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世界樹に呼ばれ転生した少女、魔王になる。~魔族が虐げられる世界で魔族たちをまとめ反旗を翻す~  作者: れんP
第1章 魔王の卵

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第3話「魔族の現状」


「ねぇ、メル!」


「はい、マナ様!」


「様はいらないってば!」


「いえ、魔王様を呼び捨てになどできません!」


「うぅ……もういいや。それより、聞きたいことがあるんだけど」


「なんでしょうか?」


私は気を取り直して、先ほどの出来事を思い返した。


「あのさ、さっきの男たち、メルを奴隷にするって言ってたよね?」


「はい」


メルはいつもと変わらない様子で答えた。


「それって、どういうことなの?」


そう尋ねると、メルは少しだけ表情を曇らせた。


「……魔族は、人間たちにとって奴隷なのです」


「え……?」


思いもよらない答えに、私は言葉を失った。


「魔族は人間よりも魔力が強い者が多く、特別な能力を持つ者もいます。そのため、貴族や皇族たちは魔族を捕まえ、奴隷として売買しているのです」


「そんな……!」


私は思わず拳を握りしめた。


魔族を捕まえて、奴隷として売り買いする。


まるで、物のように扱っているということだ。


そんなことが、この世界では当たり前になっているのだろうか。


(世界樹が言っていたことは、本当だったんだ……)


魔族が虐げられている世界。


そして、私はそんな魔族たちを救うために、この世界へやってきた。


だったら、やることは決まっている。


「メル!」


「はい!」


私はメルの顔をまっすぐに見つめた。


「私、絶対に魔族を救うから!」


迷いはなかった。


私に何ができるのか、まだわからない。魔王になるということが、どういうことなのかも、すべてを理解できているわけじゃない。


それでも、目の前にいるメルをはじめ、苦しんでいる魔族たちを見捨てることなんてできない。


だからこそ、私は自分の決意をはっきりと口にした。


「……マナ様」


メルは驚いたように目を見開いた。


そして、少しの間、私の顔を見つめたあと、静かに頭を下げた。


「ありがとうございます」


「えへへ。お礼を言われるようなことじゃないよ!」


私は照れくさくなって、思わず笑った。


でも、メルは顔を上げると、穏やかな声で言った。


「いえ。魔族のために、そこまで言ってくださる方はほとんどいません」


「……そっか」


その言葉を聞いて、胸の奥が少しだけ痛くなった。


魔族を救おうとする人が、ほとんどいない。


それが、今の世界の現状なのだ。


(そんな世界、変えなきゃ)


私は改めて、そう心に決めた。


「あ、そうだ!」


重くなりかけた空気を切り替えるように、私はポンと手を叩いた。


「メル、この近くに町ってある?」


「ありますよ。ここから少し歩いたところに、人間たちの町があります」


「よし! じゃあ、そこに行こう!」


「……町、ですか?」


メルは少し意外そうな顔をした。


「うん! ほかの魔族がいるかもしれないでしょ? 仲間を集めるなら、いろんな場所に行かないと!」


私がそう答えると、メルは納得したように頷いた。


「なるほど……さすが魔王様です!」


「えっ、そうかな?」


思いがけず褒められて、私は首を傾げた。


(仲間を集めるのって、そんなにすごいことなのかな?)


私としては、ごく当たり前のことを言ったつもりだった。


けれど、メルにとっては違うのかもしれない。


「では、町へ向かいましょう。ただし、ひとつ問題がありますね」


「問題?」


メルは自分の体を見下ろした。


「僕は魔族です。町に入ろうとすれば、兵士たちに追い返される可能性があります」


「えっ!? そうなの!?」


「はい。人間の町では、魔族が自由に暮らすことは難しいのです」


「……」


私は言葉を詰まらせた。


町に行けば、ほかの魔族と出会えるかもしれない。


そう思っていたけれど、そもそも魔族であるメルが町に入ることすら難しいなんて。


やっぱり、この世界では魔族がひどい扱いを受けているんだ。


でも、だからといって、ここで諦めるわけにはいかない。


私は少し考えたあと、メルに向き直った。


「だったら、私がメルを守るよ!」


「マナ様……」


「大丈夫! 私、強い魔法も使えるみたいだし!」


そう言って、私は世界樹の杖を掲げた。


まだ魔法をうまく使いこなせているわけではない。


それでも、この杖があれば、きっと何とかなるはずだ。


何より、私は魔王になると決めたのだから。


「それに、私は魔王になるんだから! 仲間を見捨てるわけにはいかないよ!」


「……ふふっ」


「え? な、なに?」


突然笑われて、私は戸惑った。


「いえ。マナ様なら、本当に魔族を救ってくださるかもしれませんね」


メルの表情は、先ほどまでよりも少し柔らかくなっていた。


「もちろん!」


私は胸を張って答えた。


まだ仲間はメルひとり。


魔族が置かれている状況も、これから何をすべきなのかも、わからないことだらけだ。


それでも、一歩ずつ進んでいけばいい。


「よーし! それじゃあ、出発!」


こうして私は、最初の仲間であるメルと一緒に、近くの町へ向かうことになった。

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