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そして次の日、ゲーム内。
「遅いわよ!」
インして開口一番にそう言ったエイレ。
結構早めに来たはずなのだが、もう全員が揃っている状況だ。
みんな楽しみで仕方なかったのだろう。
そう思っていると、ミーシャが目をこすって眠そうに呟く。
「私はエイレさんに叩き起こされたのですけどねー」
それを聞いたエイレ、にこやかな笑みをミーシャに向けてから、腹部に一蹴り。
物凄い音と共に、壁まで吹き飛ばされた。
「そこ、変なこと言わない」
顔を少し赤らめて言うエイレさん。
その言葉と仕草だけなら可愛いだろうが、如何せんその前にした行動がな。
ミーシャを50メートルくらいまで吹き飛ばした直後だからね。
吸血鬼とはいえ、味方にそれは色んな意味でビックリだ。
なお全く関係の無い余談だが、ミーシャはユーザーだったようです。
自己紹介の時、そう言われて吃驚仰天だった。
……この頃俺、NPCとユーザーの区別が出来てないな。
俺の心臓と精神の安全のため、気を付けたいものだ。
そう心に誓いながら虚空を見ていると、シーメルが話しかけてきた。
「にしても人がいっぱいね。そう思わないショウ?」
うん、そうだね。
だから虚空を見て話に参加してなかったのに。
畜生、人の熱気で雲が出来そうなほどいっぱいいるぜ……
「あら、返事もできないの?」
流石は幼馴染み、返答できないの知ってて言ってきやがる。
仲間の視線も気付けばミーシャから俺に変わってるし。
うう、動機もさることながら、胃も痛くなってきた。
「私嫌われたのかしら……」
涙目になって言うシーメル。
マズイ、エイレが拳を固く握りしめている。
このままだと間違いなくミーシャの二の舞だ。
何か言わなければ。
「ねぇショウ……?」
「ラーメンばりうまか」
俺は殴られ気を失った。
「──んあ?」
目が覚めたとき、最初に見たのは見知らない天井だった。
俺は何が起きたかを思い出しながら、俺は起き上がり辺りを見る。
「あっ、おはようございます」
すると隣に座っていた宇佐美さんと目が合う。
俺はすぐ目線を斜め下に移し、なんで宇佐美さんが目の前にいるのか疑問に思いつつ口を開いた。
「おはよう。ところでここは?」
「ここは待合室ですよ。因みに皆さんは試合の準備に行きました」
「宇佐美さんは準備しなくてよかったの?」
「ショウさん一人だと可哀想じゃないですか。だから残っていました」
俺の問い等に対し、宇佐美さんは笑顔でそう答えた。
……ふむ、そうだったのか。
やっぱり常識人──もとい心優しいのは宇佐美しかいないようだ、うちのパーティ。
ってことより、まずはお礼しなくちゃな。
深呼吸し、人の字を三回書き、気合いをいれた後、俺は一声をかけてから言った。
「宇佐美さんありがとう、看てくれて」
それを聞くと一瞬驚いた表情を見せ、直ぐにまたにこやかな笑顔で応えた。
「そんないいですよ、大して何もしていませんし」
「それでもさ。本当に助かったし嬉しかったよ。ありがとう」
俺が微笑みながら言うと、「いいえ」と呟きながら宇佐美さんが少し嬉しそうにしていた。
うん、やっぱりいい人は宇佐美さん確定だ。
もう天使だ、天使。
思わず癒されていると、何か気づいたかのように両手を合わせながら宇佐美が言う。
「そう言えばゲーム内ではお昼ですけど、空腹ゲージ大丈夫ですか?」
俺は直ぐにメニューを開いて確認する。
「……うん、少し減りぎみかな。」
問題ない程度ではあるのだが、今からのことを考えると満タンにしておきたいところだ。
なお、空腹ゲージについてだが、これはスタミナや自然回復に関わってくるものだ。
満タンなら無尽蔵に動けるし、0なら移動速度低下やダメージ受ける感じだ。
回復する方法は食べ物や飲物をとること。
だから基本HPやMPが減っていて、なおかつ空腹ゲージが僅かなときに食事するとベストである。
──補足終了。
よし、話を戻そう。
俺が空腹ゲージ減ってると聞いた宇佐美は、どこからかあるものを出して
「じゃあ、これ食べてください」
と、言った。
……だがどういうことなんだ?
