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「こちらが会場となります」
ブンコさんについて行くと、とある会議室のような部屋の前へと辿り着いた。
扉は二つ、それぞれ例の紋章が書かれた張り紙が貼ってある。
「今から該当する部屋に入り、案内に従ってゲームを起動してください。私はここで失礼いたします」
そう言って巳渡は一礼してから奥に消え、代わりに中から別なスタッフが扉を開けてきた。
「では青チームの方、こちらへどうぞ」
案内された通り入ると、そこはちょっとワクワクする男の子大好き部屋となっていた。
だってすごいメカメカしいんだもん!
下は鉄の床、壁には配線なんかもある近未来な感じ。
ディスプレイが一個、大きいのがあって色々なデータが映し出されている。
そして何よりも人数分ある謎の装置!
嫌な例えだけど、棺みたいな機械があってゴウンゴウン言っている。
間違いない、これが“ゲーム機”だ。
こんなタイプ、今まで見た事ないけど最新機かな?
「皆様ようこそいらっしゃいました!今から簡単に最新ゲーム機の説明をしてから実際にプレイしていただきたいと思います。ゲーム機にネームプレートがございますので、自身の名前のある機械の隣にお立ちください」
確かに近くのを確認すると名前が書いてある。
どうやらアイウエオ順っぽいから……俺はあそこかな?
「お、あったあった」
自分の名前が書いてあるゲーム機、何とも嬉しいじゃあないか……!
最大限の笑顔になりながら、俺はゲーム機を軽く物色することにした。
よし、まずは中をこっそり確認してみるか。
こっそりちょっと開けて見てみると、中は人が1人入れるくらいの大きさ。
周りは触ってみた感じシリコン製。
上蓋にいつも使ってるVRの機械発見。
後は手のところに色々あるところをふまえると、心拍数なんかを計測することもできそうだ。
スタッフの話ガン無視で見ているけど、どうやらまるで現実にいるかのように錯覚する、フルダイブ型という最新型らしい。(そこだけ聞こえた)
確かにこいつは凄そうだ。
楽しみでしょうがないぞ!!
「……以上で話は終了です。質問等がない場合、そのまま各機に搭乗してください。間も無くイベント開始いたします!」
よっしゃ、じゃあ早速入るか!
俺はだいたいこうだろうなーという予想の元準備を始める。
まずボタン押して蓋開けて、中に入って……って柔らかっ!
凄いブニブニしてて気持ちいい!
これだったら事故とかあっても大丈夫そうだな、なんて。
閑話休題。
んでゴーグル付けて、指の機械をはめて、指先にある起動ボタンをスイッチオン!!
すると蓋がゆっくり閉まり、ゲーム起動のアナウンスが流れる。
うん、どうやらあっていたようだ。
こいつは楽しみだぜぇー!
凄いワクワク感の中、俺の意識は電子の世界へと落ちていった。
◇
目が覚めるとそこは知らない部屋の中だった。
内装は窓がない全面真っ白という殺風景な部屋で、扉一つとスピーカーが一台あるだけだった。
むーん、早速戦闘かと思ったのだがなぁ。
雰囲気ない待機場所というのもあって、とってもガッカリ。
『皆様全員ログインしましたね』
スピーカーから、先程の案内人の声がする。
おそらくゲーム外、現実世界の部屋から見ているんだろうけど。
マイクあったっけなー、なんてよく分からんこと考えながら耳を傾けた。
『第一イベント開始まで後5分となります。それまで大体の説明と作戦タイムとなります。ではまず今イベントの説明を開始いたしましょう』
ーーということで案の定、説明は俺からしよう。
今回は先程説明があった通り、大型エネミーの討伐RTAである。
討伐対象は「雷帝龍スサノミズチ」
風や雷を使う龍タイプの敵だそうだ。
エネミーに関してはそれしか説明されず、後は仕様の話のみ。
武器防具は自前、アイテムは運営が用意した物。
内訳は回復剤×5、全体回復剤×1、状態回復剤×3、蘇生薬×1って感じ。
下準備ターンを経て戦闘が開始、討伐した時点で終了。
通常の仕様通りターン制バトル、死亡してもリスポーンせずその場にとどまる。
死亡時も話す事ができ、先述の蘇生アイテムは使えばすぐ復帰できるそう。
最後に、両チーム戦闘後、経過ターンと討伐時間を加味して勝敗を決定。
勝ったチームにはボーナスつくとのことなので、是非積極的に戦って欲しいとのお願いだった。
んで、作戦会議場面。
「3分しかない、単刀直入に聞く。有効打、持っている奴はいるか?」
明らかに前衛騎士って感じの重装備の人が全体に訊ねた。
「私は対ヒューマンは強いけど、ビッグモンスターだと微妙デース。精々サポートが関のマウンテンってとこネ」
「自分は銃火器メインっスけど、場合によってはサポートメインになるかもっス。暴風で壁とか作られたら銃弾無理っスから」
その問いに対し、ミーコさんとブンコさんは丁寧に返答する。
他の面々もこれだという有効打は無いようで、みんな苦い顔をしながら返答した。
「君はどうだい?」
そんな感じでついに俺の番が来たようですが、「あ、うう……」なんて言っていたら時間になっちゃったようで。
『開始まで10カウント!』
というアナウンスが流れてしまった。
「……しょうがない、仕切るようで悪いが、各自最大の技を打ち込んでくれ!先手必勝、早期決着だ!!」
そう言って騎士様は剣を構える。
他面々も納得してるようで、それぞれ戦闘の準備に備え始めた。
しゃあない、俺も定規を構えるか。
「って、あれ。マモリさんは?」
ふと周りを見たら、マモリさんらしい人影が無い。
現実世界の部屋までいたの確認したんだけど、そういえば最初からゲーム上で見ていない。
彼女なら誕炎帝・操水皇という有効打、もとい強武器があるから主力になってもらいたかったのに……なんでいないんだ?
バグなのか、仕様なのか、はたまた誰かの意思なのか。
その事を考えている間に、カウントは0となっていた。
『討伐開始ッ!!』
ーーその声と共に、一気に視界が開ける。
黒い雷雲。
削り取られた岩山。
奈落のような崖。
そんなフィールドに奴はいた。
今回の討伐対象、「雷帝龍スサノミズチ」
幻獣、麒麟の様な姿をし、2メートルはある電気走る角を持ち。
雷の様な迫力のある4対の翼を持ち、帯電した尾を振り回す。
正に雷帝という名称がお似合いのドラゴンが。
「各自、出来るだけ全員にバフをかけてくれ!!」
騎士様の声に合わせ、各自身体強化の準備やらを始めた。
さて、俺も身体強化しようかな。
ーーなんて思った時、俺はなんとも言えない悪寒に襲われた。
理不尽で最悪な目に遭う時、必ず起きていたあの“嫌な”悪寒が。
「みんな止めろッ!!」
俺は柄にもなく大声を出して叫んだ。
しかし……間に合わなかった。
それは誰かが強化の魔法を使った時。
スサノミズチの足元に電気が集まったと思うと、それが一気に放出。
『スサノミズチのカウンター先制攻撃、地走り』
刃の様に激しい電流が、フィールド全体を駆け抜け、俺らを襲った。




