。
しかしどうかな、俺の予想が正しければまた無意味に終わる気がする。
『スサノミズチの攻撃、雷撃波』
「先制ッだとォ!?」
今度はスサノミズチの口元に雷が集結し、ビームの様に複数の雷が放たれた。
その雷は幸か不幸か“前衛キャラのみ”に向かっていく。
多くのキャラはなす術なく攻撃に当たり、その高威力に怯んでしまっていた。
「バッ、バフをかけますよ!」
逃れた後衛の魔術師らが、全体にバフをかけようと呪文を唱え始めた。
なんとか無事かける事ができた様だが、ここで彼らには予想できない事が起こる。
『スサノミズチの攻撃、消滅波』
また口から、今度は風の様なものが集まり、それを全体的に吹きつけた。
この消滅波、威力が低い風の攻撃技なのだが、とても強い効果がある。
それは全てのバフの無効化。
先程苦労してかけた呪文は全て無駄になったという訳だ。
……ここに来て一つ分かった事がある。
このスサノミズチという敵はユーザーが操作している点だ。
高度なAIといえど、相手の感情やセリフを聞いて行動を選択し、ユーザーにとって最も嫌がる攻撃をするってのは難しいものだ。
何より最初の攻撃、あれがどうしても引っかかる。
一番初めはあの案内人が性根悪いと思っていたが、それをする事にメリットがないと思い直した。
しかと準備ターンがあると言ったのだ、そのターンにカウンター系の能力とはいえ発動するだろうか?
もし隠していた場合、クレームになる事は間違い無いのにだ。
個人的な感情、例えばどうしても赤チームが勝って欲しいから事に及んだ、とも考えられるがそれは自分の首を締めるだけ。
国主催のイベントで身勝手な事をしたら、重大な罰を受けるのは必然。
例え国が寛大だとしても減給どころの騒ぎじゃ無いのは間違いない。
故にあのスサノミズチには誰かが操作してると考える。
『第三ターン』
「クソォ!なんとしても倒すぞォ!!」
騎士が叫びながら剣を振ろうとする。
しかしこれはターン制、素早さが高いものから動く事ができる。
攻撃は出来ず逆に攻撃されてしまった。
『スサノミズチの攻撃、雷一閃』
光が一瞬通ったと思うと、数名のキャラに雷が落ち、その身を焼き焦がした。
この攻撃により約半数が脱落、残り10人以下となってしまった。
「ど、どうすれば勝てるっスかー!?」
思わずブンコさんが弱音を吐く。
それはそうだろう、こんな状態じゃあ勝てる気はしない。
しかも相手がAIじゃ無いのであれば、だ。
人間が応用効かせて動かしていたら、こんな強いエネミー故に勝てる訳ない。
しかし、しかしだ。
相手が人間ならば使える戦術というものもある。
それは俺の得意な読み合いとブラフ。
こと対人戦で、コミュニケーション以外は強い俺にはもってこいの状況だ。
さーて、そろそろ逆転の一手でも打ちますかなぁ!!
『スサノミズチの攻撃、消滅波』
『第四ターン』
バフが消され、新しいターンになった時、俺は深呼吸をいっぱいした後、大声を出した。
「みんなに話したい事がある!集まってくれないか!?」
みんなが驚き戸惑うものの、打つ手が思い浮かばないメンバーは俺の所に集まってくれた。
内訳は……魔術師系がミーコさん含め3人と、後方支援系がブンコさん1人。
前衛があの騎士の人ともう1人って感じか。
うん、これなら十分に討伐ができる。
「い、一体何だというのだ……」
明らかに疲弊した表情で俺を見つめる騎士の人。
俺は勇気を振り絞り、みんなに向け話をする。
「最初に脱落してしまった故に、冷静に戦況を見る事ができたんだ。だからそれを伝えたかった」
まず現状から判断するスサノミズチの技構成は攻撃技3つ、補助技3つ。
先制攻撃できる「地走り」、全体攻撃の「雷撃波」、複数の敵も狙える高威力技「雷一閃」
魔法系の技を防ぐ「電磁障壁」、分身を出す事で物理攻撃を無効化する「風影」、敵のバフを解除する「消滅波」
俺の予感が正しければ後、単体攻撃で最強系の技一つと、HPが徐々に回復する技系統があると思う。
それを踏まえて1ターン目、攻撃が防がれたのは電磁障壁と風影のせいだった。
スサノミズチは素で素早さが高いのだろう、みんなが行動する前に回避系の技を全掛けしたのだ。
先手必勝、短期決戦が信条だった俺らの考えを読み取り予測をして。
2ターン目も3ターン目も同様、奴の予想通りに展開していった。
「だからこそこっちも敵の動きを読む。おそらく前衛に単体攻撃をし、流れを確実に潰してくると予想する。この話し合いで多少敵の行動が変わるだろうが、それでもその考えを軸に一つしたい事がある」
「何がしたいんだ?」
「それはーー」
◇
作戦は伝えた、みんな乗り気になってくれた、そして何より俺が勇気を出して伝える事ができた。
その事が何より嬉しい。
これは後でマニに自慢するとしよう。
そして上手く事が進んで討伐できたら……めっちゃ自慢してやるぜ!
『スサノミズチの攻撃』
「皆さん、宜しくお願いします!!」




