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俺から実を貰った二人は、顔を見合わせ苦笑いをした。
無理もない、何せ見た目が然程よく無いからな。
茶色で丸くコロコロ型。
地面に落ちてたら、犬か兎のアレと間違えてしまうくらいの見た目だ。
だがそれでも食べないと、味という真実には辿り着けない。
宇佐美は意を決して、実を口に含んでゆっくりと一口噛んだ。
「えっ!?」
その瞬間、思わず出てしまった驚愕の声。
そして表情は疑心から笑顔に変わった。
「これ、すごく美味いです!」
ほっぺたを触り、ゆっくり咀嚼して実を味わう宇佐美。
表情はもう満面の笑みでとても幸せそう。
そんな宇佐美を見たエイレも、恐る恐る実を口の中に入れ食べた。
そして驚愕の表情と共に、口を隠しながら言葉を出す。
「本当に美味いわ……!深くコクがある甘さだけど、そこまでくどく感じるわけでもない。今まで食べたことの無い、最高のスイーツだわ!!」
その様な評価をした後、宇佐美同様に恍惚な表情となっていた。
「言った通り美味しいだろう?しかもこれ、HPとMPを50%回復するんだ。味も実用も優れてる凄い食材さ」
「でもそれなら知られて当然な気がするのだけど」
手についていた実を舐めとりながらエイレは言った。
余程気に入ったのだろう、執拗に手を舐めている。
みっともないので、俺はそれを止めさせてから答えた。
「見た目が悪過ぎるから受け入れられないのと、入手数・使用条件から好まれてないんだ。因みに後者の使用条件だけど、食べ過ぎるとお腹壊す、みたいに思えばいいよ」
【それに食べ過ぎますと体重が増加されるというデメリットもあります。なので需要は低いのです】
この話──主にナビ子の話を聞いた二人は、残念そうにしながら木の方を見るのをやめた。
やはり食欲より美への欲望が勝ったんだな。
いくら現実世界に影響しないからといっても、自キャラが太るの嫌、か。
やっぱり二人も女子なんだな、と納得しながら俺はまたエンゼルツリーに近づいていった。
そして完熟している実を半数採ると、それを袋につめて二人のところに戻る。
「これくらい採れば問題ないな。後は他の食材も採取していくか」
「「はーい!」」
──それから俺らは別々に別れ、それぞれ食材を集める事にした。
俺はエンゼルツリー付近にあったホワイトマッシュルームや、キクラゲ、そして何故かあったジャガイモと人参を入手した。
なお他のメンバーが手に入れたものはというと……
「やはり山で食材と言ったらこれよね。色々使えるし」
そう言ったエイレの手にはベニテングダケ。
意気揚々と言ってる辺り、ワザと毒キノコを持ってきてるな。
まあちゃんとした食材も持ってきていたから良かったが。
特に猪肉と竜肉は凄くいい。
美味いし、高値で売れる。
だから結果としては問題なかった。
さて、もう一人はというと。
「綺麗なきのこさん、ゲットです!あっ、これも良さそう!!」
そう言った宇佐美の手にはベニテングダケ。
ただエイレと違うのは、全部が全部猛毒な食材を採ってきている事にある。
特に、リアルには無い食材だが、食べたら苦痛を伴った後に絶対死ぬ生死薯はヤバイ。
それを平気で採ってきてしまうあたり……宇佐美さんは本物なんだろう。
因みに満面の笑みで持ってきた為、何も言わず受け取った。
だって全部毒だと教えたく無いんだもの。
絶対泣いちゃうよ、宇佐美さん。
とにもかくにも、そんな食材らをゲットした俺たちは、とことこ歩いてモムポートシティーに戻ってきた。
ただし、街中ではなく郊外にある馬車の中であるが。
「なんで馬車の中?」
案の定、エイレが俺に訊ねてきた。
俺は今準備している物を見せながら返答した。
「今から食材使って料理をするからだよ。その方が売値は高いからね。高級食材は半数残せば、もし失敗しても運賃代分には達するよ」
「料理か……」
エイレが渋い顔をする。
まるで今まで料理したことないと言わんばかりだ。
それを察したのか、宇佐美さんは準備を手伝いながらエイレに言った。
「調合や錬金の時みたいにフルオートに出来る機能ありますから、もし自信がなくても大丈夫なんですよね、ショウさん」
「ああ、その通りだ。もちろん実際に作る事もできるよ」
ふーん、とそっぽを向きながら、いつの間にか準備を手伝い始めたエイレ。
よし、これなら失敗して食材が無駄になることは無いはず。
馬車から最後の調理器具を下ろし、3つセッティングも終えた。
食材も十分にある。
これだったらいけるだろう。
「仕切って悪いが、料理は一人3品でいこう。上手くいけば飛行挺で目的地に行けるから。頑張ろう!」
「任せてください!」
「苦手だけど私も頑張ってみるわ」
こうして、また個々の戦いが始まった。
エイレが心配だが、まぁなんとかなるだろう。
なるだろう……うん……




