7-5
【一巡目】
「さて早速始めましょう」
そうエイレは言いながら、ゲーム用の箸を混ぜつつ、リップクリームくらいの大きさな筒に入れる。
……始まっちゃうのか、王様ゲーム。
全力で阻止したいところではあるのだが、そんな気力はないし何より言えない。
もし言えたとしても王女権限とか言って強制開始されるのは明確だろう。
ならばする事は一つだ。
俺がずっと王様になり、きゃつらを飽きさせる事!
それしか俺が無傷で生還する方法はない。
幸いなことに王様を選ぶのに使うのは割り箸。
一、二巡目をなんとかやり過ごせれば、王様の箸がどれなのか分かるだろう。
割り箸は一本一本木目やシミといった特徴があるからな。
それを覚えてしまえば王様の箸を必ず選ぶことができる。
──つまり重要なのは観察力、そして特徴を覚える記憶力!
申し訳ないが、全力でこのゲームを潰しにかかるぜ!!
「では選びなさい」
エイレの号令により、各々選び始める女性陣。
俺も早速選ぶ訳であるが、一巡目である今は全く情報がない。
ならば頼りになるのは己の運のみだ。
因みに今回の場合、王になれるのは五分の一の確率。
低いと言えば低いが、この俺が引くんだ。
ポーカーのホールディムにて、三万分の一の確率でしか出ないロイヤルストレートフラッシュを出した俺がな。
五分の一なんざ当ててやらぁ!!
俺は丁度手前にあった箸を掴んだ。
──これで全員の選択が終了。
それを確認したエイレが、口角をあげながら言った。
「各自決めたわね。……では掛け声に合わせて引きましょう」
自然と箸を持つ手に力が入る。
俺が無事生き残るためにも、どうか運を!
「「「「「王様だーれだ!!」」」」」
ゆっくりと箸を抜く俺。
そして先端を確認。
「やった王様だ!」
そう声を発していた。
だが──残念ながら発したのは俺ではなくマニ。
俺の目線にあったのは、3という数字が書かれた割り箸であった。
くっ、畜生外れやがったか……
思わず小声でそう言ってしまうほど、俺は絶望感で満たされた。
イニシアチブを取るの失敗したし、しかもあのマニが王様だ。
何かが起きる気しかしない。
理由は簡単、読心術が使えるから、誰がどの番号ってのが分かっている。
行動と思考を切り離すか、一つの思考も行わず無心でいるか、自分自身をも欺くか。
こんな人外的な方法でしか防ぐ手だてはない。
だから、こいつにはこの罰ゲームを、あの二人にこんな罰ゲームを……なんてことが簡単にできてしまうのだ。
更に付け加えて言っておくが、恐らくマニは俺を指名するだろう。
いくら先の件で申し訳なく思ってようが、これはゲーム。
俺と同じくゲームに命をかけ、大会に必ず上位入賞し、俺と競い合う。
絶対に俺を負かそうと動く筈だ。
「……ということで」
喜びの表情を改め、決意を持った真剣な面持ちで俺を一直線に見つめる。
成る程、これがマニなりの宣戦布告と言うことらしい。
余程後ろめたかったのか、今日はやけに丁寧だ。
いつもならなにもせずいきなり勝負挑んでくるのに。
ここは俺も礼儀持ってやるか。
──なんて思わず。
俺は鼻で笑ってやった。
「私に鼻笑いなんて上等だわ!……二番、三番の顔面に私が然り気無く頼んでおいたクリームパイをぶつけなさい!」
鼻笑いという侮辱に少し怒り、あらげながら言うマニ。
でもちゃんと番号をエリス様──宇佐美様に確認願いする辺り、意外と冷静っぽい。
まぁ──直ぐに驚愕に変わっていたのだが。
「2はエイレ王女様で3はマモリさんで間違いないですね?」
「はぁ!?」
勿論大きな声をあげたのはマニだ。
なんで声を発したか三人とも分からず変な表情をしているが、まぁこの際どうでもいい。
俺はドヤ顔でマニを見下しながら言い放った。
「──確かに俺は人外的な方法じゃないと防げない、とは考えた。しかしながら“俺はそれができない”とは思考してないぞ?もうとっくに出来ちゃうのさ、思考の複数化がね!それでもって番号も同じ様に思っただけだ。一回も俺の番号とは思考していない!そこに気付けないとはまだまだ読み取りが甘いんじゃあないか?」
「ぐぬぬぬ、このコミュ障め!!」
歯をギリギリ、鋭く睨めつけ、本気で悔しがるマニ。
実に愉悦、愉快である。
エイレがいつの間にか、ミーシャに対して顔面パイやっちゃってるけど、どうでもよくなってしまう程に。
予想以上に熱かったのかのたうちまわり、こけてテーブルの角に額ぶつけ、その衝撃で頭に熱々のお茶がかかったミーシャが気にならない程に。
阿鼻叫喚なミーシャの声が響く中、爆笑中のエイレが棒を回収し、二回戦の開始を告げた。




