9-1
皆様方、おはようございます。
正統派コミュ障主人公、ショウでございます。
こちらの現時刻は早朝6時。
天気は察するに雲一つない快晴となっています。
いいねぇ、快晴。
心も晴れ渡るような、清々しい気持ちになれますねぇ。
それにこの、朝の澄んだ森林の空気!
こいつはもうリラックス効果間違いないでしょう。
「……って思いませんか、屍様方」
俺はくるりと後ろを向いて言う。
すると、うぁぁぃ……みたいな感じに唸り声を上げる3つの声。
そう、女子組の皆様方です。
何故こうなってるかなんて知らないけど予想はできる。
多分夜中まで起きていたんじゃないか、とね。
深夜12時とかじゃなくて、26時とか27時って深夜帯のテレビ番組でよくある様な感じの時間まで。
だって目の下のクマ、酷いもん。
というか目も真っ赤っかに充血している。
これ、今日のイベント完遂できるのか?
一抹の不安を感じるが、まぁ何とかやってもらおう。
因みに余談。
俺が寝不足じゃない理由。
メンタルブレイクして気絶するように早々と寝てしまったから。
元々寝不足だったって事もあったんだろうけど、とても熟睡させて戴きました。
因みに熟睡というとエイレも同様にがっつり寝ていた。
お子様のエイレは、多分普通に眠くなって寝たんだろう。
凄く気持ち良さげに起きている。
朝が弱いのかボケーっとはしているけれど、熟睡したって感じだし。
やっぱり睡眠は大事だよな、うん。
ボロボロのメンタルも治してくれる。
「起きたんだったら早くいこーぜ」
「ちょっと待って欲しいのだけれど……」
「目が痛いです……」
「き、キノコがあれば……」
「んにゅ……もうじかんー?」
「そう、だから行くぞ!」
SAN値全回復の俺は、精神力皆無となりかけの女子‘sとねむねむ王女を、食事会場に無理やり連れて行くのであった。
◇
「ご馳走さま!!」
元気よく食後の挨拶をしたのは、意外に意外この俺ショウであった。
自分でも驚く位、なんか変なテンションになってるんだけど、特に気にする事ではあるまい。
この後のイベントに期待で胸を膨らませてるだけだろう。
うん、そうに違いない。
因みにマニと宇佐美様はへばったまま。
テーブルに伏してちまちまと食べている。
エイレとマモリさんは昨日同様……でいいのか分からないが別室で食事をとってるようだ。
別れ際ですっかり目を覚ましたエイレが「また後で」なんて言っていたが。
2人がイベに参加するのは間違いないのだろうが、こうも存在を隠してるようにしてると不安を感じる。
そりゃあ、王族が参加します!って言ったり、一緒に食事ーなんてなったら大事になるのは間違いない。
だからイベ開始のギリギリまで黙ってるんだろうけど、これはあくまで予想。
結局どうなるかは俺には分からない。
まぁエイレの事だ、いつものメンバーで出来るよう特権使ってしそうな気もする。
そこも含め少し楽しみにしておこう。
「皆様、ご静粛にお願いします」
今後にワクワクしつつ食後のコーヒーを楽しんでいると、マイクの音声が前方から聞こえてきた。
この声から察するに昨日の巳渡という人だろう。
ならば待ちに待ったイベントの説明に違いない。
なーんて思っているとやはり説明のようで、他のスタッフが書類を全員に配っていった。
渡された書類の表紙を見ると『大型魔物協力討伐クエスト』とある。
という事は言葉の通り協力系のイベントだろう。
……先にめくって見ちゃお。
そう思って開こうとしたら、俺の思考でも読んでるのかって思うタイミングで説明し始めた。
「これより、本日のイベントについて軽くお話しいたします。食事しながらで結構ですのでご静聴下さい」
というわけで説明が始まったが、今回も省略してお話しよう。
一応それほど長くなかったが、省略しても良い部分が結構あったからな。
つーことで説明。
・今日は大型の魔物を協力して討伐する。
・招待者を半分の2チームに分けRTA、どちらが早く討伐できるかを競う。
・勝ったチームのメンバーにポイントが配布される。なおポイントの概要はまた後で説明。
という感じ。
んで、俺にとっては超重要なチーム決めに関しては
「チームの分け方ですが、資料の最終ページに色分けしてあります。その色が所属するチームとなりますのでお間違えの無いよう御気をつけ下さい」
との事だった。
資料の最終ページかー、なんて頭の中で呟きながら、俺は早速確認をする。
そこには青色で書かれた盾と竜の紋章があった。
つまるところ俺は青チームって事かな?
