8-2
久々の、秘技次話移動リセット。
仕切り直しといきましょう。
さて、現在の状況はこんな感じ。
顔が真っ赤っかなままの俺。
俺の腕にしがみつき、同じく顔が赤いマニ。
その様子を恍惚の表情で眺めている宇佐美様。
はい、状況は良くなっておりません、はい。
だが、もうここまできたらやけくそで進めてしまおう、うん。
……さて、周囲の状況としては色んな年代の方がまばらにいると言う感じだ。
冒頭言った通り、室内に20人以上はいると思う。
後言うべきことは……そうそう、そろそろ集合時間になると言うことくらいか。
11時集合で、現時刻10時58分。
一体何が行われるのだろう。
どんな事が起きるか、想像を膨らませているうちに時間になった。
「皆さまお揃いでしょうか?」
定刻ぴったしに現れたのは、エイレでもミーシャさんでも無い女性だった。
ショートボブって言うんだっけ、そんな髪型の茶色の毛色で、黒のスーツでビシッと決めていた。
振る舞いや雰囲気がザ・キャリアウーマンって感じ。
……正直苦手タイプ、と言うよりも俺のトラウマと言うべきか。
運営の人なんだろうけど、マニが抱きついてなきゃガタガタ震えていたかもしれない。
少なり震えてはいるのだろうけど。
「……だいたい揃っている様ですね。では今から今回の概要をお話し致しますので、少々お待ちください」
そう言うと裏手から他のスタッフがぞろぞろと現れ、僅か数分足らずで椅子を綺麗に並べた。
「ではお座りください。全員が着席致しましたら書類をお渡しします」
相変わらず淡々と説明する女性。
俺らは一番後ろ、かつ端の席を取り、俺、マニ、宇佐美様の順に座った。
それと同時に椅子を用意してくれたスタッフが近付き、書類を1つ1つ丁寧に配ってくれた。
なお受け取った書類の表紙には「イベントのしおり」と書かれてあった。
早速中身を確認しようとした時、女性が全員の前に立ち、資料を開きながら話し始めた。
「ではこれより説明を始めます。遅れましたが、私はオータク二世の秘書を勤めさせていただたいております、巳渡ミハリと申します。以後お見知り置きを」
そう自己紹介をした巳渡という女性。
オータク二世という事はエイレの秘書って事だな。
……ミーシャさんの他にも側近いたのか。
まぁ王女だから側近は多くいるんだろうけど、あのエイレの秘書がこんな人物だったとは予想外だ。
そう考えているうちに、気付けば巳渡は説明の方に入っていた。
おおっといけない、話を聞いておかねば色んな意味で不安だ。
という事でそれからは話をまともに聞いていたわけだが、説明は予想以上に長く2時間とかかった。
内容を全て載せるとめんど……ゲフンゲフン、読者の皆様に負担がかかってしまう為、詳しい内容は省略。
要点だけまとめると
・この会場内、旅館にてイベントを数日にわたって行う。なお宿泊はこの旅館で、金額は全て国で負担する。
・1日目は説明会、及び親睦会。2日目以降から新イベント・新エネミー討伐体験会をする。最終日に一般の方を入れてのリアイベを開催。
・新イベントについては翌日お伝えする。なお優勝だかすると豪華景品がもらえるとの事。
後は旅館での過ごし方だったり、各施設の利用なんかといったルールの確認だった。
そう、こんな中身なのに説明は2時間。
もちろん全部終わる頃、俺らはもうヘトヘト状態。
だが話をしていた当の本人は違うようで、未だしゃんと背筋を伸ばし立っていた。
「以上で説明を終えます。なおこのまま昼の親睦会に移ります。料理をお出し致しますので、是非交流を図りながらお召し上がりくださいませ」
そう言い終えた後、巳渡がその場で美しい一礼をし、同時に料理が並んだテーブルが運び込まれ、あっという間にビュッフェスタイルの会場ができた。
「……ふぅ、ようやくひと段落ついたか」
俺もご飯と言うことで、張り詰めた状況から少し気を緩める。
いやぁね、安全だとは思うんだけど、どーしても巳渡みたいな人が目の前にいると構えちゃうんだよね。
男のスーツだったら尚更、いつぞやのボス戦やオフ会の時然り。
そこら辺の話もできればしていきたいけど、フラグ回収しないで終わりそうな気がするなぁ、なんとなく。
……まぁいい!そんな暗い事を考えるのはおしまい!!
