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それから俺らは会話しながら歩いて向かった。
マニの読心術の事、俺の事、エリス様の仕事の事、日常会話の事等。
好きな歌手を前にしての緊張と初対面故のコミュ障発動により、会話せず聞くことがメインになっていたが。
それでも楽しいもんだ。
10分少々歩いているが、其ほど時間が経っていないように感じるほどだった。
「さて、着いたわよ」
そんな風に思っている内にマニが足を止め、顔を向いた先に今回の会場となる『隠れ家的な店、家増御』があった。
確かここは新鮮な海鮮物が有名の店だった筈。
他にもサイドメニューが豊富で、お酒も飲め、ソフトドリンクも充実しているらしい。
俺的に聞いた中で一番魅力的だったのは、完全個室で完全防音ってところだけど。
周りの雑音聞こえないし、姿見えないし。
コミュ障兼対人恐怖症にはもってこいの環境である。
このことを思い出して嬉しくなり、先頭に立って入りそうになったが、一つ問題があったのに気付いた。
それは周囲に人影が全く無い事。
約二名が遅くなるということで店の前集合にした筈なのだが、どこを見渡してもそれらしいのがない。
というか、最初に言ったとおり人が全くいない。
時間的に丁度いい筈なのだが、どういう事なのだろうか?
「あー見えて二人とも忙しいらしいからね。宇佐美さんを越えるくらいの」
「私以上ですか!?」
マニの言った事に対し、オーバー気味に驚くエリス様。
なおこれまた先程言ったが、道中に読心術の説明したので、今ではエリス様は驚くこと無く会話に参加できている。
大きな成長、流石であります。
……にしてもマニの台詞、本当の事なのだろうか?
売れっ子歌手&声優のエリス様以上に忙しい人物がいるのだろうか。
俺的にはスチュワーデス、弁護士、公務員や国政府位しか思い浮かばないが、そんなわけあるまい。
特にエイレ。
厨二病拗らしてるアレが偉い奴なわけない。
まぁキノコジャンキーさんもあり得ないけど。
偉い奴だったら──っと、フラグ構築は止めておこう。
フラグ建てたらろくな事無いしな。
「チッ」
マニに舌打ちされたが、気にしない傾向でいこう。
「あっ、おーいみなさーん!!」
ジト目のマニさんから目線をそらした時、遠くに人影が見え声が聞こえた。
恐らく二人の内のどちらかだろう。
金髪なのでエイレな気がするが、ポニーテールではないからな。
それにあんな高身長で、ザ騎士って感じの麗人というイメージは無い。
どうあがいても厨二イメージだ。
だから違うと思うが、キノコジャンキーさんとも思えない。
一体誰なのか、俺は良く目を凝らして特徴を探しつつ見てみた。
近付く人影、徐々にハッキリ見える風貌。
その内に俺は気付いた。
誰なのか、ではなくその人物の役職に。
彼女の着ているジャケットによって。
「いやいや遅くなってすみません。丁度任務が立て込んでいまして」
「任務お疲れさまです。にしても本当にRPGで働いてるなんて驚きだわ」
頭を掻きつつ笑いながら言った女性に、労いの言葉をかけたマニ。
マニにしては珍しい事ではあり、普段なら驚いている事だろう。
けど今の俺の驚きはこれじゃない。
じゃあなにか、というとそれはさっきも少し触れた職業の事。
先程マニが言ったR.P.Gという仕事だが、簡潔に言ってしまえば公務員だ。
公務員にも様々なジャンルがあるが、これに関しては事務仕事をする普通の公務員ではない。
文武両道なエリートしかなれない、とても特殊な部類に入る。
そんなR.P.G、じゃあいったい何をするのかと言うと──ボディーガード。
ただ一般なVIP相手にじゃない。
二代目オータク、通り名は黄色のあくま。
……上記ので分からない人のために言うとだな。
王女。
我が国の王女。
つまりは、王女を護る騎士なのよこの人。
この事実に衝撃を受ける最中、女性はマニの労いに照れながら思い出したかのように口を開いた。
「あっ、そういえば名乗り忘れてましたね!私は子岸マモリ、ミーシャのユーザーです!!」
俺はこれを聞いた瞬間、開いた口が閉じないくらい呆然とした。
キノコジャンキーさんが、エリート?
なに、フラグ建てかけたせいなの?
厨二さんじゃないからまだいいけど。
それでも四六時中キノコしか考えていない人がエリートとは、神様は何を考えてるのだろうか。
「ショウ、それブーメラン」
また人の心を読んで言うマニさん。
ブーメランはしらんが、本当の本当にやめような。
また初見が驚──
「エリス様!?何故ここに我が愛しの女神エリス様が!!」
かなかったようですね。
ミーシャことマモリさん、エリス様を見た瞬間ハイテンションでキャラ崩壊した。
それにビックリな様子のエリス様、少しおどおどしながら返答する。
「わ、私は宇佐美の中の人で……」
「まじですかい!では今までエリス様と共に戦っていたのですね!それはとても光栄です!!いやぁこれは同胞達に自慢できますなぁ!いや、垢バレはさせませんよ、騎士に誓って!!」
「あ、あの分かりましたので、エリス様と呼ぶのはやめてい──」
「何を言うんですか、エリス様!私は貴女様の世界観に囚われてからもう夢中なのです!!それはもう必然だったかのように!キノコより、いや主君を越える忠誠を誓っています!そしてなにより──」
もう色々と止まらないマモリさん。
共感できるところがあるけど、流石にこれはやりすぎだろう。
エリス様がマナーモードみたいにプルプル震え出しているし。
流石の俺も助けにいこうとマニとアイコンタクト。
何をしてでも止めようと動いたそんな時だった。
「なぁぁぁぁぁにしてんのよ!!」
突如、金髪幼女がマモリさんの背後に現れ、彼女の股間を思いっきり蹴りあげた。
そんな攻撃を受けたマモリさん、「ひぃん!」と小さく悲鳴をあげながら少し空を舞い、そのまま地面へ倒れた。
……うん、女と言えど痛そう。
思わず俺も押さえてしまう程に。
というかこの幼女、的確に股間を蹴りあげた辺り中々できるかも──
「他人に迷惑かけるだけなく、主君である私より魅力的ですってぇ!?本人の目の前で言うなんていい度胸じゃない!」
ここで訂正いたします。
中々できるかもしれないと言いかけましたが、発言を撤回いたします。
だって白目向いてるマモリさんの頭を右足で踏んでいるんだもの。
しかもなんの因果か靴はハイヒール。
もうこの幼女完璧にヤバイ子だ。
しかもそれだけじゃない。
今この幼女、“何て言った”?
主君である“私”?
本人の“目の前で”??
……もし、もしもだ。
俺の推測が正しければ、この子はエリス様やマモリさん以上のVIPだ。
だが、そうであってほしくない。
建てかけたフラグを回収したくないんだ。
なぁマニ、違うと言ってくれ。
俺の推測は外れだよバーカと言ってくれ!!
考えが読めるんだからできるだろう?
さぁ!!
「……ショウ、とっても残念なお知らせよ。この方の名前は──」
「──エイレルベール・フォン・ルディア・オータク二世。エイレのユーザーにして、この国の王族よ。自己紹介、遅れて悪かったわね、フフッ」