「みんなはどうだった?俺は青チームっぽい」
未だ続くウキウキテンションを生かして、他の面々に確認をしてみる。
「お生憎、私は赤だわ」
「私も赤のようですね」
そう言い、マニと宇佐美様が自分の資料を俺に見せながら答えた。
もう一方のグループであろう、赤色の剣と獅子の紋章を。
……マジかよ、2人と離れなきゃならないのか。
それは個人的に辛すぎるぞ、特にマニと離れるのは。
露骨に嫌そうな顔をしてると、マニが俺をキッと睨む。
しょうがない、何とか頑張ってみよう!(勿論頑張れる程度に)
「それでは一旦チームに分かれたいと思います。まだ食事が終わっていない方もご協力お願いいたします。では左右の該当する看板前にお越しください」
そう巳渡が言ってからおおよそ3分、綺麗に二つのグループに分かれていた。
周囲を確認する限り、見知った顔は大分あっちの赤チームに行ってるようだ。
まじつらたん。
「ショウさん、残念そうにしないで下さいっス!」
「そうネ!ミー達もいるから安心するネ!!」
余程絶望的な表情をしていたのか、同チームになっていたブンコさんとミーコさんが駆け寄ってきてくれた。
うん、有難いがまだ慣れきっていないから、ちょっと精神がヤバい。
俺は頷きだけして感謝の意志だけ見せると、そのまま話に入ってるか入ってないかの微妙なラインで2人の側につく。
ちょっと精神がーとは言ったが、完全初対面よりはまだ良いからね。
ボッチもボッチで辛いし、何よりマニに睨まれそうである。
色々と頑張りたいが、まずはここを安全基地としよう。
1人納得しつつ、ブンコさんとミーコさんの話題に耳を傾けた。
「にしても強いヒト、あっちに固まっちゃったっスねー。これは結構辛いかもっスよ」
「五英神のイイレちゃんに、ショウチームの宇佐美、マニ。後は昨日の覗き魔男。他にもストロングなユーザーが沢山ネ」
「対してこっちは人数も少ないっスからね。いけるっスかね……」
確かに強そうなメンバーは大体あちらに行っている感じはする。
ただそれより気になるのは、こっちチームの人数が若干少ない事だ。
まぁ恐らくエイレとマモリさんがこのチームに入ってくるんだろうけど。
「ショウ!ユーはどう思う?この状況をネ」
なんて予想しているとミーコさんがこちらに話を振ってきた。
思わず「エイレとかが入りますよ」と言いかけそうになるがグッと堪える。
混乱避けの為に言っていないのだろうから、俺が言ってしまったら問題になってしまう。
ほんと危ない危ない、うっかりうっかり。
気を付けて、気さくにかつ素晴らしい返答をするとしよう。
「あ……何か……ボーナスとか、つくんじゃあ……かな」
はい、気さくになんか無理でした!
むしろコミュ障大放出な返事をしてしまった。
今日テンションバリ高だからいけると思ったのだが……無念。
って、相手チームから冷たい視線を感じるぞ。
怖いよー約1名の視線ー。
「ふむ、ボーナス……。グッドなボーナスがあるといいけどネェ」
「強い武器とかの配布っスかね?それだと確かに助かるっス!」
お、意外と内容は良かったようで話が進んだぞ。
へーい、ザマァみろうー。
俺だってやる時はこんな良いコメントできるんだぞう!
「……ッチッ!!」
ごめんなさい、調子にのりましたので反省してちゃんとしていきたいと思います。
「ではチーム分けが終了しましたので、これから早速……といきたいところですが」
と、まぁそういう感じでみんなで何が起きるか予想をしていると、なんとも言えないタイミングで巳渡が話し始めた。
間が悪いって感じだったが、それよりもその後の言葉が気になる。
このメンバーにエイレとマモリさんが加入したら、まだ勝てる見込みはあるだろう。
もし違うとしてもブンコさんが言っていた「強い武器」なんてものが来てもありがたい。
さあ、どうなんだ?
「私も見させていただきます」
--奥の扉からその声と現れたのは、正しく女王だった。
いや、正確には“王女”なのだろうが。
立ち振る舞い、雰囲気、声色。
全てに置いて完璧と言える王族の姿であった。
これが仕事モードのエイレ、か。
数時間前までふにゃふにゃしていた人物と同じだと到底思えない。
煌びやかで立派な白ドレスを着ている事もあってか、凄く大人びてみえる。
これには様を付けたくなりますな。
「……ご存知かと思いますが、こちらはエイレルベール・フォン・ルディア・オータク二世様。今回イベントのゲストでございます」
巳渡がエイレの方を向き紹介をした。
だがみんな俺と同じ状態、言うならばそのカリスマに圧倒されているようで、口ぽかーんとして呆けている。
1分くらい経ち、ようやく我に返ったのか徐々に拍手が起こり、すぐ盛大な歓声に包まれた。
その熱狂が一通り落ち着いた後、巳渡は再度話を進める。
「エイレルベール様、オータク二世はこの後の試合をご見学なさるとのことです。また、人数が足りない青チームにはR.P.Gのエース騎士、子岸が入りますので了承ください」
いつの間にかエイレの隣に立っていたマモリさんが一礼をする。
マモリさんも昨日の時みたいな仕事モードのようで、普段のやられキノコジャンキーを想像できない凛々しい雰囲気であった。
うん、本当に凛々しい。
他に適切な言葉が思い浮かばないくらい、その言葉がよく似合う。
キリッとした表情、背筋がピンと伸び、ただ主君を守らんとするその姿。
正直憧れるわ、うん、まじで。
そんな仕事モードマモリさんは、その様に言いつつ王女から離れ、こちらのチームに合流した。
うおぅ、まだ凛々しくしてる。
てっきり離れたらいつも通りになるかと思ったんだが、本当普段から想像できない。
「其方らの活躍を楽しみにしています。ではまた後ほどお会いしましょう」
いつ粗を出すかなーとマモリさんを凝視していたら、いつの間にかエイレは奥に下がっていった。
というか巳渡もいない。
「ショウさーん、いくっスよー?」
置いてけぼりになったかな、と思ったらブンコさんが肩を叩いてくれた。
思わずびっくりして払い除けようとしたが、なんとか耐える。
「あ、ああ。い、今行きます」
どうやら移動のようだし、このままついていくとしよう。