今は飯の事だけを考えるとしようじゃないか。
「あら、調子出てきたわねー」
未だ腕を掴んでくれているマニが、片腕だけを伸ばしながら言った。
「大丈夫そうでなによりです。にしてもお腹空きましたね。早速何か食べてみましょうよ!」
先程とは違った目の輝きをさせて、宇佐美様はウキウキで言った。
「……今は食べ物の事しか頭の中にないのね、2人とも。良いわ、席があるか確認するから先に取ってきたら?」
食事しか考えてない、そんな俺らを察してか優しくしてくれるマニさん。
できればまだ腕を掴んでて欲しいなーなんて、思ってみたら露骨に嫌な顔をされてしまいました。
いい加減私に甘えるのやめろ、と言っているかの様な表情だ。
確かにそろそろ自立しないとだな。
「じゃあそうするわ。マニ、席よろしく」
「はいよ、っと」
俺の言葉を聞いてからマニは腕を離し、右手をひらひら振りながら席を探しに奥へと消えた。
うーむ、これは予想以上に心細くなってきたぞーう!
ずっと掴んでくれていたからしょうがない気もするけれど、腕が凄い物寂しい!
だがしかし俺にはまだ宇佐美様という頼もしい味方がいる。
腕組んでもらう事はできなくても、一緒にいてくれる事はできる筈だ。
「ショウさん、私、すみませんが先に行ってますね!」
だから頼りにしよう!……そう思った矢先にこのように言って食事の方へ行ってしまった。
わぁお、ぼっちになってしまったなう。
また少し震え出してきてしまった。
できれば誰かと合流したい。
い、いや、ここで頑張らないと羞恥に耐えて気遣ってくれたマニに申し訳ない。
コミュ障だってやれる時はやれるんだ、カッコいいところ見せてやる!
「ソーリー、そこのイケメンボーイ!」
「ひゃう!?」
と意気込んだ矢先に、背後から予想外の声かけが来たからびっくりして変な声が出た俺。
突然というのもあるけれど、あの2人が来るわけないのに知ってる声だったから、というのもある。
聞いたことはあるものの、慣れ親しんでない声って感じ。
そういえばだけど、この声をわりかし最近聞いたような気がする。
もしかして知り合い?
でも学校で聞いた感じじゃないし、友人……がマニ以外いないし。
ちょっと気になるので、嫌ではあるけど確認してみるとしようか。
ふんすと意気込みしてから後ろを振り向いてみると、なんだか見たことあるような無いような見知らぬ人がそこにいた。
ロングヘアーの金髪に、海のような深い青の瞳。
顔立ちが外国の人っぽくて、話し方もそう言えばカタコトの喋りで……あれ、もしかして。
「やっぱりネ!ユー、トーナメントにいたボーイですね!!」
「オタ杯闘争にいたデースの人ですか!?」
「そうデース!!もしや、と思ったけど、やっぱり呼ばれてたのネ。ミーのライバルは元気?」
やっぱりデースさんだったか。
デースさんのライバルというと、オタ杯で戦ったマニの事だろうか?
「うん、元気にしてるよ。今、席を探してくれてる」
「成る程ネ。……そうデース!私のフレンドと一緒にランチはどうデース?せっかくファイトした仲デスし」
一緒にランチねぇ……個人的に断りたい案件なんだけど、マニさんが許してくれなさそうだし、何よりデースさんのフレンドと言うことはアイツがいるかもしれないんだよな。
俺と戦った相手、北方五英神にして八卦の異名を持つ彼女が。
実を言うと前々から話せるかどうかは別として、話をしてみたいとは思っていたところだ。
それに中々強かったデースさんの話も色々と聞いてみたい。
人のゲーム観を聞く絶好のチャンス、しかも結構上手い人の話なんてのは今後無い気がする。
特に前作のトップファイブの1人から聞く機会なんて。
こいつは意地でも逃してはならない!!
「ぜ、是非お願いします!」
「分かったネ!じゃあ後で一緒にレッツゴーデース!!」
「はっはい!!」
俺の返事を聞いたデースさんは、「またネー!」と言いながら人波に消えていった。
…………
……………………よし、ご飯を取りに行く前に、マニに伝えておくか。
一応、うん、一応。