いや、渡されているものは、ただの普通のお粥だ。
でも……
「何故に、あーんなんですか?」
そう、宇佐美さんはスプーンに一口分のお粥をすくい、それを俺の口の前に持っていって食べさせる、世間で言う“あーん”をしていた。
「だってショウさんは病人じゃないですか。食べさせてあげますよ」
怪我人なんだけどな。
しかも怪我、完治しているし。
自分で食べることができるんだが。
もちろん、あーんは嬉しいよ。
だってうさみみ美人さんに、あーんをされるんだもの。
そりゃあ特殊性癖でもない限り、絶対嬉しいってもんさ。
シチュもいいね。
ただ正直言って恥ずかしいし、誰かに見られそうで恥ずかしい。
料理の味も怖いし。
「食べてどうぞですよ?」
ならばここは素直に「一人で食べれる」と言ってごまかすべきか。
いや、それは断じて否である。
たかが誰かに見られるのが嫌だからって、料理がドヘタだからって、天使様のご好意を無下にするわけにいかない。
しかも満面の笑み。
断れば笑みは間違いなく消え、泣き顔に変わってしまう恐れがある。
男子たるもの女子を泣かせるわけにいかない。
ドキドキしながら俺は口を開【失礼しまーす】
「は?」
突然人型美人なロボットが、今いる部屋の戸をぶち破って入ってきた。
どっかで聞いたことあるような声なんだが、そんなことよりなんで戸を破壊したんだよ。
【もうすぐ試合なので、選手は入場門前に集合してください。分かりましたね、宇佐美さんと脳内ピンク変態糞ゲリクソンよ】
あ、これ間違いなくナビ子さんだ。
リア充嫌いだったし。
ナビ子さん、ちゃんと姿があったのねー……じゃなくて。
なんか知らないが大変怒ってらっしゃる。
よく分からないから推測だが、俺が“あーん”をしてもらっているというリア充的状況に、裏切られたり妬ましく思い、怒ってるんではないだろうか。
あー本当に大変怒っていらっしゃる。
弁解しても無駄だろうし、文句も反論も言わないことにしよう。
「分かった、すぐ行く。ほら、宇佐美さんも」
「ひゃ、ひやぁいっ!」
宇佐美さん、するのは平気でも他人に見られるのは嫌なのね。
【チッ、リア充が】
あ、ナビ子さんがキレちゃった。
【ほら行くぞ糞虫共】
ナビ子さんは無理矢理宇佐美さんの腕と俺の頭を掴み、引きずって行きました。
因みにお粥はナビ子さんが美味しく頂きました。
それから約5分。
「遅いぞ!」
シーメルとミーシャが、門の前で待っていた。
だがエイレの姿がない。
疑問に思ったが、ナビ子さんに掴まれている痛みから、俺は考えるのを止めた。
「というか、なぜ頭と腕を掴まれ引きずられているんですか?」
「そっ、それは……」
ミーシャの質問に詰まってしまった宇佐美さん。
人に言うのも嫌ならば、しなければ良かったのになーと。
そのときぼくはそうおもいました、まる
「…………」
あ、シーメルが長考している。
どうか変な答えに行き着かないで欲しいが……
「……………………」
あっ、こりゃだめだ。
でこの血管が浮き出てる。
あらぬ事に行き着き、それでガチでキレてるわ。
「アンタいったい宇佐美に何をしたの?」
シーメルがドスのきいた声で訊ねてくる。
これはふざけたり間違えた解答したらやられる。
ちゃんと話しするしかない。
「何もしてないよ。ただ宇佐美さんが俺にあ「ギャアァァァァァァァァ!!」
宇佐美さん、突然発狂。
そんなに恥ずかしいのかよ……
本当になんでしようとしたんだ?
「……そう、宇佐美が発狂するくらいの事をアンタがしたのね?」
ちょ、なにその脳内変換!?
決めつけが酷すぎなんだが!
そう伝える前に、俺はシーメルの拳に再び撃沈した。




