7-4
「それではエターナルアルカディアメンバー集結を祝して」
「「「「かんぱーい!」」」」
マニの号令に女子メンバーはグラスを合わせ、各自が頼んだ飲み物を一気に流し込む。
空になりかけた頃、口を放しテーブルに置いていった。
一方の俺は飲み物を口にするどころか乾杯すら参加してない。
だって考えてみてほしい。
対人恐怖症のコミュ障が、直接会ったことのない好きな歌手・エリート公務員・王族と同席してるんだぞ?
いくら事前に少し打ち解けていたと言っても、いざ面とすると緊張しすぎて無理だ。
カリスマオーラというか、リア充オーラを感じる。
エイレに至っては後光が差しているようにも感じた。
そんな場違い空間にしばらく缶詰だと考えると、頭痛と動悸がヤバくなってくる。
「……ショウ大丈夫?お水貰ったほうがいいかな」
そんな訳で頭を押さえながら、少し明後日の方向を向いて気分を落ち着かせていると、マニがえらく優しい声色で声をかけてきた。
恐らくエイレの正体を知った時に、驚愕と絶望から泡ふいて倒れたからだろう。
マニの事だからそうなる予想はできていたのだろうが、それ以上の結果だった故、流石に悪く思ったようだ。
実際起きたときに「ごめん」と俺に言ってきたし。
普段何があっても謝らないマニが。
なので若干この優しさを疑っていたりしてるのだが、俺とて余裕はない。
ここは素直に好意を受け取ろう。
「すまんが頼む……」
「分かったわ。じゃあお水注文するね」
そう言ってマニはタッチパネル式の注文表を持ち、他の人にも欲しいものを聞きながらやってくれた。
……こういう非を認めた時や落ち込んでいる時、マニって優しくなったりするんだよな。
今気付いたけど。
マニの現状は、まるで宇佐美さん並の気遣いと優しさだ。
俺の幼馴染み、こんな天使な性格じゃないはずなんだけど。
まぁ今日は下手に考えず、状況を打開するためにも、この天使なマニに頼らせてもらおう──
「あ、電話来ちゃったからちょっと抜けるね!」
と思ったら、まさかの電話で離脱。
残されたのはコミュ障の俺と、オーラが出まくりリア充の3人。
絶体絶命だ、まじで絶体絶命。
クックック、変な汗が止まらないぜ……!
ここで話しかけられたら死ぬ!
だが幸いな事にリア充達は仕事の話題で盛り上がっている。
俺が徹底的に空気と化しているからだろう。
このままマニが来るまでもたせれば大丈夫──
「にしてもショウって本当にイケメンだったのね」
はいーエイレが話題転換してこっちにふってきたー
ちょっと女子ー、コミュ障男子に話題をふらないでくれるー?
「あー確かにそうですよね、我が主!ぶっちゃけキャラをイケメンに作っただけで本当は相当な不細工だと想像してましたよ、私」
「私もそう思ってたわよ、従僕。どんな酷い顔面コンプレックス持ちが来るか楽しみにしていたくらいだもの。……にしてもこんな顔立ちなら余裕で芸能界に入れそうね」
「アイドルグループなら余裕でセンターだと思いますよ?私も職業柄、数々の方を見てきましたがショウさんほどの方は見たこと無いです!」
と、俺のルックス談義で話を盛り上げていく女子。
まだ質問というか会話に混ぜてこないだけいいが、俺抜きで自分の話題をされているってのも相当くる。
先生、女子がいじめてくるよー
「あ、そう言えばショウ──」
「お待たせー」
会話に混ぜてきそうな雰囲気になりかけた時、我が希望の光が戻った。
更に嬉しいことにマニが頼んでくれた水もやってきた。
これで会話に参加せず、無言を貫き通すことができる。
他の面々が頼んだ料理もあることだしな。
クックックッ、コミュ障故の最強たる心の壁をなめるなよ。
水一杯だけで一時間もたせてやる!
「じゃあ戻ってきたし暇潰しにゲームしましょ。全員強制参加で」
──だが、王族という最大級のリア充には勝てなかった。
エイレが突然ぶっぱなった発案に全員が賛同。
参加せざるをえない──話をしないといけない状況になってしまった。
しかしまだ希望は残ってはいる。
例えば黙りっこゲーム……はしないか。
でも短期決戦できるジャンケンといったものや、一部トランプゲームならすぐに負けて黙りをきめれば問題ない。
なのでやるのであればそういうゲームを、と祈ってはいたが届かなかったようだ。
何故諦めたかって?
エイレが右手で持っていた、先に番号と赤く塗ってある割り箸を見たからだよ。
どう考えてもあのゲームだろうねこんちくしょう。
「はい、これ見て気付いてると思うけど、今から王様ゲームするわよ」
エイレのその言葉を聞き、マニが物凄く申し訳なさそうな表情で俺を見る。
だがもう俺に慈悲はない。
オフ会に強制参加させた事、絶対許さねぇからな!
絶対に後悔させてやる……!!
どす黒い感情が渦巻く中、絶対場がカオスになるだろう、地獄のゲームが始まりを告げた。




