8-6 おまけ 「枕投げ大会後」「突撃エイレ小隊」
◇枕投げ大会後◇
「どりゃああ!!」
「ぐえっぷ!!」
私は全力をもって、渾身のかかと落としをショウに叩き込んだ。
ショウは2、3歩下がったかと思うと、そのまま地にひれ伏し気を失ってしまった。
ーーそもそもなんでこんなことをしているのか。
それはなんやかんやで始まった枕投げ大会のせいだ。
一応みんな気遣って、うつ伏せってる私に枕を当てない様にしてくれていたけど。
うおーだの、とりゃーだの叫んでやってりゃあねぇ……うるさくてイライラマックスよ。
乗り気じゃなかったショウが一番ノリノリで騒いでいたのも癪に触ったし。
だからついやっちゃったの。
反省も後悔もしてないし、むしろスッキリとしたわ。
なおショウ以外の面々は、枕で頭を強撃しておいた。
気は失って無い様だけど、結構いい具合に入ったから相当悶えていたわ。
「……ふぅ、にしても暑いわねぇ」
枕投げしていた熱気なのか部屋が相当暑くなっていた。
寝ていただけの私が汗かくくらいに。
このまま寝るのも嫌だし、シャワーかお風呂でも行こうかな?
なんて考えていると、へばっていたエイレがムクリと顔だけ起こし、私の方を見てきた。
「な、なによ」
じーっと見つめてくるエイレ。
不気味に感じて思わずそう言ってしまったが特に反応を見せない。
アレかしら、やっぱり頭叩いたのが不味かったのかしら?
ちょっと不安になってきた私だったが、次のエイレの淡々とした言葉を聞いて、杞憂だったと分かった。
「温泉、入る?」
「お、温泉?」
拍子抜けした事もあり、情けない声でエイレに聞き返す。
「そう、温泉。実は貸切を借りてるんだけど、メーワクかけちゃったしマニに使ってもらおうかと」
てっきりツッコミが来るかと思ったけど、相変わらず淡々とエイレは言うだけだった。
「貸切かぁ……。本当にいいの?」
「さっきも言った通りメーワクかけちゃったから。ゆっくり入ってきてちょうだいな」
本当に淡々と感情なしに言うエイレ。
……うーん、ショウなら何考えているか一発で分かるんだけど、流石にこれじゃあ読めないな。
あからさまに怪しい事は確実なんだけど。
まぁでも折角のお誘い、罠だとしても断るのは野暮でしょう。
「分かったわ、そこに行ってみる。ありがとうね」
「どういたしまして。そのままエレベーターで最上階、屋上に行けばそこに着くから」
それを聞いて、私は早速お風呂の準備をして、その温泉へと向かった。
◇突撃エイレ小隊◇
「どうやら行ったようね……」
私は温泉に行くマニを見送った後、未だへばっている2人、マモリとエリスを揺さぶって起こす。
「ほら、2人。私の手を煩わせないでくれない?」
「う、うーん。枕なのに頭がちょっと痛い……」
「まさか一般人にやられるとは不覚……」
起きないのでそろそろビンタでもしようかと考えた時、2人はむくりと起き上がった。
私は心の中で舌打ちをしつつ、彼女らに無言で無線機を渡した。
「エイレ様、これはなんですか?」
エリスが無線機を持って首を傾げつつ聞いてくる。
勿論「この物体は何か」ではなく「なぜ渡したのか」という理由を聞いてるのだと思うのだけれど。
だとしてもやっぱり抜けてるのねぇ、エリスは。
私はマモリに合図をし、解説をお願いした。
「先程メールで送ったと思うのですが、もう一度ご説明いたします。ショウ様とマニ様は明らかに友達以上のご関係なのですが、一線を越えようとはいたしません。接吻をしたり取っ組み合っているところを見るに、好意はあるはずというエイレ様の見解なのですが、我々で彼らを後押ししてしまおうかと企画したのです。その具体的内容はメールにて書かれていたと思いますよ」
「メール……あ、これかな」
エリスはスマホを取り出し確認、1つの文章を私に見せる。
それは紛れもなく私が送ったメールであった。
「それであってるんだけど……まさか貴女見ていなかったの?」
「丁度仕事をしていたものですから、さっくりとしか見ていませんでした。……ごめんなさい、しっかりと確認していれば」
私の少々怒ったような質問に、エリスは申し訳ない表情をしつつ頭を下げた。
「仕事ならしょうがないわ。けど、有無を言わせず手伝ってもらうからそこはよろしく」
流石に素直に謝られもどかしくなった私は、エリスの肩を叩き笑顔を向ける。
エリスは私の表情にホッと一安心した様子で、同じく笑顔で返した。
「と言うわけで早速やっていくわよ。くっつけ作戦!」
仕切り直し、と言わんばかりに私は片腕を挙げながら高々と宣言した。
いや、言わんばかりというか、正しくその気持ちを込めてしたのだけれど。
気分が盛り下がっていたから、これくらいしないと高揚しないし、私が。
「といってもどうやるんですか?あの2人、その様な雰囲気が無いように思えるのですが……」
徐々にテンションを上げて行く中、またもやエリスが質問をしてくる。
確かにごもっともな質問だけれど、流石に萎える感じがするわ。
だからといって妥協しないで全力で応えるのが私の良い所。
にやり、と不敵な笑みを浮かべて、エリスにこう言った。
「ラッキースケベな吊り橋・ロマンティック効果よ!」
『つまりは、いい雰囲気の場所に2人を押し込めてハプニング効果で進展させましょう、って事ですか』
若干ため息混じりに、エリスは無線を流した。
--現在私達は各自持ち場に着いて、ショウが温泉まで到着するのを待っているところである。
私は勿論スニーキングミッション中、ショウの後ろを着いて行っている所。
といっても、今彼がエレベーターに乗ってしまったので、できない状況にあるのだけれど。
まぁ後は先回りしたガード3に実況を頼むとしましょう。
……にしても我ながらとても良いアイディアね。
これだけお膳立てすればいい加減くっついちゃうでしょう。
この作戦の準備も完璧だし、失敗する気がしないわ。
『エイレ様』
自分も業務用エレベーターで屋上に向かう中、マモリから連絡が入る。
もしかして到着かしら?
そう思った時には、私の目でもショウを発見することができた。
ふむふむ……よしよし。
ショウは何の疑いなく部屋に入っていったわ。
後は彼らの進展を見守るだけ!
室内の音声を拾って中の様子を聞いてこうじゃない!!
5ふんご
「えっぐ……えっぐ……」
「ひっぐ……ひっぐ……」
「…………」
「なぁ、お前ら3人組。今俺の目の前で正座をしている訳だが。何かいうことは無いかな?」
「とってもいい雰囲気でなげだー!!」
「ロマンティックでずぅー!!」
「返す言葉もありません。色々と申し訳ないです」
その後、私達はショウからゲンコツを一発、仲良く貰うのであった。




