5-6
俺は右腕に感じる、鈍い痛みで目を覚ました。
視界に映ったのは、見知った見知らない天井。
つまりは先程の控え室だ。
そこで、またもや横になって寝ていた。
ただ違うのは痛みがあること。
気になった俺は顔だけ起こし、右手のある方を見、
「うおぉい!」
変な声をあげながら、勢い良く起き上がった。
不自然な物音──まるで頭を床に叩きつけたかのような音と共に。
頭で状況を整理している中、その音の発した主は頭を抱えながら、俺に向かって発言した。
「おはよう」
「おはよう、じゃねぇよエイレ!!」
そう、物音の主はエイレであった。
あろうことかこのエイレ、俺の右腕にかぶり付き、血をちゅーちゅー吸っていたのだ。
寝ている味方なのに。
敵なら分かるが、俺の血を吸う理由が皆目見当つかない。
「にしても痛かったのだけれど。コブになったらどうするの?」
俺が必死に理由を考えている最中、エイレは頭を指で指しながら言ってきた。
若干怒りつつ。
だが自業自得といえばそうなので、完全に発言をスルーして、逆にこちらから訊ねた。
「それよりなんで俺の血を?」
「もうすぐ試合が始まるからエネルギーを溜める為よ。本来は苦いの嫌いだからしないんだけど、ショウの血が甘そうだから飲んでみたの」
少し拗ねつつエイレがそう返答した。
そう言えばエイレはおこちゃま味覚だった。
苦いの酸っぱいのが苦手で、味が薄いのを嫌がる、ついでに野菜嫌い。
思わず納得してしまった。
なお、味はどうだったか聞いてみたところ、「熟していないスイカだった」そうだ。
つまり甘いっちゃ甘いが、味が殆ど無かったってところか。
無駄知識が増えてしまった。
「ところでエイレ」
俺の声に「うん?」と言って顔を見るエイレ。
それにちょっと恥ながらも、別な質問を投げ掛けた。
「もうすぐ試合始まるって言っていたけど、あとどの位なんだ?」
それを聞いた瞬間、大きな太鼓の音が鳴り、歓声が部屋の中に響いてきた。
そしてエイレが一言。
「丁度今からよ」と。
──南方でのオタ杯闘争の始まりだ。
俺は期待と興奮が満ちる中、武器を取った。
もう待ちきれない。
大勢の人は嫌だが、戦いに参加するのが楽しみでしょうがない。
そう興奮を高めていると、シーメル達が部屋に入ってきた。
「準備できたわよ!」
そう言って入ってきた3人は各々武装していた。
だが武器は今まで使っていたものではない。
まじまじと見、それがなんなのか気付いた時、俺は彼女らに驚愕した。
何故なら武器が高レアリティーで、どれも名が知れてるものだったから。
宇佐美は、重力を支配する木槌の模造品【月天複品】
ミーシャは、火炎を生み水流を操る夫婦剣【誕炎候・操水候】
シーメルは、風のように軽く旋風を巻き起こす旋棍【エアミドナ・レヴェア】
もう、開いた口が塞がらなかった。
それほど、彼女らの武器は協力な物ばかりなのだ。
「ショウが変な顔をしているわ。面白いわね」
シーメルが笑いながら言った。
少しイラつく言い方ではあったが、その声のお陰で俺は正気に戻れた。
「この武器どうしたんだよ!?」
「今、前作である北方のデータを、ある程度引き継ぎできるキャンペーン中なのですよ。お金がメインなのですが、前作と種族が一緒ならば武器も持ち込みできるのです」
声を荒げて訊ねる俺に、宇佐美さんがそのように答えてくれた。
買った当初引き継無しと言っていたのだが、大会があるからできるようにしたのだろうか。
まぁ俺には関係ないことだ。
前作と種族が違うから。
それにまともな武器が装備できない吸糖鬼だ。
恐らく引き継ぎできても無意味に終わってしまうだろう。
と、考えているとき、ひとつ気になることが出てきた。
それはエイレだ。
エイレも引き継ぎしたのだろうか、したならどんな武器なのか。
俺は興味本意で聞いてみた。
「私はしてないわ、種族違うし。しかもそれほどな武器じゃないし」
するとこのような返答が返ってきた。
強そうなのを期待してただけあり、ちょっと残念である。
そんな俺を気にせず、エイレは咳払いを一つすると、真っ直ぐ俺らを見て言った。
「さて、雑談はこれくらいにして行こうじゃない。決戦の舞台へ!」
「「「おー!!」」」
みんな掛け声合わせ、右腕を高くあげる。
そして俺を完全に置いてきぼりにして行ってしまった。
「……って待てや!」
俺は慌てて彼女らの後を追っていった。
──遂に祭りが始まった。




