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──そして時が過ぎ祭り前日──
待ちに待った祭り始まりの日。
俺は携帯ゲーム機を片手に持ち、南方で使ってるキャラのコスプレをして玄関の戸を開けた。
「ひゃー、いっぱいるなー」
只の道なのだが、とても大勢の人がいる。
車道が埋まるんじゃないかというくらいに。
なおその人たちも俺と同じように、携帯ゲーム機を持って、なんだかそわそわしていた。
どうやらまだ始まってないようだ。
俺は自宅玄関の目の前にしゃがみこんだ。
なお今日は祭りへの高揚感と期待が高すぎて、いつものコミュ障スキルが発動してない。
まぁ対人になったら無理だろうけど。
人に接せず、思いっきり楽しみたいところだ。
「にしてもまだ始まらないのか?」
近くの時計は8時過ぎを指す。
大体このくらいの時間から始まるので、てっきり開始しているかと思ったのだが……
と思った丁度その時だった。
町の至る所にあるスピーカーから、男性の声が聞こえてきた。
『あー、マイクテスマイクテス。……では、これから開催宣言をします。では皇帝、挨拶を』
『始める』
『と言うことで……第258次オタ杯闘争の開始だッー!!』
「「「「オー!!!」」」」
アナウンスの声に合わせ、全員が雄叫びをあげ、その声と共にゲームの電源を入れていった。
よし、俺も電源を入れるかな。
因みに言っておくが、カセットは入っていない。
しかしハイ・ジーン帝国の方針により、祭りの間まだ発売してない最新ゲームを無料で配信し、それをゲーム機で受信して遊べるのだ。
ゲーマーにとってはまさに天国な国、それがハイ・ジーン帝国。
「さて、どんな新しいゲームがあるかなー」
俺は早速新規ゲームを確認する。
できれば協力プレイかアクションがいいのだが……
「育成ゲームにパズルゲームだけか?」
配信されたゲーム全てが、育成かパズル、他にはシュミレーションやでノベルタイプ系しかなかった。
簡単に言えば一人でやるものしかほぼない。
……確かにパズルとかも好きだが、今は別なのがしたいんだ。
ガッツリご飯を食べたいのに、出てきたのはスイーツだけみたいな感じだ。
なんか萎えてしまったし、少し散歩でもするか。
俺はゲームの電源をオフにし、適当に歩き始めた。
見る限り皆も不満なのか、元から持っていただろうゲームをやっているようだ。
「あれ、ショウじゃん」
観察しながら歩いていると、目の前に一人の女子が俺に話しかけてきた。
ロングの黒髪に、小さな身長。
服装は白のワンピース。
一見幼女のように見えるが、こいつは幼馴染みである。
名前は峪星マニ。
俺が家族以外で普通に喋れる、唯一無二の存在だ。
「おー、久しぶりだな。マニ、いやシーメルさんよ」
因みにシーメルのユーザーである。
マニは「あれ、バレてた?」と、まるで言われるのが分かっていたかのように笑いながら言った。
「あの村で既に怪しいと思ったけど、あの町で一緒にいて確証したよ。あんな事するのマニ位だし」
それに話しやすかったしな。
他人と会話ができただけでも奇跡だけど、俺があんなに話すことはあり得ないってのも証拠の1つだった。
「そうよね、私でもそう思うわ。けど、アンタも分かりやすかったわ。あんな重度のコミュ障アンタしかいないからね」
「おまけに名前をリアルと同じにしてるしな」
「ところで今なにやってたの?」
急に話を変えてきた。
まぁマニにはよくあることだから問題はないが。
基本自己中だし。
「ただの散歩。面白いゲームがなかったからブラブラしてた」
「やっぱり?」
私もそうだったと言わんばかりの表情でマニは言った。
やはりそう思っていたか。
こいつも俺みたいなプレイスタイルだからなぁ。
協力プレイのゲームを一人でやって極めるというような。
まぁ、マニの場合は転売の為のアイテム収集と「私最強!!」するためのレベル上げの為に一人プレイをしているのだが。
「ねぇ、つまんないし南方しない?」
「南方は明日のためにメンテ中だっての。掲示板見てないのかよ」
「マジか」
ショックだったのか、マニはその場に倒れる。
よっぽど暇なんだな。
しゃーない、幼馴染みとしてここは暇を潰してやろう。
「そこで対戦ゲーやってる人たちいるから、一緒に殲滅してやろうぜ」
「……いいねぇ」
不適な笑みを浮かべて答えるマニ。
俺はその言葉を聞くと、直ぐに相手グループの了承を得た。
スケッチブックで筆談しながら。
とにかくOKをもらった俺らは、2対多数戦をすることになった。
──ふっ、君たちは知らんようだな。
ここに最強の廃人2人がいることに!
「はい甘い甘い。ショウ、やっちゃって」
「りょーかい、サポートよろ」
「なっ、何だコイツら!俺らの攻撃を全てかわし、的確にダメージを与えてきやがる!!コンビネーションも抜群じゃねぇか!」
モブ君よ、解説ありがとう。
そんなわけで気付けば屍だらけ、いつの間にか全員を倒した。
「私たち倒すには今の千倍必要ね」
「他愛ないぜ」
その後も、対戦ゲーをやっているグループを発見するや否や武力介入し、殲滅。
他にもレースがあれば首位と二位を独占し、パズルゲームは速攻俊殺。
格ゲーも壁ハメでボコり、音ゲーでは全てフルコンボでゲーマーを狩っていった。
そうやっている内に、気付けば夜。
「ふー、楽しかった」
「だなー」
久々に大暴れした気がする。
学校以外で外に出ること自体が久々だったし、南方以外のゲームも久方ぶりだったし。
満足満足。
「……明日は南方の祭りかぁ」
突然マニが呟くように言った。
そして俺の方を向いて
「明日は絶対優勝だからね!頑張りなさいよ!!」
そう言ってマニは自分の家へと帰っていった。
俺は「なに負けや死亡、はたまた恋愛フラグ(?)をたててるの?バカなの?死ぬの?多すぎじゃ」と思いながら帰宅。
なお余談だが、その途中一件のメールが来た。
「裏切り者め、このリア充がbyナビ子」
俺は「ドンマイ」とだけ返信し、ようやく家にたどり着いた。




