6-2
再び沸き起こる歓声の最中、俺は宇佐美さんの強さもとい武器の強さに脱帽していた。
うん、流石という一言しかない。
重力を支配する月天。
それの模造品とはいえ、周りの重力を操り、強力な種族を押し潰すなんてその域を越えている。
やはり神話級の武器の名を持つものは伊達じゃないってことか。
宇佐美さんの舞台から降りる姿を見ながらそう結論付けた。
『さぁ更に行きましょう!次の方、どうぞ!!』
「よし、私ね!」
アナウンスがなると、待ってましたとばかりにシーメルが意気揚々と出ていく。
アイツは戦闘狂みたいな部分もあるから、楽しみでしょうがなかったんだろう。
「シーメル、頑張りなさい」
エイレの声援に右手を上げて応え、「終わったら美味しいものを食べよう」と言ってから、舞台中央へと向かった。
……それ死亡フラグじゃないか?
そんな俺の心配を他所に、嬉しそうなシーメルである。
意気揚々と相手と握手していた。
「よろしくお願いしますネ!」
「こちらこそ!」
相手もノリが良く、元気に挨拶をしている。
そんな相手さんは、紅白の巫女装束と本格的な格好であったが、金髪長髪で、瞳は海のような蒼い色をしていた。
恐らく外人的な感じなのだろう。
片言喋りだし。
まぁそれが逆に胡散臭さを加速させているのだが。
先程負けフラグを建築したシーメルであるから、油断せず見守るとしよう。
俺が変な緊張する中、両者の戦う準備が終わり、合図を待つだけとなった。
『では開始──』
「待ってましたァー!!」
それを見計らってアナウンスされたのだが、シーメルは開始の言葉と同時にマシンガンタイプの銃を乱射。
だが相手は防護壁の魔法で何とか防いだようだ。
……うん、シーメル超汚い。
「防ぐなんて流石ね!じゃあこれはどう!?」
さて、そんな汚いシーメルさん、次は六門式ロケットランチャーを取り出して撃ち放った。
着弾地点は言わずもがな、物凄い爆煙と炎が上がっている。
しかし、やはり防護壁で守りきったようだ。
「ならこれをくらいなさいな!!」
更に笑みを眩しくするシーメルは、懐から武器を取り出した。
どうやって出したのか分からないの圧倒的物量を誇れる武器を。
──具体的に説明すれば、スプリットミサイル、80㎜砲、レールガン、クレイモア、グレネードの武装を一つにまとめたようなものだ。
その武器は一般的な車の大きさ並の大きさである。
それをどういう事か軽々持ち構えた。
「いくわよ!フレイヤフルバースト、ファイア!」
その掛け声と共に撃つ。
まず発射したのはスプリットミサイル。
大型機構が射出された後、小型ミサイルが敵めがけ飛ぶ。
次に80㎜とレールガン、グレネードが発射。
最後にクレイモア──鋼鉄の塊が相手目掛けて射出された。
この間僅か3秒。
シーメルが後ろを振り向いた時、全弾が敵に襲いかかった。
勿論、着弾した場所には塵一つも残っていない。
勝利を確信したシーメルは腕を高くあげて見せた。
「オーゥ、残念ですネ」
──だが、敵は無傷だった。
それどころかシーメルの腹部にナイフを突き刺していた。
「ワタシは影に潜る防具を装備してマース。こんな攻撃、潜ってしまえば無意味デース」
見下すようにシーメルへと言う敵。
まるで哀れんでるようにも思える。
一方のシーメル、腹部の刺傷は結構深いらしく、片膝をついてしまった。
あっという間に形勢逆転だ。
「さて、後は楽にサクッとしてあげますネ」
相手は札を展開すると、それが集まって一つの剣へと変わる。
それを片手で持ち、シーメルの頭目掛けて降り下ろした。
──筈だった。
「!?」
だが実際剣が刺さったのは地面、シーメルは無傷であった。
「り、力んでしまったネ。次は水平に断つのデース!」
そう言って胴部分を、居合いのように斬った相手。
だがやはりシーメルは無傷であった。
相手が困惑するなか、シーメルは笑みを絶やさない。
寧ろ今まで以上に嬉しそうだ。
「まさかこの私がここまで追い込まれるなんてね。敬意を評して本気でいってあげる」
一瞬。
その言葉を放った一瞬。
相手は吹き飛ばされ、地面へと強烈に叩きつけられた。
何が起こってるのか、相手どころか会場の誰もが分からない。
会場がざわめく中、相手は警戒しながら立ち上がった。
「!?」
だが真っ先に視覚に映る筈であるシーメルがいない。
前も後ろも左右も上下にも何処にも。
彼女がいない。
「ワタシと同じウエポンかしら?なら影に隠れるだけネ!」
「させるわけないでしょ」
相手が隠れようとした瞬間、見えない何かの塊が襲いかかる。
当たってしまった彼女は先程のようにまた吹き飛ばされた。
「能あるイーグルはクローを隠す、か。シット、まさか本気がこんなに強いなんて……!」
口から垂れる血を拭い、フラフラになりながら立ち上がる。
そんな彼女の目線の先には、何かを纏うシーメルが拍手をしている姿だった。
──武器を持ちながら。
「凄い凄い。あれ喰らうだけでも普通はやられちゃうのに。君って結構強いのね」
「褒められてハッピーだわ……。ユーみたいな強者に勝てそうもないけど、負けるわけにもいかないネ!」
完全に油断しきっているシーメルに対し、相手は決死の覚悟で動き始めた。
まず札を五枚宙に浮かべ、中央に先程の札剣を掲げる。
すると術式が画かれ始め、どんどん増えていき、一面を覆う位までになった。
「オーラシュート!」
相手の掛け声を合図に、術式から魔力の塊が大量に射出されていく。
それは舞台を全て覆うくらいの量。
通常なら避けることは無理だろう。
「玄嵐の壁!」
だがそれはシーメルの武器から出来た風の渦が、かき消し反らしてしまった。
ようやく風が原因だと理解した相手。
だが気付くのが少しばかり遅かったようだ。
シーメルはトンファーに大量の風の渦を纏わせ構えた。
「風狼の牙!」
思いっきり振り上げた武器から、暴風がまき起こり相手に突き進む。
その形が次第に狼のように変わり、相手を噛みつこうと迫っていた。
「負けた、ネ……」
風の狼は敵にかぶりつくと同時に大嵐となり、相手を切り刻みながら遥か上空へと吹き飛ばした。
『またもやエターナルフォースアルカディアチームの勝ちだーッ!』




