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「殺ったね!」
これが魔法を放った後すぐの、宇佐美の第一声であった。
だが俺とエイレはその一声を完全に逃した。
いや、聞く余裕がないというべきか。
何故なら今使った厨二魔法は、前作において最高峰と称される『三魔』の内の一つだったからだ。
まず三魔から説明しようか。
三魔はその名の通り、三種類の魔法群から成っている。
一に、時間や空間、次元、世界に干渉する『世界終焉』
二に、封印や幻獣を使役する『白代黒刻結界術』
そして宇佐美が使った『永久に亘る罪の物語』である。
この『永久に亘る罪の物語』は、ある歌手の歌う物語歌を形にしたもので、全てが高威力を誇っている。
各々の詠唱が厨二で長く覚えるのが大変だが、けして損するものではない。
ただ一つだけ重大な問題がある。
それは使えるのが限られているということ。
この魔法群は七種類存在するが、使用者の能力や性格に合う、一つのみしか使えないのだ。
故に相手の弱点がつき辛く、同時展開できない等の欠点を含んでいた。
なお、中には七種類全部使える人もいる。
当てはまるのは製作者とその歌手、一部の魔術特化の種族のみらしい。
──と、まぁそんなわけで。
そんな強い魔法を平然とぶっぱなした事に俺らは驚き、宇佐美の声を聞かず呆けていたわけだ。
宇佐美はちょっと不安そうな顔をして、また声をかけてくる。
「あ、あのー終わりましたよー?」
俺は何とか「ああ」と短く返事をしたが、エイレは呆けたまま。
流石に宇佐美さんが可哀想なので、俺はエイレの肩を軽くに揺すって気付かせる。
すると開口一番。
「何でそれ使えんのよ!」
それを聞いた宇佐美さんは、ばつが悪そうな表情をして言った。
「兎人は魔法寄りの種族なので、詠唱さえ知ってれば発動はできるのですよ。呪文は……色々あって知ってます」
「色々ってなによ」
「色々です」
「だから色々は何なのよ!」
と、ヒートアップし始めたところで2人の間に入った。
このまま放置してたら、間違いなく堂々巡りするだけだったろうし。
何よりアポカリプスでハルマゲドン的な闘争に発展しそうで怖かった。
実際その一歩手前だったようで、エイレの右手には凝縮した鬼砲が放たれんようとしていた。
「ショウ何すんの?」
低い唸りの声にビビりながら、俺は返答する。
「だ、誰だって隠したいことがあるだろう。それを無理に聞き出そうとするのは違うんじゃない?人間としても、仲間としても」
「……そうね、悪かったわ」
──意外だった。
エイレがこんな素直に反応するのが。
俺の中では、鬼砲を俺にぶっぱなしてキレると思っていたのだが。
もしやエイレも何か隠してることがありそうだな。
まぁ言った手前、追及はしないけど。
「私も悪いです。ごめんなさいね」
エイレの素直な態度に、宇佐美さんも素直に謝罪をする。
そして熱く握手を交わし、最終的に抱き合っていた。
よし、これで和解できたかな。
そう思いつつ、俺は二人に話しかけた。
「さて邪魔者も消えたし、例のものを手に入れようっか」
「そういえば食材を採りに来たんだっけ」
「糖党に夢中で忘れていました……」
なんとも本末転倒な事を言う二人。
思わずツッコミしたくなったが、その気持ちが分からなくもないので、何も言わないことにした。
あんな奴ら、出てきて戦ったら本来の目的忘れちまうよ。
「それで、結局どんな食材なの?」
エイレが訊ねる。
また内緒だと言いたかったが、殴られるし話も進まないため、説明することに。
俺はナビ子に資料提示を頼み、テロップが出たのを確認してから口を開いた。
「名前はエンゼルツリー。簡単に言えばチョコレートの実がなる木だ」
「カカオではなくて?」
宇佐美さんの疑問に「うん」と答え、テロップのイラストを指差ししながら続けて言う。
「エンゼルツリーの実は限り無くチョコレートっぽいんだ。だけど味が若干違い、別物ってすぐ分かるくらい差があるよ」
【他には、一応実なので皮と種があることでしょうか。ですが皮どころか種も食べられるのでさほど問題ないですね】
「まぁ後は──」
俺はエンゼルツリーに近付いて二つ実を採り、それを二人に渡した。
「食べてみればいいさ」




