6-3
会場の大歓声と共に降りてくるシーメル。
俺らのところに戻り、真っ先に一言。
「マジで痛い」
そう言ってから、急に白目を向いてばたりと頭から倒れた。
……そういえば先程の戦闘で刺されていたっけ。
気を失ったあたり、結構無理して我慢してたんだな。
後でパフェを奢ったりして労るとしよう。
──とにもかくにも三勝。
俺らのチームが勝利確定で、次に駒を進めることができる。
だが第一回戦は結果がどうであれ5試合全てやるようだ。
故に後は消化試合なのだが、ここで負けたら今後の士気にも関わる。
油断せずに頑張らないと。
「さて、次は私だわ」
そんな大事な第4戦を前に、エイレは指を鳴らしながら、フィールドに上がっていく。
何も持っていないところを見ると本気じゃないのだろうか。
ロングソードすらないし。
いくら種族が強いとはいえ、鬼砲という強力な技があるとはいえ。
一筋縄でいくとは到底思わない。
そう思ったのも、さっきのデースさん見てからだ。
正直言ってあの人は結構強かった。
油断してるとはいえ、強力な火器や武器を持ったシーメルをあそこまで追い込み、戦闘後気絶までさせたのだ。
もし残りの二人がデースさん以上なら……
考えたくもないな。
エイレの次におこなう戦いに憂鬱になりながらも、応援するために視線を虚空から舞台に戻した。
だが思わずキョトンとしてしまった。
何故なら
「まだ相手来ないの?」
エイレがイラつきながら言っている通り、相手チームの誰も上がってこない。
これにはリスポーンした猫かぶり巫女さんとだぜだぜ神様も困惑している。
一体どうしたのだろうか。
流石に心配になってきた頃、ようやく一人の男性が上がってきた。
例の一人だけ重火器装備さんだ。
「遅かったわね。良い勝負にしましょう」
激昂してるかと思ったが、意外にも大人な対応をし、手を差し出したエイレ。
だが、相手はその手を払いのけた。
俺ら陣営に戦慄が走る中、重火器さんは突然狂ったように笑いだした。
「ククク、クアッハッハ!会いたかった、会いたかったぞエイレルシア・ツァーリエ・ロイノヴァ!!」
「……誰?」
テンションがバリ高な重火器さんに対し、明らか怒っているエイレが物凄い低い声で言った。
もうこれだけで俺らは恐怖を感じるのだが、重火器さんは舌打ちという更に煽る行為をする。
「俺はな、お前に倒された兵士だよ。──具体的には三話に出て、腕切られてやられた兵士だ」
何ともメタな発言である。
だが生憎俺の記憶に無い。
エイレも「知らねえよ」みたいな表情をしている。
因みにその時期に加入した宇佐美さんに聞くと、「見に覚えがないです」との事。
よし、ちょっくらマイスマホで調べてみるか。
さっくり見てみると、それらしい人物を発見。
一応教えておこう。
「エイレー」
「何よショウ」
「そいつだけど、確かに戦ったことあったぞ。敵の魔法で厨二化した時──三話の5辺りの話だ。二双両断斬で腕を切断した後に、暗殺剣の劉翔でとどめさしてた」
それを聞いたエイレ、暫し思考。
少し経って一言。
「知らないわ」
ですよねー。
実際俺も、見ても思い出せなかったし。
──なんて重火器さん放置で会話をしてると、銃声が一発聞こえた。
どうやら空に向けて発砲したようだ。
俺らは話を止め、視線を戻す。
「……思いだしてはないようだが、理解はしたようだな」
「だから何よ」
今度はエイレが鼻で笑いながら言い放つ。
まるでさっきの舌打ちのお返しと言わんばかりだ。
だが反応がない。
いや、エイレに近づいてはいるが、表情は無である。
段々、段々と幅をせまらせる。
そして握手できるくらいまで近付くと──
「復讐がしたかったんだ」
エイレの心臓めがけナイフを突き立てた。
どよめく会場、驚愕して動けない司会と審判。
敵グループも呆気にとられていた。
そんな状況の中エイレはというと
「くそっ……」
敵から少し離れたところで脇腹を押さえ、息を荒げていた。
どうやら急所を外すことはできたようだ。
だが使われた武器、あれは吸血鬼に特効な武器だったはず。
相当危険なはずだ。
『この試合無効!エターナルフォースアルカディアの勝ちです!!』
ようやく動いた司会ら。
だが対応が遅い。
重火器野郎が何やらボタンを押すと、司会らは謎の鎖によって体を巻き付けられ、動きを封じられた。
俺らも動こうとするが、気付けば舞台の周りに雷が張り巡らせていた。
こいつ、用意周到だ!!
何とか雷を消そうと動くが、その間にも重火器野郎は特効武器を二本取り出し、とどめをさそうと動いていった。
一方エイレは痛みからか動けそうにない。
急いで何とか雷を消すことができたが、既に襲いかかっていた。
「我が新しい雇い主から貰った、対吸血鬼ナイフで果てろ!」
──グサッ。
そのような突き刺さる音が鳴り、悲鳴のような断末魔が会場に響き渡った。
流れる血。
響く叫び。
だがこの血や声の主はエイレではない。
なんと重火器野郎のものだった。
彼の腹部には光で出来た剣が突き刺さり、色んな部分に血が滲み、擦り切れ、痣が出来ていた。
「調子にのるなよ?」
一方のエイレは光でできた剣を片手に立ち上がっていた。
脇腹の怪我は治っていないようだが、それが問題ないくらい覇気がある。
殺気が誰でも感じ取れるくらい滲み出、目つきは鋭く、恐ろしく、濁っている。
まるで悪魔。
そう比喩できるくらい、恐ろしい雰囲気をしていた。
──そんな急展開、逆転。
会場にいる誰もが状況が理解できなかった。
一体何が起きたのか。
考えつく前に、気が付くとエイレは敵の前に立っていた。
「我が名において罰するわ。──六道輪廻五獄、餓鬼!!」
一見只の厨二ネームな技。
だが名前負けしない強さであった。
地面に大きな穴が開くと、そこから何かが這い出てきた。
その何かは人間のようなのだが、全てがガリガリに痩せ細っており、手が異様に大きく、人間でないのは確かであった。
その人外は重火器野郎にまとわりつくと、物凄い力で押さえ込み奴の体を食べ始めた。
どうあがいても引き離すことができず、敵は何もできないまま悶え苦しむ。
そして最後はそいつらと共に地面の中へと沈んだ。
「欲望まみれのアンタは餓鬼道がお似合いよ」




